第2話
目の前のコイツが、男でも女でもどっちでもよかった。
毒を混ぜた酒にも酔わないで、目だけが笑わない。
何を考えているのかわからない。
だが、確実に何かを企んでいる。
コイツは、毒も刃も何か致命傷を相手に与えるような物を持ってない。
それどころか、身を守る意思だって持ってない。
自分が傷付けられることはないんだろうって確信がそこで酒を飲んでいる。
わかっている。
懐にいとも容易く潜り込んできて、気が付けば親友みたいな顔をさせてしなっていた。
俺だって、コイツを殺さないといけないのに、コイツには一切隙がない。
隙ばかりを突かれて、そして長い時間の末に、ここまで手を伸ばしてきていたのに、やっと気付くんだ。
心臓にも、首にも、いつでも触れられる。
それがわかっているのに、防ぎようがない。
俺をどう思っているのだろうか、とか考えさせられた。
考えなければならなかった。
そうしないと、突き放しても隣に戻ってくるような距離感だった。
コイツが誰なのか、調べればすぐに情報が浮かび上がって、知っているのに、殺意を持ってくるタイミングだって伺っても意味が無い。
コイツは、俺を殺そうとはしない。
いつでも殺せるのだとわかっていながら。
酒で睡魔だって起き上がった。
コイツの前で寝ても、もし、明日目が覚めたら、コイツは言うんだろう。
俺は何も見えていなかった。
コイツに盲目にされた気分だ。
風景が一切目に入ってこない。
音も、味も、何もかも。
コイツしか。
いや、コイツの表情だってだんだんわからなくなって……。
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