三章 2 『ま〜た忘れてました……魔法』
三章 2 『ま〜た忘れてました……魔法』
朝。目覚ましを止め重たい瞼を開け目をこすりまだ覚醒しきっていない目に朝の日差しをーー
ザァァァーーー
季節は梅雨。
まぁた雨か。昨日も一昨日も雨。その前の日も確か雨だった。俺の住んでいる所は四日も連続で雨が降り続いていた。
昨日まではまだ小降りの雨だったのでそこまで濡れることはなかった。しかし今日はかなり降っている。
これは傘をさしていても多少濡れそうだ。
「ーー近畿地方も梅雨に入り一週間程経過しましたが雨が降り続いているところが多いですね」
そうなんですよお天気お姉さん。もう四日も雨……勘弁して欲しいですわ。
「室内にいても湿気で気分は良くないですよね。濡れた服などはすぐに着替えて風邪などにならないよう充分お気をつけ下さい」
はーい。一応替えの靴下とタオル持っていっておくか。パンツは……いらねぇか。
「ではこんな雨の中ですが今日も一日頑張っていきましょう!」
はい! このお姉さんの一言がもらえただけで少しは憂鬱な気分がマシにはなるってものだ。
というか、ほんとこんな雨の中なのに外でのお仕事お疲れ様です。今日ぐらい室内でもいいんじゃと思ってしまう。
「では最後に本日の朝の星座占いです。まず十一位はーー」
この朝の占いを見てから学校に行くのが最近の日課になってきている。こういう占いはいいのだけ信じるようにできるだけしている。
まあ悪い結果が出た時は忘れ去るのが一番。
ーーで、結果はというと
「今日は五位だとよ。なんとも微妙な順位ですわ。半分よか少し上だけどあんまりテンション上がるって順位でもないよな」
「確かに五位って微妙ね。でも咲都にはちょうどいいんじゃない? 順位下でもなんだかんだ気にするし一位とかだったら逆に調子に乗るから」
まあそうかもしれないけど内容が本当に微妙だった。
「ーー少し忘れがちな事を思い出してやってみるといいかも。ラッキーカラーは水色です」
お天気お姉さんの顔を思い出しながら朝の記憶を引っ張り出す。お天気お姉さん可愛いなぁ。
忘れがちな事をやってみるといいかもってことはまず忘れてる事を思い出してそれをやらなきゃいけない。
やってもいいかも、ぐらいで何かいいことがあるとも言い切れない。心底微妙だ。
「そういやラッキーカラーが水色だったっけか。……お前の髪の毛水色じゃん」
「そうだけど……なによ?」
その髪の毛ちょっとよこせやとは流石のオレも言わない。
「いや別に。なんか水色の物今日持ってないの? 俺何も無いんだよな」
「そういや今日は下……いや持ってないかな」
なにが言いたかったのかは分からないが持ってないのか。てことは占いは忘れるぐらいの方向で考えておこう。
降りしきる雨の中、晴香と傘をさしながら学校へ向かう。
雨が降っているとやはり気温も少し下がるのか肌寒い。
寺を抜けもう少しで学校だというところでふとあるものが俺の目に入った。
この肌寒い日に晴香は制服のシャツ一枚で上着を着ていなかった。それが気になり見ていると目に入ったのはーー
「……ちょっと晴香さん? 今日上着は持ってきておられるんですか?」
「? カバンの中にあるけどなんで?」
「いやね、晴香さん今シャツ一枚じゃないですか? 俺の今日のラッキーカラーが見えてるんですよねー。……透けて」
少し強めの雨によって晴香のシャツは所々濡れていた。それによってシャツの下が透けて見えているわけで……
「えっ? ……あっ! ちょっ、見ないで!」
見ないでって言われましても見えてますからねぇ。
さっき何か言おうとしたのは下着が水色って言おうとしてたんだなこいつ。
しかしラッキーカラーをラッキースケベできるなんて今日は朝からツイている。
「学校では上着常に着とけよ?」
「分かってるわよ……今日に限って下に着るシャツ忘れてたなんて。私今日運良くないかも。その占い私何位だった?」
「そういやお前の月は十二位だったような」
「えぇ……聞かなきゃ良かった」
まあそういう日もありますわな。
学校につき授業を受けながら……聞き流しながら外をずっと見ている。
外では相変わらずの勢いで雨が降り注いでいた。
あぁ……これが全部お金に変わったらなぁ。
「咲都くん? ぼーっとして私の授業中にどこ見てるの?」
今は担任の先生、美山ちゃんによる学習活動の授業。通称学活の時間だった。
「どこって外ですけど……」
「そういうことじゃなくてちゃんと聞いててねって言ってるの。そして今から咲都くんの出番よ。委員の三人お願いね」
「そうなの?」
「「はい」」
そういや今日はこの前行った山の家の感想や反省を書いた作文の発表の時間だったっけ。その司会進行を何故か俺ら委員が任されていた。
なんでイインチョだけじゃないんだよ。こんなのの司会に三人もいらんだろ。
とか思いつつちゃんと前に出て司会をこなす。
「じゃあ名簿順でまずはーー」
順々に発表が進み俺の番が回って来た。
さぁ、オレの発表を聞け!
