二章 18 『初日の夜遊びと二日目、おいでなすった』

 二章 18 『初日の夜遊びと二日目、おいでなすった』




 晩ご飯のカレーの後片付けを終え班の女子と別れ三人で風呂に入いる。

 鬼畜仕様の隠れんぼで疲れたのは勿論、カレー作りでもなんだかんだ疲れたので風呂に入るのは至福のひと時になるだろうなと思いつつ、


「あ〜、今日も疲れた〜。てか山の家まで来て明日テストとか萎えるわ……」


「確かにそうだけど今はお風呂でゆっくりして疲れを落とそうよ!」


 宇多くんちょっとテンション高いな。まあ初めての大浴場らしいしそら楽しみにもなるか。ここ来るのも初めてとか言ってたしな。


「さて、さっさと脱いで身体洗いますかっ」





 ーー身体を洗い終え湯船に浸かる。軽く伸びをして力を抜き身体をゆっくり沈める。


「ヴァァ〜キモティィ〜」


「ほんと疲れた身体に染みるな」


「ふぁ〜、あったかいねー」


 ここだけの話、大浴場とかのおっきなお風呂に入ると泳ぎたくなるよねぇ……いや、さすがにもう泳いだりはしませんけどね。


 途中で一斑の連中も入ってきてなんだかんだゆっくりし風呂を上がり六人で自分達の部屋に戻る。

 このあとは就寝時間まで自由時間なので部屋のみんなで宇多くんが持ってきてたトランプをやることになった。

 ちな大富豪をすることに。


「っはぁ⁉︎ またビリケツかよ! 四回もやって俺が全回大貧民とかありかよ……」


 鉄矢は昔から大富豪はクソ弱い。そのくせこのルール自体は好きらしくやりたがる。

 大体負けるのにやりたいとかMかよとか少し思う。


「相変わらず鉄矢は大富豪弱いなぁ。ほれ大貧民のクソ鉄、大富豪の俺に強いカードさっさと二枚よこせ。俺はこのいらんやつ二枚やるから」


「クソうぜぇ〜、ほらよジョーカーとスペードの2だよ」


「あざすあざす。てか喉乾いたな」


「ほな、次大貧民やったやつ六人分のジュース奢りでどうや?」


 高木からの提案にみんな少し考える。六人分となればそこそこの値段する。


「俺はいいけど」


「賛成〜」


「俺も別にいいよ」


「僕もいいけど鉄矢くん大丈夫なの?」


「次は……次こそは負けねぇ! 勝ってお前らを嘲笑ってやる!」


 ーーハイ、フラグいただきました。


「ぬわぁぁ!! また負けたし……五連敗とかマジかよ。え、マジかよ」


 無事、フラグを回収して五連敗を終えた鉄矢くん。まあ最初から結果はここにいふみんなが分かってたけどね。

 宇多くんの忠告を聞いておけば良かったのに。


「マジ卍マジ卍。早くジュース買ってきて〜。喉乾きましたのワタクシー」


「へえへえ行ってきますよ。みんなお茶でいいか?」


「「「「おけおけ」」」」


「いいよ」


 てなわけで鉄矢の奢りでお茶を飲みながらトランプを終えて少し駄弁ることに。

 話題は俺のカレーの話になった。


「いや〜、あのカレーはマジで美味しかったな。咲都にしては凄かったわ」


「そんな美味かったんか。ちょいもらいに行けば良かったな」


「確かに美味しいかったよね。一斑のみんなのカレーはどうだったの?」


「「「普通」」」


「あっ、そうだったんだ……」


 えらく息の揃った普通だな。

 あのカレーは素材も少し良かったしちょっとこだわって作ったから当然といえば当然か。自分で言うのもなんだが。

 そういや晴香の班のやつ味見してやりたかったな。あいつが作ったのは少し気になる。てか今度作ってもらお。


「そういやさ、晴香と一緒にいた女の子可愛いかったよな。なんか咲都とも親しげやったけどあれ誰なんだ?」


 おっと、鉄矢からこの質問が来たということは俺のターン。自慢タイムの訪れか。

 始まりますよ男たちのゲスい話が。


「ん? あぁ、華絵ちゃんのことか。晴香のクラスの人だよ。あの子も副委員なんだよ。で、晴香の友達であり俺の友達でもある」


「はっ? 咲都も友達なのかよ……嘘だろ?」


「嘘じゃねーわ! しかも連絡先も知ってるんだなこれが」


 実は今日の朝、地味に連絡を交換しておいた。女子の連絡先、ゲットだぜ!

 しかも華絵ちゃんから聞いてくれた。ちょい嬉しかったな〜。


「マジか〜。あの子は可愛いかったな。俺も晴香に紹介して貰おうかなー」


「その子って何組なん?」


「晴香と一緒だし五組だよ。元気でめっちゃいい子だよ。羨ましいだろおまいら」


「鉄矢、そんなに可愛いかったのか?」


「ありゃ可愛い。晴香はどっちかっていうと綺麗って感じだけどその華絵ちゃんだっけ? はカワイイって感じだな」


「そりゃなかなかだな」


「期待値大」


 ん? 今地味に晴香が綺麗とかいう言葉が上がったが比較対象としてあってるのか?

