第33話 奇妙に思える書き方(個人的には)
テキストデータの作成方法によっては、サイト側で実装されている機能に影響を与える(機能を台無しにする)可能性があります。Web上の小説は組版せずに表示されるため、作成したテキストデータ(アップロードしたテキストデータ)がほぼそのまま表示されます。ここで、『ほぼ』としたのは、禁則処理やルビなどの各機能がサイト側で実装されていることに
投稿サイト側では、追い出し機能は実装されているものの、ぶら下げ機能についてはあまり実装されていないようです。追い出し機能が働くことによって、書き手側の想定した折り返し位置にならないこともあります。ですが、そもそも一行の長さが可変であるWeb上のドキュメントに対して折り返し位置を想定すること自体、それほど意味のあることではないでしょうし、散文を投稿するのであれば体裁について気にする必要性は低いでしょう。ぶら下げ機能をあまり見かけないのはサイト上で実装するのが難しいというのがあるのかもしれません。閉じ括弧や句読点などを一行の文字数を越えた位置に置くとなると、折り返しの位置がそこだけ異なることになるからです。
以下は、Web上で見かけた書き方の中で、特に気になったものです。
◇◇
[1]句点の後ろと後続の文との間に全角空白(または半角空白)を置く
時折、この奇妙な書き方――少なくとも私にとっては奇妙に思える書き方――を見かけます。 どのような書き方かというと、この文章のような書き方です。 この文章では句点『。』の直後と次の文との間に全角空白を置いています。 何故このような書き方を採用しているのかについては、直接確認したことがないため、わかりません。 書籍などで採用されている、『?』や『!』の直後に全角空白を置く(ただし、文が続く場合)、という慣習を踏襲したものなのかもしれません。 あるいは、英語などの言語に於ける文章の書き方を模倣したものなのかもしれません。
理由はともかく、この書き方は、個人的には非常に読みづらいと感じます。 ブラウザのフォント設定によっては――特に固定幅フォントを選択した場合は――、『。』と次の文章との間に大きな隙間を生じさせます。 文と文との間に大きな隙間が生じているのを目にすると、段落の中の文の流れもそこで断ち切られているように見えてしまいます。 そうなると、文章を読むどころではなくなってしまうのです(あくまで個人の感想です)。
加えて、この書き方ですと、画面上の折り返しの状況によっては『。』の次の全角空白が行頭に表示される場合があります。 この状況は、ビューワーなどの設定で文字の大きさを変更することによっても再現可能です(文字の大きさを変更することにより、折り返しの文字数が変更されるため)。 段落のはじめに全角空白を置くという書き方をしている場合、文の切れ目なのか段落の切れ目なのかの判別が困難になります。 読み手に無用な混乱をもたらすことになるかもしれません。
派生形として、全角空白の代わりに半角空白を置く書き方も時折見かけます。 このように、『。』の直後に半角空白を置く書き方です。 こちらの書き方についても、何故このような書き方を採用しているのかについても、直接確認したことがないため、わかりませんが。 おそらく、Web上での見た目を調整したいという意図があるのではないか、と推測しています。 Web上の見た目はWebサーバ側のアプリケーションの作り込み次第なので、ユーザ(投稿者)があれこれ調整しようとしても意味がないとは思うのですが。
◇◇
[2]開き括弧の直後に、および、閉じ括弧の直前に、それぞれ半角空白を置く
こちらの書き方も時折目にします。以下、この書き方の例です。
「 台詞の始まりを表す括弧の直後に半角空白を置いています 」
「 台詞の終わりを表す括弧の直前にも半角空白を置いています 」
次は、通常の(と私が思っている)書き方の例です。
「台詞の始まりを表す括弧の直後に半角空白を置いていません」
「台詞の終わりを表す括弧の直前にも半角空白を置いていません」
何故、このような書き方(かぎ括弧の内側に半角空白を置く書き方)を採用しているのかについては、直接確認したことがないため、わかりません。
このような書き方では、サイト側で実装された禁則処理(追い出し機能)が正しく適用されなくなってしまう場合があります。具体的には、閉じ括弧が行頭に配置されているように見えてしまうことがあります(通常の書き方であれば、閉じ括弧が画面上の行頭に配置されそうなときには、それらの一文字前から次の行に追い出されます)。原稿用紙でも書籍でも避けるべき状況が生じるこの書き方の利点は何なのだろうかと考えているのですが、妥当な利点を思いつくには到っていません。推測の一つとしては、括弧の中身を強調したいという意図があるのかもしれない、というものがあります。悪い意味で強調されていると感じられなくもないのですが。
◇◇
[3]前述の[1]および[2]の合わせ技
書き方の例は以下のとおりです。