「ーーで二日目はテストがあったわけですが理不尽にも補習になりまして……」
「理不尽も何も咲都が便所長かっただけやん」
「それな」
高木からのヤジに鉄矢が賛同しクラス中が笑う。
クッソ、なんであの時に遅くなった理由を説明してやりたい。できないけど。
そう、あの時はトイレに行く為に部屋を出ようとした瞬間に空間に入ったのだ。
そしてそのあと何とか一件落着しトイレへと向かったわけだが……そのトイレで少し水魔法の練習をしていた。
そのせいで部屋に戻るのが遅れて……あっ、占いで言われた忘れてたこと思い出した。
魔法の練習、やるって言ってたのにあれからやってないわ。てかマジで忘れてた。
「一応みなさんに言っときますけどうんこしてた訳じゃないですからね。うんこで遅くなった訳じゃないですからね! 少し考え事をしてて……。決してうんこじゃーー」
「えー虹夜くん、うんこって言い過ぎです」
イインチョに怒られた。
ーーで発表はあらかた終わり授業終了のチャイムが鳴る。
発表が終わっていない生徒はまた後日という事になった。
して昼休み、
「やっぱり神の実芭蕉はやばいよな〜。二期やらねぇかな」
「そうだね。アレは本当に神アニメと言っても過言じゃないよ」
「オレもあのアニメは二期来てほしいな」
鉄矢と宇多くんの三人で飯を食べながらアニメの話しで盛りあがっていると
ピロリンッ
「ん? あ、晴香からか」
昼休みが始まってすぐに晴香にある連絡をしておいた。
一応思い出したので忘れないうちにと思い、
ーー今日暇か? 暇なんだったら忘れてた魔法の練習付き合って欲しいんだけど
ってな内容の連絡を。で返ってきた返事が
ーーまだ練習してなかったの? 暇児咲都のくせに。付き合うのはいいけどちゃんと練習するなら瞳姉に頼んでイーアさんのところでやった方がいいわよ
っとな。
暇児は余計だ。俺はいつも趣味に忙しいって言ってるだろうに。
理由はよく分からんが晴香がそう言うなら瞳姉にもしゃあなし連絡しておこう。
イーアさんの所には瞳姉がいないと行けないからな。
ーー今日学校終わったら魔法の練習したいんだけど晴香にイーアさんのところの方が良いって言われたしイーアさんのところ連れってくれないか?
それとプリンはもういいから写真集を早く返せ。早く返さないとそのうち瞳姉のコレクション水魔法でビチョビチョにしてやるぞ
よし、これでいいだろーー
ピロリンッ
速攻で携帯に通知が入る。
通知一件、瞳姉。いや早すぎるだろ。絶対ニートだよあの女。
仕事はアーウェルサ関係の事をしてるとか言ってたが本当にしてるのか怪しくなってきた。やっぱニートなんじゃねえか?
して内容は、
ーーいいよ〜
いや鬼畜か! 今日返すのでコレクション水浸しは勘弁してください。死んでしまいます
よし、放課後の予定は決まった。
学校が終わり家に帰る。晴香には別れ際に出る準備が出来たら連絡してくれと言っておいた。
あぁ〜やっぱり少し濡れたな。さっさと着替えて制服干しておこう。
外は勿論雨なので部屋干しをする。
暑くなった時の為にと早めに洗っておいた扇風機が役立つ時だ。
そんなことを思案しつつ部屋に入るとーー
「学校お疲れ様〜。晴香も来るの?」
予想はしてたけどやっぱりいました瞳姉。しかもお茶まで入れてくつろいでいる。
「来るよ。それより写真集は?」
「あっ、こちらに御座います。貸していただきありがとうございました」
貸した、だと? 何を言ってるんだこのニートは。キレてやろうか……キレてやろうかぇえ⁉︎
勢いでその胸についているでかいモノを揉みしだいて……おっといかんいかん。そんな事をしたら流石に殺されるかもしれない。
キレそうになるのをなんとか堪え、
「貸したんじゃなくて盗られたも等しいんだけどな。……で、どうだった?」
本の感想を聞き出す。
「いや〜最高も最高、めちゃくちゃ可愛いね! 悶死するかと思うぐらいよかったよ。最近は声優さんも顔出してる人が多いけどみんなレベル高いねー」
瞳姉とは好みの女の子の趣味があう。なので感想を聞く訳だ。
まあ性別は女の瞳姉とこの趣味が合うのもどうかと思うけど……。
しばらく瞳姉と女の子の話しで盛り上がっていると晴香から連絡が来たので玄関をでる。
白のTシャツに短パンか。またしても上が透けそうな……まあ見る側の俺としては全然オッケーなのだが。むしろいい。なのでツッコミはせずに黙っておく。
晴香と瞳姉と俺はイーアさんのところに行く為に近くの山に。
そろそろここにもクワガタやカブトを取りに来ないとな〜。
「着いたわよ」
少し歩きイーアさんの家の付近へ。
「じゃまた私の手に触れててね」
瞳姉に言われ晴香と俺は瞳姉に触れる。すると一瞬で目の前にイーアさんの家が目の前に現れた。擬似空間でいいのかな? に入っていた。
「あっ、晴香ちゃん! に咲都くんだっけ? それに瞳まで。今日はどうしたの?」
イーアさんは家の外についているロッジのようなところ一人でお茶を飲んでいた。
「晴香も咲都もまだ擬似空間魔法はまだ使えないし私は保護者ってわけ。今日は咲都が魔法の練習したいらしいからこの空間使わせてもらおうと思ってね。いい?」
「なるほどね。そういう事なら全然いいよ。私はここからお茶を飲んで見物しておくわ」
「ありがとうございますイーアさん」
「頑張ってね〜」
天気は俺の水魔法に適した絶好の雨。よっしゃ! 水魔法の練習、やってやりますか!
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