第7話
貴方の娘です、と言わなければわからないのかもしれない。
あれから、何年たったんだろう。
ワインの瓶を差し出して、心中を覚えていますか、と聞く。
多分、男は聞き取れなかった。
自分が病気なんだと、気付いていないから。
もう少しで殺せなくなるはずだ。
早く、思い出してくれないだろうか。
無音の部屋に、呼吸音が早いテンポで酸素を行き来させている。
殺し屋に殺されるはずだった死んだことにされた娘が殺し屋をやってます、なんて冗談にしたってしょうがない。
病気を殺してあげたいけれど、男に何も言えない。
いつだって、殺せる。
今なら。
今、はまだ。
敏感な鼻でワインと血の香りがそぐそばにあるのと、それと別の香水みたいな匂いに吐き気もしてきた。
もう一歩でも近付けば、簡単に、そうその首に、心臓にだってぶつかりそうな瓶。
あの日の今日は、何がありましたか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます