なんのてらいもなく、かといって淡々としているのではなく、落ち着いた穏やかな語り口調がしんみりと心に染み入る。季節で現すなら早春といいたいところだが、敢えて晩夏としよう。燃えるような情熱の締め括りに、成熟した一人の大人として。
綴られた言葉には感謝の気持ちが溢れていて、二人の関係やこれまでの経緯はわからないのに、とても温かくなれるお手紙。そこにはきっと、いくつものドラマ。いくつものシーン。書き切れない想いが沢山あって。二人の積み重ねてきたものが確かに感じ取れる。……けれど、これは別れの手紙。たったこれだけの文字数で温かくも切なくなれる、優しい短編です。どうか、二人の間に道違えても切れない絆がありますように!