冒頭から言葉選びが美しい。
ひとつでも言葉選びを誤れば、残酷になったり卑猥になってしまいそうな描写を巧みに、美しい世界観の枠に収めきっている。
エロスでも品のあるもの、品のないものがある。品のあるものが高尚で、品のないものが低俗というわけではないが、この作品には、品があり高尚なエロスの空気がある。
そうでありながら酷い。
弥の気配は、いつまでも迩のそばにありながら迩を感じてはいない。それを知っていながらも迩は、弥に命という熱を与え続けていくのだろう。迩にとっては、それも幸福であるのかもしれないが、破滅の見える幸福は仮初めだろう。そう思うと、酷い。