二章 エピローグ 『プリンと写真集!』

 二章 エピローグ 『プリンと写真集!』




 バスに揺られながら学校への帰路の途中、窓の外に見える雲はあるが晴れた空を何気なく見上げる。空には鳥が舞い雲が流れている。

 あぁ〜平和ですなぁ〜。


「おい、おーい、咲都聞いてるのか?」


「んあっ?」


 ほのぼのとした空の様子に目を奪われ何かを言っていた鉄矢に気がつかなかった。


「なんだよ?」


「いや、美山先生うるさいけど暇だししりとりでもしようぜ」


「そんことかよ。雲愛でて癒されてたのに。まあいいけどさ」


「雲で癒されるとかあるのかよ……おっ、確かに綺麗な空だな。雲もザ、雲みたいに綺麗な形してるし」


 そうそう。何気なく空を見てるだけでも案外綺麗だったり飛行機が飛んでいたり案外暇つぶしにはなるもんだ。


「ん? ……なんだ今の?」


 窓の外を見ていた鉄矢が何か見つけたようだ。


「どうしたんだ? 何か面白い事でもあったか?」


「いや俺も今空を見てたんだけどさ、なんか鳥じゃない何かが飛んでたような……」


「鳥じゃないって飛行機とかか?」


「遠くてよく分からなかったけど形はドラゴンみたいな……」


「ドラゴン? ってあのゲームとかに出てくるドラゴンかよ。まさかぁ〜、さすがに鳥じゃねぇの?」


 鉄矢も面白い事を言うようになったな。この現実世界にドラゴンなんていてたまるか。

 空想の生物は空想の中だからいてもいいんだよ。実際にいたらたまったものじゃない……あれ? 自分で言ってて物凄い矛盾を感じた。昨日倒した人狼とかも空想の生物っちゃ空想の生物だよなぁ……。

 いや、でもドラゴンはさすがに……


「さすがに俺の見間違いかな? 鳥じゃ無いとは思うんだけどドラゴンは言い過ぎたな。ゲームやり過ぎてらしく無い事言ったかもしれん」


 確かに珍しいな。鉄矢はゲームの世界、つまり二次元のファンタジーは好きだがそれが三次元になってほしいとは思っていないクチだ。

 よく実際にゲームの世界とかに放り込まれたらとかの話にはなるが二人ともリアルになってしまったファンタジーは否定する事の方が多い。

 つまり俺と一緒かな。現実は平和が一番。


「実際ドラゴンなんていてたまるかって話だよな」


「そ、それなぁー」


 人狼とか鬼とか見たことあるなんて言えねぇ〜。

 まあアレはある意味では現実では無いようなものだ。異世界なんて関係ないやつからしたら非現実そのものだからな。

 ……それが俺からしたら現実なのか。自分で考えててちょっと嫌になってきた。

 マジで無かったことになれないかな……ならねぇよなぁ。




「みんな着いたわよー。降りたら一回集合してね。クラス写真撮るから」


 学校に着き続々とみんながバスから降りて行く。

 降りてバスのドアの前にいた美山ちゃんに疑問を投げかける。


「美山ちゃん、なんで山の家でクラス写真撮らなかったんすか?」


「……ハシャギ過ぎて忘れてたの」


 そう美山ちゃんは小声で俺の疑問に答えた。なんじゃそりゃ。


 クラスのみんなで校門を入ってすぐにある木の花壇の前で集まり写真を撮る。


「みんな笑って〜……ハイ、ズーチー」


 パシャ パシャ


 なんだよズーチーって……。


「よしっ! オッケー。みんなありがとう。帰ってくれていいわよ。気をつけてねー」




 ーー校門の前で待っていた晴香と合流して帰る。鉄矢は今から部活なんだとさ。よくやりますわ。


「なんで咲都のクラスあんな所で写真撮ってたの?」


「なんか美山ちゃんが山の家で写真撮るの忘れてたからだとさ」


「そうなの。美山先生可愛いけどおっちょこちょいなのね」


 あれがおっちょこちょいなのかは知らないがふとある事を思い出した。


「どうしたのいきなりニヤニヤして……また妄想?」


「違うわい! 家にプリンあるの思い出したんだよ。一個千円近くするめちゃくちゃ美味いプリンがな!」


 何を隠そうプリンは俺の大好物だ。甘いお菓子の中で何が好き? と聞かれれば迷わずプリンをあげる。次いでシュークリームかな。


「高! でもそれだけ値が張るってことは美味しいんでしょ? ねえ、帰ったら一口ちょうだい?」


「嫌に決まってるだろ。後一個しか残ってないし。てか俺と間接キッスでもしたいのか? ん?」


「違うわよ! おんなじスプーンで食べるわけ無いでしょ」


 それもそうか。でも関節キッスの一言で顔を少し赤らめるなんてこいつも可愛いやつだな。

 しかしプリンが家にあるという事実は俺のテンションをかなり上げる。

 プリンプリンプリン! あぁ〜早く食いてえなぁ。

 ……何故か嫌な予感がする。ヤベっ、今のはフラグ立てた訳じゃないぞ俺!




「じゃあまた月曜日ね」


「おう」


 家に着きオレはプリン様に会うために急いで部屋に戻り着替える。

 なにせ一瞬感じた嫌な予感。急がないわけにはいかない。


「プリン様、今会いに行きます!」


 ふと着替えてる俺の目に机の上に置いてある紙がとまる。こんなの置いてたかな……?

 恐る恐る手に取った紙には見覚えのある字でこう書いてあった。




 ーー咲都へ


 少し用事があったので居るかなと思い家に入りましたが居なかったのでまた後で来ます。

 もし帰って手紙を見て暇だったら連絡をくださいな。


 スーパーウルトラビューティー瞳お姉さんより




 まあここまでは良かった。瞳姉が家に来たこともわかったし用事があるらしいし連絡するか、と。

 しかし問題はその紙の左下し小さく書いてある文だった。




 ーー追記


 冷蔵庫に入ってたプリンが『咲都』の名前の書いてありプリンが咲都のだとわかったのでいただきました。凄く濃厚で美味しいかったです。

 それと枕の下にチラッと見えてた声優さんの写真集。可愛いかったので借りていきます。




 ーー頭が昨日ぶりに真っ白になった。

 楽しみにしていた冷蔵庫にあるはずのプリンは食されさらに寝る時に枕の下に置いているお気に入りコレクションの一つ、鉄矢から教えてもらった声優さんの写真集を持っていかれただと……。

 いや、バカな。そんなことあるはずが。


 着替えの途中で上半身制服、下半身パンツという珍装で枕の下を……写真集が無い。

 階段を朦朧とした足取りで下りキッチンにある冷蔵庫に手を伸ばす。

 無い訳が無い、無い訳が無い。無い訳が……な、無かった。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 疲れて帰った俺に降りかかった不幸は一気に俺の気分を天国から地獄に変えた。


 瞳姉マジ許すまじ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る