第35話 りょうだん

ガンッ


俺の一撃で、レベル45のリビングミスリルアーマーが吹き飛ぶ。


俺達は順調にレベルを上げ、45近いレベルになっていた。

ちなみに、俺はレベル44だ。


ゴッ


間髪入れず、レベル47のポイズンマミーに一撃を入れる。


ゴボ・・・


俺の身体に毒がまわり・・・


「キュア!」


紫苑の神聖術で毒が癒やされる。


接触で対象に毒を与える特殊能力。

ソロだと超無視対象。


いちいち、リアルに苦しいのやめて欲しい。


ザンッ


茜がマミーの首を飛ばす。

毒化はしない・・・一応、コツは有るらしい。

コツは教えてもらったが、超感覚的な説明で分からなかった。

むわぐわ、って感じらしい。


「宿名、もう少しエフダブをアジって、ネスレはルノで」


「・・・すまん、分からん・・・」


紫苑の指摘に、宿名が困った様な声を出す。

多分、立ち回りなんだろうなあ。


「それより紫苑、戦闘中にエルファやグロが切れていることがある。流石に常時グロとは言わんが・・・」


「3分とか、5秒しかもたない魔法を切らさないとか無理でしょ?!詠唱とディレイが危険すぎるでしょ!」


宿名の無茶振りに、紫苑が叫ぶ。

詠唱は、魔法の行使前に必要な時間。

ディレイは、魔法を使った後、次の魔法が使えなくなる時間だ。


「・・・3分は何とかなると思うが・・・」


「無理はやめとこうよ・・・」


宿名のぼやきに、茜が突っ込む。

短期間しか効果が続かない魔法は、効果が高いものが多いが・・・維持するのは大変なのだろう。

ここぞという時はともかく、雑魚戦で使うのは骨だ。


「先輩!フットワークの動きが悪いよ。今度指導してあげるからね!」


「お、で特訓だな。よろしくな」


「なっ・・・せ、先輩と2人きり・・・」


ぷしゅう


茜がへたり込む。


「さっき宝箱の解錠をミスったな・・・いけない娘には、おしおきしないとな・・・」


追い打ちをかけておく。


「わわ・・・先輩が・・・いけないおしおき・・・」


茜が真っ赤になって顔を隠す。

そこまで言ってない。


「あの・・・初めてなので、優しくして下さいね・・・?」


ちょ?!


「これだからリア充は・・・」

「そういうのは自宅でやって貰えませんかね」


宿名と紫苑が低い声で言う。

茜の自宅だけどな。


こほん


俺は咳払いすると、


「先に進むぞ」


俺はそう宣言した。


--


「ボスまでいるのか。50以下のダンジョンにはいない筈なんだけど」


茜が驚いた様に言う。


「気を引き締めろ。一瞬の油断が命取りだ」


宿名が真剣な声音で言う。

死んだらどうなるんだろ?

現実リアルでも死ぬって事は無い筈だ。


「これは、最奥の宝箱が期待できますわね。ボスレアが出れば、更に潤いますわ」


紫苑が言う。


宿名と紫苑が、バフをかけていく。


目の前にいるボス・・・見間違いでなければ、ドラゴンだよな?

レベル64アイスドラゴン。

レベルもおかしいよな?


準備が整い・・・特攻!


ス・・・


青い光が一直線に伸びる。

やや広い範囲・・・突進か?


ゴウッ


輝くブレス。

地面が凍り付く。

強い・・・!


「フレアバスター!」


火属性の斧技を叩き込──


ギンッ


弾かれた?!

赤い線をなぞったのに!


って──


ガッ


いつの間にか目前に迫ったドラゴンが、俺を噛み砕こうとする。

何とかタワーシールドで防──


ザシュ


タワーシールドごと手を噛みちぎられた?!


「ぐあああああああ」


思わず叫ぶ。

気を失いそうなくらい痛い。


紫苑の回復が飛ぶが・・・茜が突っ込むのが見え・・・だが・・・


ザンッ


俺の胴体を、ドラゴンの爪が切り裂いた。

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