107:旅鮫のさがしもの③
「サトウさんって、めちゃくちゃ強そうですよね」
タミコのリスカウターこと【看破】でも見通せない彼のレベル。間違いなくトロコやボスメットよりも、そして自分よりも強いだろうと愁は確信している。
こうして面と向かっていて――本性を隠した状態でもレベル99と推定されたあの魔人アラト、あれと同等以上の圧力さえ感じるのは気のせいだろうか。見た目の厳つさも含めて、ガチンコを挑んでもまるで勝てる気がしない。不意打ちで仕掛けても頭からしゃくしゃくされるイメージしか湧かない。
「いやまあ、伊達に長く生きとらんだけでの。腕っぷしをひけらかすような青さは古い歯と一緒に水底に沈めてきたわい」
「そんだけ強いなら、回りくどくウツキさんを使ったりしないで、全部自分でやったらよかったんじゃないですか? 討伐隊がやられたときだって――」
「なぜ助けなかったのか、と言いたいんかの?」
救えたはずだ、その場にいたというのなら。
ボスメットもあの集団もみんな蹴散らして、やつらの目的を聞き出せばよかった。「それは師匠のやりかたじゃない」とさっきウツキが言っていたが、彼ならそれができたのだ。
「……あいにくワシは、人の味方でも獣の味方でもないんでの。〝眷属化〟していたとはいえ獣は獣、地の底の生存闘争に正義も悪もない。あるいは人間同士の諍いやら悪だくみやらが発端だったとて、それならなおさら関わりとうない」
「でも、サトウさんも自分を狩人だって――」
「お主らのように職業としてのそれを選んだ憶えも、この鮫肌に同胞の証を刻んだ憶えもないんでの。ワシが亡き友より継いだのは、生き様としてのそれだけだの。生きるために食らい、食らうために殺す。無益な殺生はせん。ただそれだけだの」
そんな風に言われると、愁としてもそれ以上二の句を継げない。
人間の味方こそが正しいと考えるのは人間だけであり、そして人間のみが知性体だった時代はとうに終わっている。愁が問いただしたのはあくまで人間側の都合を軸に据えた価値観にすぎない。
ふしゅー、と口から長く息を吐くサトウ。首にはきちんと鰓の筋があり、ときおりそこからひゅーひゅーと空気の抜けるような音が聞こえるが、そもそも発声できているし口からも呼吸できるのか。
「数十年前、ワシは地上でちいとばかりヤンチャしてしもうての。我を忘れ、狩人としての誇りを忘れ、ただの獣に成り果ててしもうた。あの日からワシは人との関わりを絶ち、暗いメトロの水流をただ一匹回遊し続けてきた。まあ、今は思いがけず小間使いができたんで、たまに地上のメシと酒に与る機会もできたがの」
「頑固ジジイなんですよ。人使い粗いし」
「今はしがない世捨て鮫の身。人と関わるのも人のゴタゴタに巻き込まれるのも、もうコリゴリなんでの。そういうのはお主ら人間がやればええんだわい」
「つっても、さすがに今回は無茶振りがすぎましたからね。頭の中で何回酢〆にしてやったことか聞きたいですか?」
「酸っぱいのはちょっと勘弁だの……」さすがに少しバツが悪そうにするサトウ。「まあ、魔人絡みの可能性があれば、まるっきり捨て置くこともできんでの。ようやく見つけたアレの手がかりだったかもしれんし……」
アレというのがなんなのか気になるが、先に一つ確認しておく。
「あの、じゃあ……なんで俺らは助けてくれたんすか?」
溺れかけていた愁たちを水中から救い出した。それを放っておかず、しかも介抱までしてくれて。そこにはどんな思惑があるのか。
サトウは鮫頭をぽりぽりと掻き、太い首をわずかにかしげる。
