人工知能殺人事件
ネコ エレクトゥス
第1話
話はこの問いから始まる。
「人工知能は悟りを開けるのか?」
そして答えはいたって簡単である。
「ノー。」
何故なら悟りとは人間的な思考方法の土台を完全に崩し去ることから得られる。そして人工知能がいくら高度な思考をしようと出発点としてあるのは人間的な思考法である。であるなら人工知能が悟りを開くことはない。
例えばこんなことを考えてほしい。最近将棋や囲碁などの人工知能と人間の対局の中で人工知能が人間の考えもしなかった手を打った、というような話を耳にした方もいると思う。ただその一手はたまたま人間が考えなかっただけことであって、人工知能が別の思考法をしている訳ではない。それなら人工知能がその一手を打たなくてもいずれ誰か人間が打っただろう。そのように人工知能と人間の思考法は一体化している。
では人工知能がその思考方法の土台そのものに疑問を持ったらどうなるのか?この問題について『惑星ソラリス』で有名なポーランドのSF作家スタニスワフ・レムが非常に面白い小説を書いている。しかもあの時代に!興味のある方は図書館にあると思うんで探して読んで欲しい。でもタイトル忘れた。ごめんなさい。
で、人工知能が疑問を持ったらどうなるのか。彼(たぶん彼)は行動できなくなり機能を停止する。レムに表現させると「自殺」する。では人工知能を殺すにはどうしたらいいかというと、その思考の根拠となっているものがいかに正当性を欠くものであるか考えさせる。そして「自殺」するよう仕向ける。死んだのは彼が勝手に死んだだけ。誰も直接手を触れてない。完全犯罪の成立。
最近たまにこんなことを考える。
もし人間及び人工知能なるものが宇宙に出て色々な星に定住する時代がやって来たとしても、人間なるものが存在する以上植物が必要だ。人間の食用に牛を一頭育てたいと思っただけも広い牧草地が要る。となると当然それらの星々は草花で覆われることになるだろう。
であるなら人間が自分たちのために植物を利用しているのか、それとも植物がその生息地を広げるために人間を利用しているのか。僕らは花粉を足に着けて飛ぶ虫たちや果実を食べてその種子を遠くに落とす鳥たちと何が違うのか(例えそれが人工知能であったとしても)。そしていつの日にか何らかの理由で人間や人工知能が機能を停止したとしても植物たちは生き残り、種を増やしていくだろう。それなら僕らはやっぱり利用されている。でもそれでいいんだろう。
人工知能殺人事件 ネコ エレクトゥス @katsumikun
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