第2話 会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧』の前に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を置くか否か

 ル=グウィンの作品を読んでいるときに気づいたことです(ル=グウィンの作品は、『岩波同時代ライブラリー』の一冊だった『影との戦い』を読んだだけでした。それまで『ゲド戦記』を全巻読んだことがなかったため、いっそのこと全巻揃えようと思い立ち、岩波少年文庫の全六巻を購入しました)。岩波同時代ライブラリー版も岩波少年文庫版も、会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧(」)』の前に句点(『。』)を置いています。読み始めた当初は視覚的に「何か違う」という感じがありましたが、すぐに慣れました。逆に、『終わりかぎ括弧』の前に句点ありの紙面に慣れてしまうと、「『終わりかぎ括弧』の前に句点が無いと、台詞が終わった気がしない」と感じるようになりました。これもまた慣れの問題ですので、『終わりかぎ括弧』の前に句点無しの紙面を少し読めば慣れるとは思いますが。


 また、同作品では、会話の始まりを表す『始めかぎ括弧(「)』を字下げして組版されています。尤も、字下げ幅は、岩波同時代ライブラリー版では全角一つと半角一つ分であり、岩波少年文庫版では全角一つ分であり、最近多数派を占める半角一つ分の字下げとは明らかに異なります。いずれの場合でも、字下げされているほうが会話の始まりが明確になるので、却って読みやすく感じます。


 表題の、「会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧』の前に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を置くか否か」、ですが、結局のところどちらでもよいのかなと思います。少なくとも、一つの作品の中で統一されていれば、どちらの書き方で書かれていたとしても、「この作者(あるいは翻訳者)は、この作品でそのような書き方をしたのだな」と思うだけですので、特に問題は無いのかと。


 会話と地の文(伝達節)とを混ぜて書く書き方の場合に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を使い分けることで、台詞が一段落したのか、あるいは、続いているのかを書き分けることが可能になりますので、表現方法の選択肢が増えるということはあると思います。



参考文献:


ゲド戦記:『影との戦い』/著:アーシュラ・K.ル=グウィン、訳:清水 真砂子/岩波同時代ライブラリー


ゲド戦記:『影との戦い』『こわれた腕環』『さいはての島へ』『帰還』『ドラゴンフライ』『アースシーの風』/著:アーシュラ・K.ル=グウィン、訳:清水 真砂子/岩波少年文庫


日本語組版処理の要件(日本語版)

https://www.w3.org/TR/2012/NOTE-jlreq-20120403/ja/

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