第34話 めんつ

「いや、元々、正式に部活ができたら、DDS本体は学校側に返却する約束だ。返すと言っているのだから、持っていけば良かろう」


宿名が淡々と言う。

顔に、早く帰ってDDSに潜りたいと書いてある。


「新部員の方ですか・・・?とにかく、駄目です。それでは道理が通りません」


副会長が首を振る。


「では、どうすれば、尻尾を巻いてソレを持ち帰って下さるのかしら?」


紫苑が不機嫌そうに吐き捨てる。


「ですから──って、青森さん?!と言うか、貴方そんな喋り方でしたか?!」


副会長が後退る。


こほん


副会長は咳払いすると、


「私達、生徒会と勝負しましょう。上位2人の中間テストの結果の合計点・・・それが大きかった方が、この本体を得る・・・それでどうですか?」


副会長がドヤ顔で言う。

生徒会の他のメンバーが若干引いて・・・いや、会長が微妙な顔をしている。


3年生は8教科。

2年生は7教科。


合計点で競うと、不平等ではあるが。


「こちらは1400点ですわね。そちらは?」


紫苑が、哀れむ様な目で尋ねる。


「・・・は?」


副会長が怪訝な顔で聞き返す。


「だから、こちらは1400点だが・・・そちらは?」


宿名が、淡々と尋ねる。


「え・・・え・・・700点満点・・・?」


副会長が絞り出す様に問う。


俺と宿名は顔を見合わせると、成績表を見せる。

同立1位、共に700点満点、合計で1400点だ。


「俺と鈴瀬で1300点弱、俺達の負けだな」


会長が、溜息と共に、そう言う。


「ま、待って下さい・・・会長・・・まだ・・・まだ、3人の合計なら、こちらにも勝機が・・・」


副会長・・・鈴瀬?が、会長に取り付く様に言う。


「・・・それだと2094点ですわね・・・」


口惜しそうに、紫苑が言う。

紫苑は、試験が始まる前は余裕な態度を見せていたのに・・・蓋を開けてみれば、ケアレスミスで6点も失っていたのだ。

決して低い点数では無いが、あの態度からこれはちょっと無いわー。


「・・・こんなの絶対おかしいよ・・・」


茜が呟く。

茜は、だいたい8割程の得点率。

一応、1年生では首席らしいが・・・ちょっと、ね。


「こうなった以上、生徒会の負けだ。DDSの本体は、貸与された物であるし、回収はさせて貰うが・・・俺が自費でだんじょんぶに寄付しよう。それで構わないな」


「会長?!」


鈴瀬が会長を凝視する。

会長は、俺達を見て、


「流石に、ここまで醜態を晒しておいて、ただ回収するだけと言うのは・・・生徒会の面子が立たん」


・・・まあ、そうですよね。


「そんなの駄目です!!」


尚も副会長が叫ぶ。

困ったな・・・


「じゃあこうしよう。宿名の兄貴が、自費でDDS本体を買って、だんじょんぶに寄付してくれるらしい。生徒会は、DDS運営から貸与されたDDS本体を回収する・・・それでどうだ?」


「・・・分かりました、それで良いです」


「「良いのか?!」」


俺の提案に、鈴瀬が了承する。

宿名と生徒会長が、声を揃えて驚きの声を出す。


ともあれ。


生徒会襲撃事件は、何とか収まった。


それにしても・・・生徒会長と宿名、兄弟だけあって顔はかなり似ているのだが。

意外と気付かないものなのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る