第36話 くりあ

──クション



朗々と響く声。

宿名が展開した光が、俺の周囲に魔法陣を作っている。

生きている──いや・・・


おそらくこれは・・・リザレクション。

俺は、1度死んだのだろう。


「トカゲめ・・・おいたが過ぎるようだな」


茜が、光に包まれ・・・あれは・・・


流れる様な、紅く、透き通る鎧。

成人男性くらいの大きさの、やはり刀身が紅く透き通る、大剣。

炎のエフェクトを身に纏う・・・


炎焔の勇者ブレイバー、アカネ・・・やはりか」


俺は思わず、呟く。


DDSの公式大会は、何故か録画できないし、出場者の顔や名前も忘れてしまうのだが・・・例外的に覚えた名前がある。

チームとしては早期敗退にも関わらず、ウォリアー部門でMVPを受賞したプレイヤー。


重量級の装備と、最速の立ち回りとの対比・・・その美しい、特徴的な武具・・・憧れのプレイヤーだった。

そして──


茜と同じく、サブクラス──かつてのクラスへと、スウィッチしたのだろう。

紫苑も、宿名も、その姿を変えた。


四元素の支配者エレメントシオン。

天の癒し手セイントスクナ。


いずれも、2年前──黄金世代と呼ばれたあの年の、クラス別MVP受賞者だ。


ガンッ


茜が、ドラゴンを斬りつける。

空気が震え、爆音が響く。

ドラゴンが後退り・・・


ゴウッ


ドラゴンのブレス・・・


ジッ


宿名が展開した結界が、ブレスを掻き消す。

茜は結界の効果範囲へと、一瞬で後退している。


ゴンッ


茜の追撃。

ドラゴンがバランスを崩す。


ゴウッ


尻尾の一撃──やはり、茜は攻撃の範囲外に。


ドゴッ


更に茜が追撃。


コウッ


紫苑の魔法が発動。

輝く炎の塊が、次々とドラゴンを貫く。

やはり茜は後退している。


ゴンッ


抵抗して立ち上がろうとしたドラゴンを、茜が斬りつけ、爆音と共にドラゴンが転倒──


都合、紫苑の3回目の魔法が、ドラゴンの命を奪った。


MVP


そんな文字が、茜、紫苑、宿名の頭上に輝く。

すげえ。


「お疲れ様・・・実質レベルが100を超えてる気がするよ」


ヒュッ


茜が刃を振る。

炎が巻き起こり、消える。


「格好良いな」


ぽつり、と素直な感想を漏らす。


「か・・・格好良いって・・・先輩に褒められた・・・」


茜がぺたり、とへたり込む。

格好良く無くなったけど、可愛い。


「この力・・・二度と振るうまいと思っていたが・・・いつかは、この力を用いずとも、攻略したいものだな」


宿名が言う。


「いや、というか、ボスのレベル設定がおかしくないか?」


俺が呻く。

開始レベル1のダンジョンだぞ?


「同等の働きをした者が複数いれば、複数人がMVPに選出される・・・噂には聞いていましたが、私以外の人がMVPをとったのを、初めて見ましたわ」


紫苑が言う。

それだけ3人とも優秀、って事か。


「さて・・・最後の宝箱、だな」


茜が嬉しそうに言う。


「やはり解錠は難しいのか?」


俺が尋ねると、


「いや、最後の宝箱は、罠は無いぞ。安全に開けられるし、しかも、PTメンバー全員がアイテムを獲得出来る」


宿名が言う。

PTドロップ、か。


最後の部屋に行くと、円形状に6個の宝箱。

中央に大きな宝箱が置いてあった。


「先輩、順番に開けていってくれ」


茜がそう言うと、紫苑と宿名が頷く。

そういうものなのか?


あけていくと・・・


ミスリルのインゴット

ミスリルのインゴット

銀風の鎧

ミスリルのインゴット

スターダスト

銀風


耐性50%無視


銀風の鎧はすらりとした銀色の全身鎧の見た目。

格好良い上に軽く、かさばらない。


スターダストは、宝石のようだ。

ダイヤモンドよりも更に効果が高く、軽い。


銀風は、エアタンクの見た目だ。

装備すると、銀色の光が周囲に漂うようになる。


耐性50%無視は・・・効果付き宝石。

武具やアミュレット──この場合は武器か──につけて、戦闘を劇的に変える効果がある。

恐らく、激レア。


「これは・・・凄いね、このダンジョン。レベル100のダンジョンに匹敵すると思う」


茜が興奮気味に言う。


「ディガーも楽しいと思っていたが、やはりレアを狙うのは楽しいな。この感動は、久々だ」


宿名も満足気に言う。


「レアが出た事より、みなさんと一緒にダンジョンに潜れた事こそが、何より嬉しかったです。やはり、仲が良い人と一緒にダンジョンに潜るのは・・・楽しいですね!」


紫苑が、自分のキャラを思い出したかの様に叫ぶ。

確か、前のPTでは孤立してたんだよな?


だがまあ、


「今日は楽しかったよ。最後はみんなに任せてしまったけど・・・俺も早く、一緒に戦えるように頑張るよ」


目標、ドラゴン。


装備がだいぶ強化されたし、此処に潜っていれば、すぐに強くなれそうな気がする。


それにしても──


最初に感じた直感・・・やはり、茜も、紫苑も、宿名も、かつて俺が憧れた、スタープレイヤーだったのか。

意外と、凄いPTなのかも知れない。


**************************


この話は、一旦休止となります。

お付き合い下さり、有り難うございました。

次回の再開は未定です。

恐らく、不定期に少しずつ投稿すると思います。

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