第35話 PCの速さ、思考の速さ、および、入力の速さ

 最近(2021年06月)、PC の HDD を SSD に換装するという、自分にとってはかなり大掛かりな作業を実行しました。しばらく……、かなり……、PC 関連の話題から遠ざかっていたので、下調べそのものはずいぶん前から(半年以上前から)進めていました。SSD についてメーカーを調べ(無難に Western Digital 社を選びました)、SSD の製品シリーズを選び(耐久性を信じて Red シリーズにしました)、容量を選び(年に数回起動する Windows 10 用には 500 GB を、毎日使用する Linux 用には 4 TB を)、既存の HDD から SSD へのクローン作成方法を調べ(マニュアルの必要そうなページを印刷して、何度も読み返しました)、作業手順書を作成し(HDD の取り外し、クローン作成、SSD の取り付け、SSD の動作確認、Linux の再インストール、等など、下書きした後で修正し、さらにノートに書き写しました)、ようやく作業に取り掛かりました。作業そのものに着手したところ、作業量としては一日あれば十分な量だったことが判明したのですが、ディスクのクローン作成とその動作確認で疲れてしまったので、その日はそこで終了しました。続きの作業については翌日に実施し、何事もなく終了しました。


 SSD を HDD に換装した結果、ログイン画面が表示されるまで(Grub2 のタイムアウト後、ログイン画面が表示されるまで)の所要時間が、一分から十秒に短縮されました。また、ログイン後にデスクトップ画面が表示されるまでの所要時間が、数十秒から数秒に短縮されました。これで、ようやく今時の PC の速さを獲得できたのではと独り思っています。アプリケーションの起動と終了、仮想マシンの起動と終了、パッケージのアップデート、などなど、ディスク入出力に関する処理に要する時間が大幅に短縮されたのは大きな成果でした。


 PC は速くなったのですが、思考の速さは当然のことながら以前と変わりありません。キーボード入力の速さも変わりありません。各種辞典での調べ物も速くなったわけではありません。機械のほうは部品の交換によって処理速度の改善を見込めますが、人間である私のほうはそうはいきません。地道に一歩一歩、前に進んでいくより他にないのです。以前は、考えるよりも速く指が動く、あるいは、考える傍から入力できる、などという状況を感じたこともありますが、そうやって作成したものはそのままで誰かに見せられるようなものにはなりませんでした。それらの文章は時間を置いて読み直して修正する必要があり、要した時間を振り返ると、入力の速さとあまり関係ないものになりました。


 キーボードで文字や文章を入力するという作業そのものについては、初めて『一太郎 Ver. 3』を使った頃とそれほど変わっていないかもしれません(その当時夢中になっていた作品の真似をして、親の PC を借り、物語らしきものを作り始めました)。ただ、昔の PC はネットワーク接続していなかったので(注:我が家では)、さまざまなことに気を散らされることもなく、入力のみに専念できていたような気がします。いつのまにか時間が過ぎ、夜更かしそうになったことが何度もあったのを覚えています(注:そのとき書いていた物語らしきものは未完に終わりました)。CPU の周波数が増し、メモリもいつの間にか GiB 単位になり、ドライブの容量は TiB 級になり、ディスプレイの解像度も上がり、キーボードも打ちやすくなり、高速通信の環境も整備されましたが、人間(注:私のことです)の側は変わらないか、あるいは、劣化しているようです。かといって、遅いマシンに戻るのはそれはそれで辛いのではありますが。

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