「まあ、ワシと弟子とで厄介事に巻き込んだ負い目というのもなかったわけではないが……そもそもワシがおらんでも、お主は死にはせんかったろうの」
「へ?」
「お池にはまってあっぷあっぷしたくらいでおっ死ぬようなタマじゃなかろう。お主はの」
つぶらな瞳が愁を柔らかく見下ろしている。この老鮫にはすべて見透かされているような感じがして、愁は首をすくめて目を逸らす。
「溺れかけのくせに殴りかかってくるくらいだからの……ワシを前にしても恐れずに向かってくる者なんぞ、果たしていつぶりだったかの。ちょっぴりドキッとしちゃったわい」
「あれは……とっさというかなんというか……サーセン」
「しゃほほ」
目を細め、笑うサトウ。今までで一番自然な笑みのように見える。
「ともあれ、ほっといても勝手に助かった者を助けて恩に着せるようなケチな真似はせんでの。お主と少々話をしてみたかったというのと、肝心なのは……そっちの毛玉の嬢ちゃんのほうかの」
「へ?」
「りす?」
急に水を向けられたタミコがひょこっと頭を上げてきょろきょろする。若干船を漕ぎかけていたところだ。
「ワシの古馴染みに、嬢ちゃんのようなカーバンクル族をえらく贔屓しとる野郎がおっての。あれに貸しをつくっておくと、ワシにとっても後々大いに役立つんでの」
「あたい、そのひとのことしらんりすけど」
「しゃほほ。それでもあの胴長野郎にとっては可愛い恩リスの一匹に変わりなく、そのピンチを救ったワシは無視しがたい恩鮫となるわけよ。ちゅーわけだから、お主らが恩に着んでもええからの」
要はアオモトのような性癖の知人がいるので、そいつへの貸しにしておくということか。世の中にはまだ見ぬ奇人変人がひしめいているようだ。
「あ、そういえばあのときの水柱? あれはなんだったんすかね? あれもまさかサトウさんの仕業とか……」
生き物のごとくうねり、襲いかかる鉄砲水。めちゃくちゃ理不尽な現象だったが、この鮫の能力でしたと言われたらある意味納得できそうだ。
「いやいや、それはとんだ濡れ衣だの。あれはワシとは無関係よ、おおかたあのフロアのトラップだと思うがの。思うに、トリガーは『あそこの石像を全部破壊すること』だったんじゃないかの? あのフロアには幾度か水没したような痕跡もあったし、前にも何度か似たようなことが起こったんだろうの」
「あ」
言われて思い返すと、異変の始まりは最後の石像を(ムジラミをぶっとばして)破壊した直後だった。
その推測が正しいとしたら、あれのほとんどは愁自身が暴れまわってぶっ壊したわけで……つまり自業自得か。てへぺろ。
「お主が目覚める前に見に行ったんだがの、フロアほぼ全部水没しとったわい。やつらもそろそろ地上へトンズラした頃かの」
「……全員逃げきったんですよね?」
「少なくともワシは人間の水死体は見かけとらんの。ヤギザルのはいくつかぷかぷかしとったがの」
「グラサンとかキモ男は水底に沈んどけって感じですけど、他の子たちが無事っぽいのはちょっとだけよかったです。ちょっとしか話せなかったですけど、そんなに悪い子たちじゃなかったんですよね。なんであんな子たちが半グレまがいのことやってたんだか、世も末ってやつですかね」
愁としても、その気持ちは少しだけわかる。いくつか言葉を交わしたあのトロコという少女についてだけだが。
「できれば殺したくない」と彼女は言った。
「あたしが殺したいのは、この世でたった一人だけ」とも言った。
死闘の最中にそんなことをぬかす倒錯した甘ったれガールではあったが、その言葉が嘘でないと示すかのように、彼女の刃は愁の命に届かないところを削るのみだった(それに関しては容赦なかったが)。
