第12話 葬式

「サチくん、本当にありがとうね」

 みかりままに抱き締められる、足元がふらつく。

 みかりの葬式。

 現実感、という言葉さえバカらしい。


「この度は…」

 ああ関くんか。こんな顔だっけ?

 つうかわざわざ葬式まで来るんだな。


 みかりに会いたいな…。

 もうよくわからない。

 タイミング悪くVRみかりが消える瞬間がさ、俺が不在な今、とかだったりね、いままさに何かの都合でおくれた感動のさよならシーンがはじまってたりね。

 ずっと一緒にいたのにね。

 それならそれで。


 もうよくわからない。

 そして、ちょっと泣きたいのかも知れない。

 でも、なんかふわっとしてる。

 何度かはっと思って足元を見る。

 靴履いてる、スーツのパンツも中に普通にパンツも履いてる。

 なんで何度も履いたっけって思うんだろう?

 足元の感覚。

 お?もしや幽霊ってこんな感じ??だとしたら凄い体験。

 なんて…くっそどうでもいいよ。


 みかりの入った棺。

 みかりままが気が付くと隣にいた。

「サチ君が、みいの手を守ってくれたからね。ほらみてまだこんなにきれいに」

「!」

 花だらけの棺の中からにゅっと肘から先が握手を求めるかのように突き出してる。それ以外は何もない。花だけ。

「あははは!何だよこれ!田舎のじいちゃんとこにあったよ、ゲーセンの腕相撲マシーン!そしてこの棺桶の大きさに腕だけって!大きさ!対する大きさ!あは!あははは!」

 バシーン!と頬に衝撃が来て、膝下しか見えないが、どうせみかりぱぱにでも引っ叩かれたんだろうと思う。なんかどうでもいい。帰ろう。

 何してるの!サチ!おふくろに腕を掴まれる。本当に面倒くさい。

 遠くから視線を感じる。

 関くんかもな。


 妙にタクシーの運ちゃんの首のほくろ毛を覚えている。

 その毛根のあたりから声が出てるみたいに「今の時間、駅避けていきますね。そのほうが早いので」

 どうにかして家について眠っていて、目が覚めると薄暗い部屋にちゃんとハンガーに喪服がかかっているのが最初に見えた。

 みかりを抱き寄せてもう一度目を閉じる。

「ふふふまた寝るのぉ」

「…うん…また寝る」

 おやすみ、みかり。

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