第34話 言葉から受ける印象

 『ねだる』という語から受ける印象は、あまりよいものではありません。どうしても、「立場が下の者が自身の願いを叶えるために、立場が上の者に対して、道理を曲げてまで頼み込んでいる」というような状況を思い浮かべてしまいます。『ねだる』の名詞形に『お』がついた『おねだり』という語も同様に、あまりよい印象を与えない語に見えます。後述の引用にもあるとおり、無理を通そうという状況が透けて見えます(個人的には)。なお、『ねだる』を漢字で書くと『強請る』だそうです。


 ずいぶん前のことになりますが、あるWebサイトを運営する企業が、そのサイトを利用するユーザに対して、サイトの改善要望に関するアンケートをとりました。その企業は、改善要望のことを『おねだり』と表現し、最も多かった要望を実現する、としていました。なお、最近、その要望が実現されたそうです。


 企業がユーザに対する改善要望調査を実施するのはありふれたことですので、これといって気にするところはありません。気になったのは、何故その企業は改善要望項目を『おねだり』と表現したのだろうか、ということでした。前述のとおり、『おねだり』という言葉から受ける印象はあまりよいものではありません。であるにもかかわらず、敢えてこの言葉を選んだということは、その企業にとって何かしら理由があってのことなのでしょう。


 理由について妙なことを考えてしまいました――その企業は、ユーザのことを子どもだと思っているのだろうか。親にものをねだる子どものような存在とみなしているのだろうか。あるいは、その企業はユーザの要望を汲み取れないことから、敢えて企業自身をユーザよりも下の立場にあるとみなしているのだろうか。等など――。


    ◇


ねだり【強請り】

ねだること。せがむこと。「おやつのお強請り」

『デジタル大辞泉』(小学館)より


ねだる【強請る】[動ラ五(四)]

1 甘えたり、無理に頼んだりしてほしいものを請い求める。せがむ。せびる。

2 難くせをつけて要求する。ゆする。

3 ぐずぐず文句を言う。ごねる。

『デジタル大辞泉』(小学館)より


ねだる【強請る】(他五)

〔普通に頼んだのでは出来ない事を〕相手の好意に甘えるようにして、頼み求める。

『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)より


きょうせい【強請】(他サ)

金品を出すようにと、あるいは、その人のために有利になるようにと、無理に頼むこと。

『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)より、省略記号を展開済み

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