第15話
俺が入った空間は大きく開けていた。広さで言えば30m位だろう。そこには多くの魔物が居た。10匹を超える普通のゴブリンの他に、弓を持ったゴブリンが1匹、そして2メートルを超える大きさの、2本足で立った豚のような魔物が居た。その魔物は右手に簡素な飾りが付いた金属製の長い杖を持ち、この部屋の一番奥に立っている。
(オークマジシャンか!ショウ、あいつは普通のオークが進化したものだ。魔物ランクはC、手強いから注意してくれ。)
魔物ランクというのは魔物の強さをアバウトに評価したもので、最低がE、最高がSSまでに分類されるらしい。ちなみにゴブリンは最低のEランクだそうだ。
俺がオークマジシャンを鑑定すると、
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オークマジシャン
HP 1200
MP 325
ATK 350
DEF 270
MAT 160
MDF 120
SPD 105
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となっていた。マジシャンって名前の癖に魔法能力より物理戦闘能力が上なのは詐欺だと思う。というか、こいつ倒せるのか?このDEFの値、確か俺のATKより高いぞ?身体強化魔法で俺の能力は底上げはされてるはずだから、全く歯が立たない事もないだろうが、奴が強い事は間違いないだろう。とりあえずクレアにこの情報は送っておく。
そんな俺の思考も知らず、ゴブリン達とオークマジシャンが突っ込んでくる。俺は手近なゴブリンを斬り、オークマジシャンから離れるように動く。こいつだけ格が違う強さだから、こいつは後回しでゴブリンから片付ける。救いはSPDでは大きく勝っていることと、この空間が広い事だ。おかげでオークマジシャンから逃げつつゴブリンを倒せている。
走りつつ数匹のゴブリンを斬ったところで、弓を持ったゴブリンから矢が放たれる。俺にとってはゆっくり飛んできた矢を、走り寄りながら身をよじって避け、驚いた表情をしたそのゴブリンの首を斬る。
振り向くとさっきまで俺を追っていたはずのオークマジシャンは俺を追わずに遠くにいた。そしてその前に、多くの丸い土が浮かんでいる。次の瞬間それは一斉にこちらに打ち出される。その土は俺とオークマジシャンの間にいたゴブリンの頭や身体に穴を開けつつこちらに迫ってきた!
(ショウ!私を信じて前に突っ込め!)
クレアの声とその内容に驚くが、戦闘に関しては彼女の方が知っている。彼女の言葉を信じて、左の籠手で目元を覆い土の弾幕の中に突っ込む。
ゴブリンの惨状を見るに、この土はかなりの硬度を持っているはずだ。しかし、俺が受けた衝撃は想像と比べて驚くほど軽かった。ほとんど痛みを感じる事なく、弾幕を突破してしまう。
(兵士時代もあの程度の魔法は効かなかったからな)
なんとなくクレアがドヤ顔をしている気がする。今のオークマジシャンの魔法で、残っていたゴブリン達の全てが戦闘不能になっていた。床も壁も俺とオークマジシャンが殺したゴブリンで赤く血まみれでなんとなくイライラする。そのイラつきをぶつけるように、オークマジシャンとの一騎討ちに臨んだ。
こちらの攻撃力や防御力は相手のそれよりも低く、相手の体力も俺より高い。まだ戦闘中に魔法がまともに使えない俺は、こいつの攻撃を避けて、その隙に攻撃をしていく。ただこいつはとにかく斬りにくい。体の表面に硬い膜のようなものがあり、そこでこちらの攻撃が大きく減衰させられるためだ。
のちに、これは物理攻撃に対する肉体の防御反応だと知った。なんでも、体の表面を覆っている魔力は様々な攻撃に反応して、その威力を弱める作用があるらしい。そしてその能力の高さを数字として表したものがDEFというステータスということだった。
俺の攻撃はオークマジシャンの高いDEFに阻まれ、大きな傷を与えられない。お返しとばかりに振り回される杖を下がって躱し、さらに斬りつけて小さな傷をつける。オークマジシャンも俺が土魔法を正面から突破してからは、魔法を唱えずに近接戦を続けている。これは長期戦になるな。
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