第12話
翌日の昼下がり、俺たちはニオ村に到着した。今日はクレアが走っていたが、想定よりも速いペースで到着したようだ。
ニオ村はいわゆる農村で、住人は農作業などをしていた。その中で一番近くにいた男にクレアが声をかける。
「やぁ、こんにちは。いきなりだがここはニオ村でいいか?」
「あぁ、ここはニオ村だぁ。それでおめえは何しに来たんだ?」
「イボールからゴブリン討伐と薬草輸送を頼まれた冒険者だ。ギルドの出張所があると聞いたがそれはどこだ?」
「おーゴブリン討伐してくれっか。2、3匹なら俺たちでなんとかすっけど、最近どうにも多いから心配だったんだぁ。んじゃあ真ん中まで行って左側の建物がそれだぁ」
「左側の建物だな。ありがとう」
行ってみると、確かに建物があった。しかし看板もないし、言われないと出張所ではなく、何かの店にしか見えない外観だったが。
中に入ると1人のおばちゃんが
「はーいどうしたい?ウチは農村だからあんまり良いもんは出せないけどね」
と言ってきた。どうも酒場を兼ねた店らしい。
「イボールからゴブリン討伐と薬草輸送の依頼を受けたクレアだ。これが薬草で、ゴブリンの話を聞きたい」
そう言うと、店のおばちゃんは少し驚いた様子だった。
「あらそっちのお客さんかい。じゃあギルドカードと薬草見せてもらえるかい?」
言われてギルドカードと薬草を手渡す。受け取ったおばちゃんはすぐに何かの操作を始めたかと思うと、
「薬草1袋、重量も問題ないね。じゃあ薬草輸送は完了だね。ギルドカードに依頼達成って書いとくから、報酬はどっかのギルドで貰ってくれ」と言った。
聞いてみると、ここのような出張所では依頼達成時にギルドカードへ情報が記録されるらしい。それを都市クラスのギルドに提出すれば依頼達成の報酬が渡されるそうである。
「それでゴブリン討伐だね。あいつらは東の森に居るみたいなんだよ。そいつらを狩って、魔石を持ってきたら任務終了さ。狩っても魔石無しじゃあ認められないから注意するんだよ。それと、もし何か見つけてそれが手に負えないと思ったら帰ってくる事。まぁDランクならゴブリンくらい簡単だろうけど、注意するんだよ。それと泊まるんならここに泊まっていきな。部屋くらいはあるからね」
「では今から行ってくる。時間が掛かりそうなら一度戻ってくるよ」
クレアはこう言うと店を出た。そのまま東へ向かいながら、彼女は俺に声を掛けた。
(ショウ、これから君の初めての実戦だ。私もフォローするから思いっきりやると良い)
(ああ、全力でやるぜ。最初の一歩はミスらずいきたいからな)
そうして俺たちは東の森へ向かった。
約30分で森の前まで来たクレアは、ゴブリン退治の基本を俺に教えてくれた。身長は70~80センチ前後、素手や棍棒で戦うものが多いがとても弱いそうだ。
(慎重に、相手の数を減らしていけば問題なく勝てるはずだ。それとすまないが、戦闘中の魔法は厳禁とする)
(それはどうしてだ?魔法も使った方が楽に片付くんじゃないのか?)
(確かに魔法も併用すれば更に楽な相手だ。しかし、もし魔法の発動に失敗したらその魔力は自分に牙を剥く。だから、慣れないうちは戦闘中に魔法は使わない方が良い)
魔法の行使を失敗すると、使われるはずだった魔力が身体の内部で暴走して、自爆バーストと呼ばれる現象を引き起こすらしい。この現象が圧倒的に危険なので、戦闘中の魔法はかなりの高等テクニックに分類されるそうだ。ちなみにクレアの魔法適性は水と風と雷、この適性は俺も変わらないだろうとのことだった。
(つまり、今回は剣でゴブリンを倒せば良いんだな?)
(そうだ。だが、身体強化魔法は動きに慣れる意味でも使っておこう。ゴブリンを見つけた時点で使って、それから戦えば良いからな)
昨日クレアが魔法の練習で見せた魔法だな。身体能力を高める魔法だから、あるに越したことはない。クレアと身体強化魔法の詠唱を確認し、俺は森に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます