mission1 Patrol
シャーロットは二度死ぬ(汚い大人)
「回復魔法が使えるなんて凄い奴だな。ぜひ魔法部に入って欲しいものだ。」
「ちょっと!冗談でもそんなこと言わないで下さい!ジェシー三正!」
「わりと本気だが?」
何を考えてるの?今連行してるノアは見た目こそ優男だけど、上級魔法や禁術やらを
拘束されていても使えるような奴ですよ!?
「どれ、ちょっと目の前で縄抜けしてみてくれ。」
何言ってんだこの
「そういわれると思って、外しておきましたよ。僕の手錠。」
「おー。」
わー凄い。
「じゃなくて!」
魔法部は愚か、他の部の人間も通行するバイオレット特監の部屋に向かう廊下だというのに、私は人目も気にせず先輩とノアを警棒で殴り、二人に手錠をかけた。
「先輩になんてことするんだー。」
「後輩になんてことさせるんだ!?」
「吐き出しすぎると胸育たないぞ~。飲み込むとその分育つぞ~。」
「眼鏡カチ割りますよ!?」
て、オイ。何逃げようとしてんだノア。
「何処に行くのかな?ノア君?」
満面の笑みで彼に聞く。どうだ、少女の笑みを見て逃げられる男はいまい。
「えーとね…。」
かなりドギマギしてるのが分かる。よくよく見ると彼は少し涙目になってぐっと手を握りこんでいた。
…やばいな私、少し顔が火照ってきた。
何と言うか…ノアは普通でも顔はいいけど…泣き顔の方が好きだ。
「猟奇オナ…」
「先輩は黙ってて。」
…もうちょっと責めてみるか。
「ねえ。やましいことが無いなら答えられるでしょ?は・や・く!」
「バイオレットさん。ここにいるよ。」
「御機嫌よう。ジェシー三正・シャーロット士長。」
「・・・。」
「…バイオレット特監!ノア・セイントを連行して参りました!」
あの
バイオレット特監(40)の部屋は変わっている。他の特監の人は自分の部屋を豪華に装飾するのに対し、バイオレット特監は研究者時代の名残なのか完全に実用的な部屋だ。
他の人がカーテンに緋の色を使うのに対し、彼女は白を使う。
机には金属製の耐久性の高いものを使い、明かりには手入れが楽でシンプルな蜀台を使う。カーペットも敷かない。絵画もない。
まるでここは魔法部の研究室のようで、特監の部屋と思えなくて気が緩んでしまう。
そして何より特監が他の人と違うのは…。
「またお若くなられましたね…。」
そう。彼女は別の意味での魔女である。
髪はいつもつやつやな茶色いショートヘアで、肌は白く張りがある。
本当に実年齢-15歳ぐらい見える。いやもしかしたら一定の年で成長が止まる遺伝子疾患なのかもしれない…。そう思わないと同じ女としてやっていけない…。
「心配ありがとう。でも病気じゃないから安心して。」
「-ッ!申し訳ありません!」
そう。彼女は思考を読み取る能力を持っている。
バイオレット特監いわく、生まれつき魔力の強い人間は副作用として特殊能力が開花してしまうことがあるらしい。
バイオレット特間は凄くいい人なのだが、急に思考を読んで声をかけてくるので心臓が止まるほどびっくりする。
『ジェシー三正は…頼りになる人だから…メス豚とか思わないであげて?』
これ言われた時死ぬほど怖かった。そしてすぐ後ろに眼鏡外したジェシー三正がいたのも怖かった。特に後半。
「さて、本題に入りましょう。シャーロット士長。ノア・セイント…いいえ、ノア君なんだけどね…実は魔法部、いや軍と深い繋がりがあるの。
軍が正式に採用している即時回復用のポーション何だけど…実は材料も調合もこの子が一人で作ってるのよ。」
「えええええええええええ!」
「あーこれのことですか。」
ジェシー三正が胸ポケットから出したのは、片手に収まるほどの小さな丸いフラスコに赤い透明の液体が入ったものだった。コルクで栓がされている。
「一回胸に傷負っちゃったときに、ものはためしで傷口にかけてみたんですけど一瞬で傷が塞がっちゃったんですよ!痕も三日で取れちゃいましたよ!」
「ちょっと!それ見せてくださいよ!」
「え、ちょやめ!」
ジェシー三正の胸元をこじ開けようとしたけど、必死の抵抗にあって諦めた。
「気は確かか?」
「すみません。気が動転しちゃってて…。」
ゴホン!