彼女の切っ先の向こうにいるのは誰なのだろう。年端も行かない少女があそこまで研ぎ澄まされなければならない理由がそこにあるのだろうか。
知りたいと思うのと同時に、もう一度同じ形での再会は勘弁願いたいとも思う。別に決着をつけてやろうなんて戦闘狂のような欲求はないし、彼女と戦う理由もない。
(だけど――)
「あなたが強すぎるから。今後、必ずあたしたちの邪魔になる」、彼女はそうも言っていた。
(なんだろうなあ)
彼女とも、あのグラサン男とも。
いずれまたどこかで、互いに望まぬ形で会うことになる。そんな気がしている。
***
ウツキの懐中時計によると、現在午前三時。時刻を知ってしまうとここぞとばかりに疲労と眠気が押し寄せてきて、会話もままならなくなってくる。陥落したタミコのよだれが愁の膝にじわじわとしみを広げていく。
そのままここで夜を明かすことになり、サトウが見張りを買って出る。ウツキは勝手に愁のマントを拝借してくるまり、数秒後には小さないびきをかきはじめる。
別にサトウを信用していないわけでもないが、愁としてはなるべく警戒を怠らないようにと気を張ろうとする。だがそのうちヘソ天タミコのぴゅーぴゅー安らかな寝息のリズムに誘われるようにして、深い眠りに落ちてしまう。
はっと目を覚ますと、ヒカリゴケの光はぼんやりとした白色光に変わっている。朝だ。
サトウは最後に目にした姿勢のまま、そこにいる。岩に腰かけて、ぼうっと洞窟の奥のほうを見つめている。起きているのか、それとも目を開けたまま器用に眠っていたりして。
鮫は人間のようには眠らず、泳ぎながら脳の一部を休ませたりするらしい。ずっと起きていられると聞くと睡眠必須な生き物としては羨ましいかもしれないが、「泳ぎを止めたら呼吸ができなくなって死ぬから」らしいので生まれながらのブラック人生ともとれる。
「おはようございます……今、朝の六時ですね……」
ウツキはすでに起きている。眠たげな目をこすりながら懐中時計で時間を確認する。
「あー、がっつり寝ちった……頭ぼーっとする……」
「だいぶお疲れでしたもんね。あたしは師匠の影響でどんどん睡眠時間が短くなってるんですよね」
「それはロウカりす」
「おはようタミコちゃん。起き抜けに痛いとこえぐってくるね」
スガモを出てリクギ村に着いたのが昨日の夕方頃。そのままメトロに入り、ほぼノンストップで五階までの弾丸ツアー。クエスト受注からまだ二十四時間も経っていないのが信じられないくらいだ。
「おう、おはようさん。いい朝だの」
サトウが立ち上がって近づいてくる。この老鮫、足音がまるでしない。彼も【消音】持ちなのか。相変わらず【感知胞子】でもその輪郭を捉えられないし、敵ではないながら不気味な存在だ。
「さて……夜も明けたことだし、ワシはそろそろお暇しようかの」
「え? あ、行っちゃうんすか?」
見ればウツキはウエットスーツのようなぴったりした服に着替えている。これが水中遊泳モードなのか。戦乳力はまな板レベルと断ぜざるをえないが、尻は意外とでかい。
「〝眷属〟もコロニーもなくなったこのメトロで、やつらも長居はせんだろうからの。ワシもここに残る理由もないでの」
「そうですか……お世話になりました」
ずいぶんあっさりな感じだが、まあ別に親しい間柄になったわけでもないし、流浪の旅人的な感覚からすればそんなものかもしれない。ただ――その前に一つだけ確認しておきたいことがある。
「あの、まだ肝心なこと訊いてなかったんですけど」
昨晩は訊く前にお開きになってしまったのだ。
「ふむ?」