「 台詞の始まりを表す括弧の直後に半角空白を置いています。 台詞の終わりを表す括弧の直前にも半角空白を置いています。 加えて、句点の直後には全角空白を置いています 」
「 台詞の始まりを表す括弧の直後に半角空白を置いています。 台詞の終わりを表す括弧の直前にも半角空白を置いています。 加えて、句点の直後には半角空白を置いています 」
このような文章を目にすると、検索する前から何となく違和感を覚えるのですが、検索を実行して違和感の原因を確かめる、ということがあります。ブラウザ上で半角空白文字を検索対象に指定して検索すると、文章のところどころが色づけされます。
◇◇
[4]全角かぎ括弧の代わりに半角かぎ括弧を使用する
この書き方は、全角の「」の代わりに、半角の「」を使用する書き方です。両者の書き方を並べると、以下のようになります。
(a)「括弧の使い方」
(b)「括弧の使い方」
(b)の書き方のほうが、横組みの場合は左寄りに、縦組みの場合は上寄りに、それぞれ表示されると思うのですが、フォントの種類によっては(特に、プロポーショナルフォントの場合は)判別が難しいかもしれません。
おそらく、この書き方も、Web上での見た目を調整したいという意図があるのではないか、と推測しています。あるいは、組版でいうところの「天付き」や「二分アキ」を表現したいのではないか、とも推測しています。
参考情報:
日本語組版処理の要件(日本語版)
https://www.w3.org/TR/jlreq/
◇◇
[5]読点『、』で改行する
文の途中で改行する書き方です。
何かしら、
特殊な効果を狙っているのであればこの書き方もなくはないと思うのですが、
これといった効果があるようにはみえないこともあります。
(いわゆる)『読みやすさ』を狙ってのことなのでしょうか……。
これについても直接確かめたことはないので、
その意図はわかりません。
なお、
この例では句点『。』でも改行しています。
◇◇
[6]一文ごとに改行する
いわゆる箇条書きに近い書き方です。
句点『。』ごとに改行し、その後に次に文を置く書き方です。
この方法ですと段落を表現できませんので、どうやら空白行を段落の代わりとして使用しているようにも読み取れます。
あるいは、「画面上の折り返し」と「段落の終わりの改行」とを混用あるいは混同しているのかもしれませんが、真相は不明です。
この書き方ですと、文章の右側がガタガタになります。
結果として、行頭に戻るまでの目線の移動距離もバラバラになります。
一行ごとに次の行の行頭を探すことになり、個人的には非常に読みづらく感じます。
加えて、段落の開始を字下げするということを律儀に守っていると、段落の左側もガタガタになり、さらに読みづらさが増します。
何故このような書き方を採用するのかについては――推測に留まっていますが――、一文単位で思考しているのではないか、と考えています。
思いついたことを思いついた順に、再構成せずにそのまま並べているのではないか、という推測です。
一文ごとに改行する書き方も場面によっては非常に効果的だとは思うのですが、始終この書き方ですと、その効果も失せてしまいます。
何故このような書き方をするのかについては、それらしい理由を思いつくには到っていません(前述のような推測に留まっています)。
◇◇
2022/01/22 追記
偶然ではありますが、『[2]開き括弧の直後に、および、閉じ括弧の直前に、それぞれ半角空白を置く』の意図を目にする機会に恵まれました。その意図というのは、「画面上での読みやすさ」を考慮したものなのだそうです。……だそうです。その画面上では、開き括弧が(画面上の)行末に来たり、閉じ括弧が(画面上の)行頭に来たりしている箇所があります。意図とは裏腹に、半角空白が挿入されていることによって、サイト側で実装されている禁則処理が正しく機能しない状態になっています。原稿用紙を使い始めたばかりの頃に指摘されるようなことをWebサイト上で再現していることについては、何も気にされていないようでした。あるいは、お気づきになっていないのかもしれません(環境(OS、ブラウザ、フォント、等々の設定)によっては正しく表示されているように見えているのかもしれません)。読みやすさを追求しようとしたもののサイト側で実装されている機能を反故にし、結果として読みづらさを増しているようにしか見えませんでした。
※当該文章では、『[2]』に加えて、『[1]句点の後ろと後続の文との間に全角空白(または半角空白)を置く』も行われていました。なお、置かれているのは半角空白でした。こちらも「画面上での読みやすさ」を考慮したものだそうです。
※当該文章をコピーし、『一太郎』の文書校正ツールにかけたところ、「閉じ括弧の前に不要な空白があります」と指摘されました。しかしながら、開き括弧の後ろの空白については指摘されなかったことから、こちらについては『一太郎』ではチェックしていないようです(設定項目にも見つけられませんでした)。
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