バイオレット特監が咳をしてこのカオスな状況を打ち破った。
「と言うわけで、彼を刑務所に入れると私達にも多大な影響を与えるの。
でもね、黒魔術を使用した人をおいそれと帰すわけにはいかない…形式上、彼を監視していないといけない。というわけでね…。」
「彼を軍に入れるということですね!」
「その通り!」
バイオレット特監とジェシー三正で二人で勝手に盛り上がっているところに割り込んで叫んだ。
「なんじゃあああああ!そりゃあああああ!」
この日、中央司令部が3センチ歪んだ。(後方支援部情報)
「いや、だから、軍に入れちゃえば監視しやすいじゃない?仮眠室もあるから最低限泊り込み出来るじゃない?そういうこと言ってるのよ?」
「分かってますよ!理屈は!」
「それに軍に入れちゃえば、ノア君の技術が手に入るから、ポーションを軍内で製造できて予算削減!そして私の評価も上がるわ!」
「汚い!汚い大人だよ!」
「これ以上逆らうと命令無視で軍法会議にかけさせてもらうわよ!」
「汚いよおおおおお!」
嘆いていたところノアにポンと肩を叩かれ一言、こういわれた。
「がんばれ!」
「あんたのせいで困ってるんだけどおおおおお!」
うう…もうやだ…こんな奴その場で射殺すれば良かった…。
取調室で抵抗した時点で屋上から投げ捨ててやれば良かった…。
「物騒なこと想像しないの!」
「思考を読まないで下さいよお!」
「困るようなことを考えないことね。私は怪しいと思ったらすぐ読めるわよ。
それより本人に許可を取らないと…。ノア君はどうしたいの?
刑務所暮らしか…ノア君の能力なら昇進間違いなしの悠々自適な軍での研究生活か!
もちろん魔法部で働くことも可能だし、兼任も出来るわよ!」
この人軍生活を強調しやがった。頼む!断れ!
「やったー!優れた設備!充実した資金!趣味を充実させるだけでお金貰えるなんて夢のような職場じゃないですかー!」
ああ…ノア…馬鹿だ…。子供のように目を輝かせている…。子供だけど…。
一面性しか見てない。
「じゃあこれと、これと…これにサインして!明日から研究者AND軍人生活よ!」
はっや!これ根回ししてただろ!もしかして捕まえさせたのも…。
「じゃあ…一応形はつけなきゃいけないから…しばらく軍の寮で生活してね!」
「はいはーい!」
「明日から研究者だ~♪研究だ~♪じっっせんだ~♪」
さっきから鼻歌交じりで上機嫌なノアと対極的に私はすこぶる機嫌が悪かった。
なにせ今ノアと私とジェシー三正で寮へ向かう廊下を歩いているのだが、廊下を歩く先輩方の顔が険しく、本来下の階級の私達に道を譲る状況だった。
「なんか偉くなった気分だな。」
「ソウデスネ…。ジェシー三正。」
「機嫌悪いな。にじみ出てるぞ。もらさないようにすれば胸が大きく…」
「それはもういいから!」
廊下の皆さんの視線が一気に集まる。もう殺してくれ…。
「さて、ここでシャーロット、お前に話しておく必要がある。」
「はあ…なんでしょう?」
「ノアが黒魔術を使用して少年を蘇生したことを知っているのは魔法部と工作部の一部の人間だけなんだ。これは極秘だから知らない奴には監視させられない。
その中で監視可能でかつノアを非常時に拘束できるのは…私とティファニーちゃんとメイソン一正、そしてお前ぐらいだ。」
拘束されましたけどね。私。
「ただな…ティファニーちゃんは工作部の人間だから色々面倒だし、コリン一正の件もある。メイソン一正は特殊作戦にも関わってるから常に監視できない。」
「つまり私かジェシー三正が監視するしかないということでしょうか?」
死んでもやだぞ!
「そうだ。ただ監視の際は同じ部屋で生活する必要がある。実際私が昔した監視任務の時は禁止魔法を使用した13歳の少女と一週間生活したっけ。」
「うええ?」
初耳だぞ。おい。
「つまり彼氏いる私には無理!シャーロット士長ヨロシク!」
「はああああああああああ!」
先輩に掴み掛かって吼えた。ああ、殴りたいこの笑顔。
「大丈夫だって!私がさっき話した任務でも大丈夫だったから!」
「先輩の監視対象、少女!こいつ高身長の男!しかも上級魔法乱発する人!」
「まあ…襲われてても助けてやるよ!…処女は守れないかもしれないけど。」
ちょっとまった!っとノアが私達の会話をさえぎった。そして深呼吸して一言。
「僕、ロリコンじゃないです。」
といって露骨に身長を比べた。確かに…身長さが…20センチ以上あるけど…。
「私の方が2歳年上だ!ボケッ!」
「んどふ!」
はあはあ…警棒便利だな。
「まあ…とりあえずノアの監視は魔法使い(笑)に任せるとするか。」
「それは私のことじゃないだろうな…。ジェシー三正…。」
「これ以上上官の命令に逆らうと軍法会議…」
「汚い大人ばかりだ。」
その日の夜…
すー…すー…すー…
皆さんは可愛らしい少年やイケメンの男性、もしくはその両方を持つ人が寝息を立てて自分のベットで眠っていたらどうしますか?
すー…すー…すやあ…
こんな質問をすると、多くの女性は「優しく起こす。」「添い寝する。」「襲う。」などの選択肢を選ぶでしょう。ですがこれはあまりにもシュチュエーションが非現実的だからこう答えられるのです。
すー…すー…くー…
もし、この様なことが現実に起こったらかなりの恐怖でしょう。知らない人ならもちろんのこと、知っている人ならさらに怖いと思います。
すー…すぴー…すやあ…
現在、私のベットに白髪で顔は可愛らしいの2歳年下の男性が眠っています。
すぴー…くー…すやあ…
私は彼に対してこの様な呪文を唱えました。
「…チェーン・ショック!」
「ひにぎゃああああああ!」
「う、うう…。」
「なんで私のベットで寝てるのかな?」
「眠かったから…。」
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