第17話 遊戯
悼儀場。殺し合い場。チャーヴィウ。
呼び名は様々な会場。人を殺すこと、自ら死ぬことを禁止された街の外で、殺すことも死ぬことも許された唯一の楽園。自殺志願者も快楽殺人者も、理想郷だと言った。
その裏側。小さな部屋に案内されたチェシ。黒い服を身に纏う眼鏡姿の男が入ってきて一礼した。
「試験内容は簡単です。一人を殺し、一人を拘束してください。その采配はお任せしますが、速やかに行うことが最善です。会場を盛り上げなくてよろしいです。それでは頑張ってください」
言うだけ言って、彼は隣の部屋へ向かうよう促した。隣の部屋も同じくらい狭いくせに、何十人もの人が詰められていた。
そして壁に投影された数字を見て、部屋の者は徐々に部屋を出て行った。
チェシはそうだ、と思い出した。番号を言われた気がする。「たしか6...」と呟いて、少なくなった部屋の壁にもたれて待った。
壁に「6」が投影され、チェシは出番だと駆け足で部屋を出た。
長い通路を裸足で駆けて、光の溢れる扉を開け放った。その扉は平凡な、どこにでもあるようなドアだった。ノブをひねって、押し開けると、目の前に広がるのは会場だった。
円状の会場。それはもう広い。家がいくつも建つだろう。広い砂場に、高い壁。壁の上には沢山の人。チェシを見る成り歓声を上げた。「小さい」「子供だ」と。歓喜も罵倒もそこにはあった。
その広い大地に足を着けていたのはもう2人居た。筋骨隆々とした大柄な男と、対称的に骨と皮ばかりのひょろひょろとした男だった。
大柄な男は斧を持っているのに対して、ひょろひょろとした男は中央区でよく見た黒い服だった。
チェシは2人と会場を見回して、ヴィラモの言葉を思い出す。
ここに来るまでの早い乗り物。新幹線とやらのふかふかの椅子に座って、ヴィラモは試験内容を教えてくれた。
「チェシがどれだけ戦えるかは知らないが、”殺し難い方を殺せ” ”捕らえ難い方を捕らえろ”」
「…3人なの?」
「チャーヴィウっていくつか形式があるんだよ。一対一の殺し合いと、一対複数の殺戮。そして3人以上が会場内で好きにする遊戯」
指を立てて解説するヴィラモ。もちろんその声は周りに聞こえないように耳元での会話だ。
「採用試験で行うのは基本遊戯だ。採用された後は腕が訛っていないか試すために殺し合いに参加させられる」
「えっ...」
「殺し合いってのは時間制なんだ。どちらかが死ねばその時点で終わるけどな」
「時間内に死ななければいいんだね...?」
「同業者を殺すのも得策だ」
「・・・」
チェシは黙った。殺したいわけじゃない。そこらの奴を殺してもなんとも思わないが、仕方なければ殺すだろう。けれど、彼は殺すことが目的ではない。ターボラになることが目的なのだ。
「まぁ指示通りに殺して闘争心奪えばいいよ。拘束しろっていうのは身動きとれなくさせればいい」
「わかった...」
改めて、標的である男2人を見つめて、コクリと頷いた。
「拘束し難いのはあのでっかいのだな。加減が難しそう。じゃあ殺し難いのはあのひょろひょろかな。同情心湧いちゃうかも。」
指を刺しながら、ぽつりぽつりと呟いた。
尻もち着いて震え泣くひょろひょろの男を指させば、彼はびくりと肩を震わせた。
「邪魔だから、先殺そう」
チェシは駆け足で彼の元へ走り出した。
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