第6話
コイツは気付いていないのかもしれなかった。
それに乗じて、悪夢の続きだったんだと告げるとまた笑った。
どうして、どうして包丁で切られたのに、平然と片付けてしまうのかわからない。
本当にお前は、殺し屋なのか。
ひとおもいに殺してはくれないのか。
それが伝わった時には、やっと心臓か首でもいい、刺しにくるんだろうか。
死んだ娘に会えるなら、言い訳をしなければいけない。
これは仕事であって、好きでコイツと一緒にいるんじゃないってことを。
コイツが娘を殺したなら、俺はコイツを殺さないと。
復讐しないといけないのに、何も、何もかもが、感じられなく……。
赤い液体が頭を濡らしてきた。
見上げると空になったワインの瓶。
それを振り上げられて、殺気もないのに慌てた。
転がって避ければガシャンと音を立てて砕ける。
殺意もない目。
殺気のない、行為。
確かな足取りでその割れた瓶を持ったまま近付いてくる。
壁に背中がついた時に瓶を真っ直ぐと目の前に差し出してきて告げられる一言。
今日は、心中の日ではないけれど、とても死ぬには最適な一日だね。とだけ。
何かの冗談なのかもしれないなんて思えた方が凄い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます