第12話 「語り手」について(一)
※小説を執筆する中で、一度は考えたことがある内容だと思います。
小説の「『語り手』が物語を語る」という形式は、人称の種類に依らず成り立つことだと思います。この「語り手」について、5W (Who, What, When, Where, Why) の助けを借りて考えてみました。ただし、二人称小説については扱いません(あまり馴染みが無いので……)。
(一)「語り手」そのものについて
(一a)「語り手」は、誰か?
一人称小説であれば、「語り手」は作中の登場人物の一人でしょう。「登場『人物』」ではなく、「登場『動物』」あるいは「登場『物』」である可能性もあります。また、作中での生者の場合もありますし、作中での死者の場合もあります。以降、これらを纏めて「登場人物」と表記することにします。
三人称小説であれば、「語り手」は、「作中には登場しない(登場人物ではない)、仮想的な誰か」ということになります。
(一b)「語り手」は、何を、するのか?
「語り手」は、物語世界を知覚し、それらを誰かに伝えるために語ります。何もしない「語り手」では、「語り手」の存在意義がありません。
(一c)「語り手」は、いつに、存在するのか?
上述の疑問文自体が妙な日本語ですが、これを、『「語り手」は、物語世界の時間軸のどこに存在するのか?』という意味として考えてみます。
一人称小説であれば、「語り手」は物語世界の時間軸のどこかに存在するはずです。そうでないとすると、物語世界に登場できませんので。
三人称小説であれば、「語り手」は物語世界の時間軸には存在しないでしょう。作中には登場しないため、物語世界の時間軸からは独立した存在であるといえます。それ故に、物語世界の過去であろうと未来であろうと、どの時点にも(仮想的に)存在することができます。
(一d)「語り手」は、どこに、存在するのか?
一人称小説であれば、「語り手」は登場人物であるので、物語世界の中に存在します。「語り手」は物語世界の外のことを知ることはできませんし、物語世界の外に別の世界があるかどうかも知ることもできません。
三人称小説であれば、「語り手」は物語世界の外に存在すると考えたほうが妥当な気がします。物語世界の空間と時間とは、「語り手」にとって原則として制約になりません。
(一e)「語り手」は、何故、存在するのか?
小説にとっては、「語り手」の存在は必須です。もし、「語り手」が存在しなかったら、小説は形を成さないはずです。「語り手」そのものが存在しない小説は、そもそも存在し得ないでしょう。『「語り手」が語らない小説』も『「語り手」が存在しない小説』も、どちらも小説との形を成さないでしょう。
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