 いや確かに晴香も綺麗は綺麗だけどなんか違うような。


「晴香ってお前らの中で人気なん?」


「いや、お前らもなにも男子の中ではかなり人気高いぞ。この前もどっかの男子が晴香に告白したらしいけどなぁ、玉砕だろ?」


「俺もそうだけど咲都も晴香とは長く一緒にいすぎて慣れてるもんな」


 ほー。晴香のやつ人気なのか。確かにこの前告白されたとか言っておったな。


「咲都は晴香ちゃんとお隣さんの幼馴染なんだろ? そんな絵に描いたようなアニメラノベあるあるのリア充環境でよく何もならないよなー。マジで羨ましいわ」


 周りから見れば俺はリア充環境とやらにいるのか? 何回も言うが晴香は確かに可愛いけど一緒いすぎて感覚がよくわからん。

 鉄矢も言ってるけどなんか慣れ的ななにかがあるのかもな。


「宇多くんはこの子可愛いな〜とかないのか?」


「僕は今はまだ無いかなぁ。知らない人が結構多いしね。まだ誰が誰かよく分からないのが本音かな」


 まあそらそうかもな。いってもまだ高校生になり一ヶ月ちょいしか経ってない。俺も実際クラスの女子と同じ小中のやつらぐらいしか分からないしな。


「今のクラスにも可愛い子はいるっちゃいるよな」


「あぁ、委員長とかもなかなか可愛いよな〜。副委員長も捨てがたい」


 確かにあの二人もなかなか……あれ? 俺って今気づいたけどちょっとしたラッキー小僧ですか?


「今出た子全員咲都に関係してんじゃねぇか……」


「ほんまや……お前ちょっと処刑せなあかんな。こっちこいや」


「いやいやいやいや、たまたまじゃねーかよ! 華絵ちゃんはまだしも晴香は幼馴染なだけだしイインチョも中谷さんも俺が無理矢理副委員にならされてたまたまって感じじゃん!」


「そのたまたまがおかしいんじゃ!」


「ちょっとぐらいその運わけろ咲都!」


 えぇ、そんな無茶な。確かに今名前上がった子は全員何らかの繋がりがあるけど他にも可愛いなんているじゃねえか。

 だがしかし、側から見たらちょっとしたラッキー小僧か。悪くはないな。


 コンコンッ


 誰かがオレたちの部屋をノックした。


「はーい?」


「そろそろ就寝時間だぞー」


「了解でーす」


 見回っていた先生だったようだ。タイミングよく来てくれたお陰でアホどもに処刑されずにすんだな。

 なんだかんだで時間が経っていたようだ。もう時計は十時少し前になっていた。

 みんなが布団に入り電気が消える。


「おい真下の鉄矢、おならしてやろうか?」


「ふざけるなよ咲都」




 ーー二日目の朝を迎え朝ご飯の時間に。

 朝ご飯はどうやら山の家にある食堂のバイキングのようだ。

 眠たい。昼間に寝たのが響いたのか夜に寝れず携帯をいじっていたら結局あまり眠れなかった。


 朝ご飯を終え食堂でテストの説明があったあと各クラスに分かれる。

 現在八時過ぎ。十一時までまた勉強でそのあとテストを昼までの一時間やるらしい。


「はーい、じゃあみんな十一時まで勉強してね」


 昨日も含めこれだけ勉強時間あれば普通は補習のやつなんていないだろ……でもオレは昨日の暗記時間後の方寝てたしな。今もめっちゃくちゃ眠たい。

 どうせ覚えられそうにないし勉強時間もテストも寝てやろうか。


 とか思いつつ答えの紙を眺めていると何故か頭に入ってくる気がする。

 これはもしやもしかあるかもしれないぞ。いいぞ俺、この調子で丸暗記してやろう。たまには本気出してやるか。


「じゃ十一時になるからテスト用紙くばるし勉強用のプリントしまって机の上ペンと消しゴムだけにしてね」


 さて、なかなか覚えられたぞ。これは割といけるんじゃないか?

 テスト用紙が配られ数日ぶりにテスト開始前の空気に。あ〜、この数分の空気なんか眠くなるんだよな。


「よし! それじゃあみんな始めて」


 一斉にみんながプリントを表にして書き始める。

 俺はというと……書ける、書けるぞ! いけてるぞこれは。

 この感じだと補習は多分受けなくていいな。自由時間普通に寝てやろ。




 ーーテスト開始から十五分ぐらい経過しただろうか。相変わらずスラスラと書けている。まあ大体暗記だしな。

 部屋にはみんながテストを解いているペンの音だけが響いている。


 トイレ行きたくなってきた。


「美山ちゃん、トイレ行って来ますわ」


「いいけど五分以内に戻って来ないと普通のテストの時と同じで点数無効になるから強制補習よ」


「はいよー」


 五分以内ね。時間は……十一時三十二分か。了解しました。


 立ち上がりトイレに向かう為扉を開け出ようとしたその時、


 カリカリカリカッ……


 ーー


 突如、部屋に響くペンの音が一斉に静まる。


「ん?」


 気になり後ろを振り返りーーそこには完全に静止したみんながいた。

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