第10話 全う

 みかりと過ごしてからの時間は間もなく20時間になる。

 性欲がないわけではなかったがみかりとセックスするのは何か違うな、というか触ったりくすぐったりいちゃついてるだけで何か、満たされた。犬や猫を飼っていたらこんなだろうか?もふもふ顔をうずめたいというのとチンコ突っ込んで突きまくりたいに決定的な壁があるみたいに。そんな?

 みかりは犬猫ではないけど、人間ではない。俺は人間以外の生き物とできないという壁があったんだな、あ?生き物か?

 ただそれは決してキモいとかじゃあないんだ。そりゃあ小指がぐずぐずってただけで若干パニックった俺だけれども。けれどもこれだけ長い時間いる今みかりのナカはもっとぐずってるかもしれない、でもまあそれがどうしたって本気で思えるのだ。うん、それがキモくてヤれないとかじゃあないのよ。それがどうした、ってね。結構マンガなら決め顔で放たれるセリフね。もしくは逆にすっげ絶望と諦めの中で絞り出されるセリフだね。


 それにしても俺はみかりに嫌な感じがしないのだ。これも何かの効果だろうか?


 まあいい。どっちにしろあと16時間。

 そうしたら俺は婚姻届けを出した直後に嫁を無くした不幸な男という肩書きを持った現実に帰る。

 面倒な処理も多いだろう。でも割とみんなそんな不幸も好きなのだ。きっとちょっとモテたりもするかもな。


 少し崩れただけ。

 みかり。

 俺の現実。

 二人の未来。


 みかりの額にキスをする。


 あの時は楽しかったねえなんて話をしながら、寂しい、という感情に気づく。


 ある程度みかりなVRと(そしてそれは俺の理想の)、ある程度の最後の愛の形を全うして、俺はここをまたスタートに新しいある程度を設定し、俺は生きていくのだなあと他人事みたいに自分の未来を思う。

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