「そもそも、サトウさんがさがしてるものってなんなんですか? サトウさんの目的って?」
サトウは少し間を置くように押し黙る。言葉をさがすようにゆっくりと太い首を回してあたりを眺める。
「そこはあえて話さないようにしとったんだがの。聞きたいというなら別に構わんが」
「え、なんかまずい話なんすか?」
「まあ、井戸端会議の話題には向かんわな。べらべら吹聴するような真似をしとったら、お主らのいうメトロ教団が目をひん剥いて追いかけてくるかもしれんがの」
「なにそれこわい」
シン・トーキョーの三大禁忌のようなものだろうか。そんな風に言われると気になるし怖くなる。知りたいような、聞くのが怖いような。
どうしよう、と愁はちょっぴり悩む。好奇心を満たしたいと後先構わず猪突猛進するほどの蛮勇さはないが、かと言ってこの世界の重大事項なら知っておきたいとも思う。せめてタミコの耳だけでもふさいでおこうか。
「…………〝
「へ?」
「〝幽宮〟。それがワシのさがすものだ」
ああ、聞いてしまった。まだ返事もしていないのに、タミコの耳もふさいでいないのに。せめて一言断ってくれたら心の準備もできたのに。
「えっと、かくりのみや?」
「そう、〝幽宮〟。どこかで聞いた憶えはあるかの?」
「たぶんないと思いますけど」
言葉の響きからして日本史に出てきそうなフレーズだが、初耳だ。
「それが場所の名前なのか、それともなんらかの施設の名前なのか。そこになにがあるのか、誰が待つのか、そもそも本当に実在するものなのか……なにも定かではない。ワシがさがしとるのはそんな夢に移ろう蜃気楼のようなものだ」
イマイチ要領を得ない。タミコも首をかしげている。
「……お主は、今の世界をつくったものがなにか、知っとるか?」
「へ?」
天地創造的な、宗教じみた話……ではなさそうだ。今の世界、つまり壁に囲まれたこのシン・トーキョーをつくったもの――。
「えっと、〝メトロの氾濫〟と〝超菌類汚染〟ってことですか?」
「左様。お主ら〝糸繰りの民〟が語り継ぐ〝東京審判〟。その災厄を境に、世界はまるで姿を変えたという。迷宮化したメトロが地の底を埋め尽くし、奇怪な菌糸植物が地上を覆い尽くした。巨大な壁が外界を拒み、強大な獣が跋扈するようになった。生き延びた人間は体内に菌糸を宿し、ワシのようなしゃべる獣も現れた。まあ、ワシ自身この目でその変遷を見てきたわけでもないんだがの」
愁は知っている。今のように変わり果てる前の世界を。
平成の世に生まれ、二十三年そこで生きてきた。今の世ではごくわずかしかいないだろう先史文明の生き残りの一人だ。
「では……それらの災厄がなぜ起こったのか。〝東京審判〟とはいったいなんだったのか。それについては?」
「……いえ、なにも」
「しゃほほ、ワシも知らんでの。というか、今世にその答えを知る者が果たしておるかどうか……あのペテン師教祖はなにかしら掴んどるようだが、いくら問い詰めても口を割らんかったでの」
教団の教祖まで登場してきた。どうしよう、思いがけない話のスケールになってきた。このシン・トーキョーという国を根幹から揺るがし、この新世界の核心につながっていくような――やはりもう少し心の準備期間をもらっておけばよかった。
「今は亡き我が友は、生前よく語っとった……〝東京審判〟は天災などではなく、何者かの手によって起こされた人為的な破局に違いないとな」
「……人災、ってことですか?」
東京中の地下をつくりかえ、東京のすべてを分解させる超常的な毒をばら撒いた……そんな荒唐無稽な事象が、人の手によるものだった?
