パトロール終了 (また変な奴が入隊かよ…)
2年前の満月の日、私を助けてくれた彼はその見返りとして私の心を奪っていった。
「きまりですね。」
コリン君が眠っているノアを見て、一言だけそういった。
「ノア三正が引き分ける相手なら、僕達に勝ち目はありません。ハンク一正、彼女の勝ちです。」
誰もコリン君の分析と意見に反対しなかった。私も、ティファニーちゃんも、ハンク一正もだ。見てて格の違いというものを見せ付けられた。
「皆…それでいいのか?」
ハンク一正が私達を見てそう聞いた。私達は黙ってうなずいた。
「はーあ…俺が知ってる時よりもだいぶ強くなっちまったな…。シェリー、合格だ。
上に話は通しておくよ…。」
「やったー!お兄ちゃんありがとー!」
20にもなってこれはどうなんだ…。
「皆にお礼を言いたい。俺達の家族喧嘩に巻き込んでしまって本当に悪かった。
そしてありがとう。シェリーにも良い友人が出来たようだからな。
この埋め合わせは必ずする。助けが必要なら工作部に来い。俺はそこにいる。」
「は、はあ!?と、友達じゃないし!」
そんなシェリーの言葉には耳も貸さずハンク一正は駐車場を後にした。
「はあ…バカ兄…。」
ハンク一正が歩いていく後姿をみながらシェリーは一言だけそう呟いた。
「いいお兄さんじゃない。あなたには勿体無いぐらい。」
「そうね、いいお兄ちゃんよ。でも…割とバカよ。」
「というと?」
「なんで時間帯も部隊も日によって変わるパトロール中のあなた達をピンポイントで襲撃できたかわかる?」
「!あんた…まさか…!」
シェリーは意地悪っぽく笑い、
「そのまさかよ。お兄ちゃんに適当な嘘ついて、あなた達の任務予定をリークしてもらったの。だからあなた達がパトロールする時間も、ルートも分かった。」
「は…」
ハンク一正が原因かああああああ!
「お兄ちゃん。ああ見えてどこか抜けてるのよね…。まあ完璧超人だったら、それはそれで怖いけど。いつか騙されないか心配だわ。」
「…ろくな上司はいないの?この軍隊?」
「まあ、いい人であるのは間違いないわ。妹の私が保証する。いざと言う時、部下を守れるタイプね。」
「そうなの…かな…?」
この時の私は気づいてなかった。シェリーの言葉が本当になることを。
しかもとてつもなく不毛な形で。
ふーむ…あのロリBBA結構やるみたいですね…。たぶんですけど私が今の状態で勝負してもコリン一正の言う通り、私は負けます。悔しいですけどね。
でも、隊での美少女ポジションは譲りません!でもシャーロット三正に若干負けてるんですよね…私…ちびっ子くて可愛いってずるいです。
スタイルのよさを磨くしかないですね。
「ティファニーさん…なんでニヤニヤしてるの…。」
コリン一正、もとい、コリン君がそう聞いてきました。もちろん今のことをそのまま彼に言うわけには行きません。彼の前では尊敬されるお姉さんでいたいのです。
「いや~ちょっとどうすれば彼女に勝てるか考えてました~。」
1ナノも考えていませんが。
「悪いけど…勝つのは難しいね。ティファニーさんの剣術は近距離での戦闘には適してるけど、遠距離から彼女に魔法攻撃されまくったら終わるよ。魔力切れを狙って逃げ回るのもいいけど、シェリーさんの魔力がつきるのが先か、ティファニーさんの体力がつきるのが先かを聞かれると五分五分だ。」
「…割とガチな回答、ありがとうございます。」
「?どういたしまして。」
見た目は可愛らしい少年なのに…知識と戦闘力は大人並みなので可愛げがないです。
尊敬されるお姉さんでいたいのに。まあ、実際は大人だから仕方ありませんが…。
おっと、これ以降は機密事項なので考えないで起きましょう。いつ思考を読まれてもおかしくありませんしね。
それよりも、このロリBBA…もとい、シェリーをいじり倒してやりましょう。
「ねえねえ、本当は一目ぼれじゃないってどういうことー?お姉さんに教えて~。」
「っ…あんたには関係ないでしょうが…。」
ふむ、顔を赤らめる。否定もしない。なにかあることは間違いないようです。
「まさか…ずっと前から好きだったとか~?可愛いねえ~。」
そうするとシェリーは沸点に達したのか、
「ああ、そうよ!私は2年前、ノアに助けてもらったときからずっと好きなのよ!
今度は私が助ける側になろうと思って、必死に魔法の勉強をしたわ!私はノアのことを今すぐ襲いたいぐらい大・好・きなのよ!」
あちゃー…認めた相手をいじっても面白くないですね…。おとなしく帰りましょう。
次の日
「本日付でこの小隊に配属されることになった、シェリー・スターリング一士だ。
シャーロット、隊長として頑張ってくれよ。」
「元気かしら!昨日の敵は今日の友よ!よろしく!」
軍服を着たシェリーは、不覚にもかなり格好良かった。
「ジェシー二正…。また、新隊員をいれるんですか…。この隊、大丈夫ですか?」
「大丈夫だろ!実力的にはなんら問題ない!」
「私の心配しろや!コラッ!」
はーあ…ここ数日で小隊の隊長になれたのはいいけど…
○白髪の闇魔術師
○ややサイコ気質の少年
○ドジっ子剣士
○ごり押し魔法使い
大丈夫なの!?このチーム!?
「どうしたの?暗い顔して…。」
「そりゃ暗くもなるわよ…ノア…この数日でいろんなことがありすぎて…。」
「ふーん…じゃあ最悪かい?」
その質問に対してはノーだ。
「いや、最高ね!」
いろんなことがあったけど、私は退屈な軍生活から抜け出せた。ノアが打ち破ってくれた。こんなに楽しかったのは初めてだ。
もう、事務作業とはおさらばよ!
「あ、昨日のパトロールの報告書書いとけよ~。」
…コリン君に頼もう。
mission Patrol Perfect Clear
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