原稿作成中に思ったことなど
葦笛吹き
第1話 会話の始まりを表すかぎ括弧を字下げするか否か
会話の始まりを表すかぎ括弧を字下げするか否かについては、字下げしたほうが読みやすい(見やすい)場合もあるのではと思っています。書き方について述べたエッセイや書き方指南のサイトなどでは、「会話の始まりを表すかぎ括弧については字下げしない(行頭に全角空白文字を置かない)」と書かれているのを目にすることが多くあります。中には「それが規則だ」というような、強い論調のものも見受けられます。ですが、作品によっては(書き方によっては)、かぎ括弧を字下げしないことによって要らぬ混乱を招くと思っています。
会話の始まりを表すかぎ括弧を字下げしない場合、特に、テキストデータを組版せずにほぼそのままWeb上で表示するような場合、以下の二つを区別するのが困難になります。
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[A]純粋に、会話の始まりを表すかぎ括弧の場合
[B]地の文の中に含まれるかぎ括弧が、折り返しの都合などにより、画面の表示上、行頭に来た場合
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会話の始まりを表すかぎ括弧を字下げしない状態で組版されている(と言われている)書籍でも、よくよく見ると、上述の[A]および[B]は区別されて印字されていることがわかります。[A]の場合は、かぎ括弧の上の部分に若干の空白(半角分の空白)がありますが、[B]の場合は、かぎ括弧の上の部分には空白がありません。
※行頭の空白について、詳しくは以下をご参照ください。
日本語組版処理の要件(日本語版)
https://www.w3.org/TR/jlreq/ja/
より、
図 3.15 行頭に配置する始め括弧類の配置例
テキストデータを組版しない状態でほぼそのまま表示するWeb上では、表示する際に使用する全角文字のかぎ括弧のフォントが一種類のみとなっているため、[A]および[B]の区別がつきません。また、テキストエディタ上でデータを作成していた際にも、上述の[A]と[B]との区別に苦労したことがありました。テキストエディタやワードプロセッサーの編集画面上では、[編集記号の表示]のようなオプションを使用すれば、改行文字や空白文字などの「見えない文字」も表示できるため両者を区別できますが、それでも苦労したことがありました。Web上ではさらに、表示に使用するフォント(等幅フォント、プロポーショナルフォント、明朝、ゴシック)やブラウザの設定(Webページにて指定されたフォントを使用するか、あるいは、ブラウザの設定を優先するか)によって見た目が変化します。そのため、テキストエディタの編集画面以上に苦労することがあります。ですので、私が原稿を作成する場合は(投稿する場合も)、会話の始まりを表すかぎ括弧も字下げすることにしています(Web上で多用されている、台詞の前後に空白行を挟む形式では、[A]および[B]の区別はあまり重要ではないかもしれませんが)。
紙の書籍に於いて会話の始まりを表すかぎ括弧を字下げしている出版社は、今では岩波書店や白水社くらいでしょうか。岩波文庫と岩波少年文庫、白水Uブックスでは字下げされているのを全てではありませんが確認しました。ですが、岩波文庫や岩波少年文庫については、出版年代によって字下げの幅が異なります。少し前のものは「全角一つ分+半角一つ分」でしたが、今のものは「全角一つ分」となっているようです。古い版を新しい版に組み直したときに変更されているようですが、新しい版でも「全角一つ分+半角一つ分」となっているものもあるので、どのような基準で字下げ幅を決定しているのかは読み取れませんでした。白水Uブックスでは、手元にあるものですと、「全角一つ分」となっているのを確認しました。その他の出版社として、見つけられた限りでは、角川文庫の夏目漱石作品の一部で会話の始まりを表すかぎ括弧が字下げされています。出版年代を確認したところ、案の定、かなり前(昭和の中頃よりも前)のものでした。
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