もちろん天変地異にしてもぶっとびすぎているが、人災と言われてもやはりにわかには信じがたい。平成の世で平凡に生きてきた元一般人としてはどちらも等しく現実味がないのだ。実際はきっちり現実に起こったわけだが。
「彼は終生その答えをさがしとった。彼があの戦争で命を落としたのち、ワシはその遺志を遂げるためだけに生きてきた。……五十年、この国をさんざん泳ぎ回り、この水掻きで掴むことができた手がかりはたった三つ――すべての答えは〝幽宮〟にあるということ。この国のどこかのメトロに、そこへ至る扉があるということ。そして……入り口の扉を開く鍵は、魔人と〝糸繰士〟にあるということ」
「……魔人と、〝糸繰士〟……」
無意識に、愁は自分の胸元をそっと握りしめている。
「とまあ、そんな話だの。お主に打ち明けた理由はわかろう……のう、十三人目の〝糸繰士〟よ」
愁は息を呑む。サトウは巨大な口の端を器用ににやりとする。
「……気づいてたんすね、やっぱ」
「しゃほほ。見聞が広いのがジジイという生き物の数少ない取り柄での」
ボスメットとの戦いを見られたときか。それとも【不滅】の青カビを見られたときか。あるいはもっと前から、最初から見当がついていたのかもしれない。だとしてもこの底知れない老鮫なら驚きはしない。
「え、ちょ、いと? 〝糸繰士〟、アベさんが? マジすか……?」
弟子のほうは気づいていなかったのか、ロリ顔をぎょっとさせている。
「アベくんよ、お主はまだまだ世界を知らぬようだの。だが焦ることはない、お主が〝糸繰士〟であるならば、お主の旅は必ずこの世界の中枢へとつながっておる。生ける者たちをつなぎ、幾重もの縁を紡ぎ、たどるべき運命を手繰る……その大層な呼び名は、そんな意味を込めてつけられたそうだからの。しゃほほ、案外お主のようなぽっと出が、さらっと世界の謎を解き明かしたりするかもの」
「いや、えっと……」
いきなりそんなことを言われても。思いがけず大スケールのシナリオに自分まで巻き込まれそうになっている感があるが、「どうして自分にこんな力が与えられたのか」も未だにわからない当事者としてはイマイチぴんとこない。
もちろん、この世界をめぐる数々の謎について、知りたいという気持ちはある。平成の生き残りである他の〝糸繰士〟ともいずれは会ってみたいし、叶うなら壁の外にも行ってみたい。とは思うが――そんな風に過大な期待をかけられるとちょっぴり尻込みしてしまう現代っ子。サトウも本気ではないと思いたい。
「ふん、ナゾだかナッツだかしらんりすが、あたいがマルカジリりすわ」
「お前ほんと頼もしいわ」
しゃっほっほっ、とサトウは背筋を反って愉快そうに笑う。
「カーバンクル族の娘を連れた新たな〝糸繰士〟か……お主らがもう一歩世界の中心へと足を踏み込んだとき、今度はお主らの話を聞かせてもらいたいわい。……では達者での、また会う日までな」
水掻きをひらひらさせ、サトウは踵を返して歩きだす。向かう先には大きな池がある。
「あ、師匠、ちょっと待って」
慌ててウツキが追いかけようとすると、サトウが半分振り返り、手を突き出して牽制する。
「ウツケ、いやウツキよ。お主は連れていかん」
「へ?」
「今回の一件、まだ終わっとらんだろう? 任務は続行だ。世俗を離れて久しいワシらにはええ機会だわい、お主はアベくんらについていき、世俗に揉まれ、事の成り行きを見定めるんだの。ワシが満足できる情報を得るまでは帰ってこんでええからの」
「へ?」
「え?」
「りす?」
「たまにはお日様の光を浴びてメトロの垢を落とすのも悪くなかろう。次に会うときは身も心もちったあ小綺麗になっとくように。じゃあの」
「え、ちょ、ま――」
ウツキの最後の制止を無視して、サトウはその巨体をちゃぽん、とささやかな音とともに池へと潜り込ませる。わずかな波紋が収まったとき、三人並んで畔から覗く水の中に老鮫の姿は影も形もない。
そのまま十数秒がすぎ、誰もなにも発しない。
「……えーと……」
気をとり直すようにつぶやいたウツキが、ぺったんこの胸を膨らませるように大きく息を吸う。
「クソ鮫ぇええっ! 次に会うときはカマボコじゃぁああっ!」
偽ロリの絶叫がわんわんと反響し、偽ロリを残して消えていく。
別に望んだわけでもないが――こうしてウツキが仲間になった。
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