第4話

 背中を向けてカランカランと氷を遊ばせるコイツに、コップを傾けて水を落とした。

 それでも、一切怒るような顔だってしなかった。

 振り返って不気味なくらいに優しくおはようと言う。

 その首に手を伸ばしても、コイツは動かなかった。

 持っていた包丁で首を横に切ったのに、包丁が見えても逃げようなんてしなかったんだ。

 倒れ込んで血を広げていくその目はゆっくりと閉じられていく。

 電話をかけた。

 コイツの死を伝えなければ、金は振り込まれない。

 そんな時だった。

 足が引っ張られてスマートフォンが床を滑っていったのは。

 こんな時にまで、俺はまだ盲目だった。

 俺の上に乗って、いつの間にかこの両手を膝で踏んでいる。

 首からはちょっとの血が流れている。

 死んでいない?

 その手にはコイツがいつも使っているスマートフォンではない色をしたスマートフォンが握られていて、ニタリと笑んでいた。

 今、殺す気なのかもしれない。

 だから、こんなことになる前に、連絡でもするんだろうか。

 抵抗が効かないくらい、膝は重かった。

 力を入れて、動かさせてやらない、と言うんだ。

 コイツはスマートフォンを後ろに投げ捨てる。

 どうしたいんだ、お前は。

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