二章 17 『この宿泊学習、カレーに全てを賭ける!』

 二章 17 『この宿泊学習、カレーに全てを賭ける!』




 ーーちょうど二時十分前ぐらいだろうか。各クラスの集合場所に関する放送がかかった。どうやら俺ら二組は大広間集合らしい。

 さ〜て、一体何が始まるのやら(棒)


 二時少し前にクラス全員が大広間に集まりオレが点呼をし美山ちゃんに全員いる事を伝える。


「さぁみんな、今からお楽しみの今後の予定を発表するよ!」


「はい!」


「手を挙げた虹夜くん、何かな?」


「勉強会するんでしょ?」


「えっ⁉︎ なんで知ってるの⁉︎ もしかして虹夜くん……エスパーなの⁉︎」


「そうですエスパーです。ってのは嘘で高木が盗み聞きしたのを聞いたんですけどね」


「おい! バラすなよ咲都!」


「なんだ、ちょっとだけほんとにエスパーかと思ったのに。まあいいわ、そう! 今から楽しい楽しい勉強会をします。そして明日の午前中に今からする用紙の中から問題をだしテストをして点数の悪かった人は午後から補習よ。でも安心して、点数の良い人は午後からは自由時間だから」


 それ点数悪い人達は勉強漬けの地獄じゃないですか。

 確実に俺は補習ルートだな。


「ではみんなプリントを五教科分配るので各自のペースで解いて行ってください。全部出来た人から答えの用紙を貰いに来てくださいね。じゃみんな、六時までの四時間頑張れ!」


 クソ! 美山ちゃんめ、他人事だと思いおってからに!

 明日の午後の自由時間が無くなるなんて……残りの半日と明日が勉強漬けなんて嫌だ!


「はいじゃあプリント配るので委員三人も手伝ってください」


「「はい」」


「……へぇーい」


 何かいい裏ルートが無いものか……何とか、何とかインチキできんのか…………!


「閃いた!」


「虹夜くん静かに〜」


「あっ、すいません」


 しまった、また心の声が口に出てしまった。

 がしかーし、今回の作戦は完璧に近いぞ。

 美山ちゃんは全部出来た人から答えの用紙を貰いに来て、と言った。て事はだ、適当に全部答えの欄を埋めて軽く確認してもらい答えの用紙を貰えばいい……。そしてその答えを丸暗記!

 キタコレ! 天才かよ俺! 我ながらすげぇぜ……。

 あとは時間をある程度見計らって……


「出来ました〜」


「おっ! 早いわね虹夜くん。どれどれ〜ちゃんと全部書いてるわね。はいこれ答えの用紙ね。ちゃんと間違えてた所は直して覚える様にね。明日のテストに抜かりない様に」


「はーい、分かりましたせんせー」


 ふっはっはっはっ! 作戦大成功! ちょっと台詞が棒読みっぽくなってしまったが美山ちゃんにはバレてないな。

 これで答えを丸暗記すれば明日のテストなんて楽勝よ! あ〜俺天才やわ。

 鉄矢が怪しげな視線を送って来ているが何も言えまい……。あ〜俺天才か。




 ーーで、アッと言う間に時間は過ぎ午後六時、晩御飯のカレーを作る時間になりました。

 え? 暗記はどうだったかって? 聞いて驚け……後半、一時間半ぐらい寝てました〜。

 補習上等じゃボケ!


「じゃあ今からカレーを作る訳ですが上位五班には高級食材が与えられます!」


 そしてオレたちの班に配られた高級食材がこちら!


 淡路島産のちょっと高い玉ねぎ!


 北海道産のちょっと高いじゃがいも!


 ちょっといい所の高いカレールー!


 お肉屋産で買ったまあまあ高い牛肉!


 ……あれ? 高級食材とは?

 てか選ぶ権利とか言っときながら食材決まってるのかよ。しかーも、一位の俺らの班から五位の班まで同じちょっと高い食材。せめて順位順には何か優遇しろや……。


「まあ……それなりにいい食材って事よね」


「多分……。何か僕ちょっとショックなんだけど」


 俺を含めた一班全員がコレジャナイ感がすごい。他の上位班も似た様な空気だ。

 何とかしなければ!


「……いや、俺はこのカレーを絶対に美味しく作ってやる! テクニックで何とか最高に美味しいカレーライスを完成させてやるぞ!」


「え? 虹夜くん料理するの?」


「まあ趣味程度だけど地味な料理の知識は結構あるはずだよ。自分で言うのもなんだけど……」


「じゃあやり方は咲都に任せて俺らはそれに準じてやる感じでいいか?」


「「「「さんせーい」」」」


 鉄矢がうまくまとめてくれた所で調理開始!




 ※ここからしばらく続くカレーの作り方は虹夜咲都個人のやり方です。他にもっと色々使って美味しく作る方法がいっぱいあるよ〜。




 まず玉ねぎは薄切り、くし切り、みじん切りの三つの切り方に分ける。

 じゃがいもの半分は食べやすい大きさに、もう半分は小さくして


「おい鉄矢、このじゃがいもどうにかして潰しとけ。マッシュポテトみたいに」


「はいよ……てこの生のやつをかよ……」


 そして鍋に油を敷いて肉を表面全体が色づく程度に炒めたら一回皿に上げる。で、上げた肉にみじん切りの玉ねぎを絡ませる感じで置いておく。


「なんでみじん切りの玉ねぎだけ肉に絡めて置いておくの?」


「玉ねぎには肉を柔らかくするプロテアーゼだかなんだかの成分が入ってるんだってさ。だから肉を玉ねぎに漬け込む感じで置いとくんだって。ネットで見た」


「へ〜、そんな効果あるんだ」


 次に薄切りにした玉ねぎを肉を炒めた時の油そのままで飴色に。油が足りなければちょい足し。ここで鍋に残っている肉の旨味を玉ねぎに吸わせる。


「おい誰か、サイドで出て来るゆで卵に使う塩貰って来てくれ」


「はーい、良いけど何に使うの?」


「玉ねぎ炒める時に入れて飴色にするのを早くするんだよ」


「へ〜、そんなこと出来るんだ」


 数分玉ねぎを炒めてるあいだにみんなに食器やテーブルを準備して貰う。

 玉ねぎが飴色になったら水……じゃなくてちょうど鉄矢が持って来てた炭酸水をブチ込む。炭酸水は水より食材を柔らかく煮込めるし何より味を染み込ませやすくなる。


「あ、それ俺の炭酸水じゃねーか! しかもまだ開けてないヤツだろ!」


「当たり前だろ。誰がお前の飲みさしで作ったカレー食いたいんだよ」


「……確かにそうだけどなんかグサっときた」


 なんかへこたれてる鉄矢は置いといてじゃがいも全部と残していた玉ねぎを入れて煮込む。少しふつふつしてきたら肉とみじん切りの玉ねぎを再投入し蓋をして煮込む。

 沸騰してきたら火を少し弱めて食材に火が通っているか確認し大丈夫ならまた少し火を弱めてカレールーを溶かして味見をしてルーは完成!

 完成したカレーをホカホカに炊き上がったご飯にかければ……


「みんな出来たぞ! 山の家究極カレーの完成じゃ!」


「「「「「オォ!!」」」」」


「美味そうだね!」


「サラダとゆで卵も盛り付けてあるよ」




 時は来た……あとは美味しくいただくのみ!


「それじゃあ……」


「「「「「「いただきます!」」」」」」


 最初の一口は他の五人に譲って差し上げよう。


「すわぁ⤴︎さあ皆さん召し上がれ」


 さあお味のほどは……


「「「「「美味しい!!!」」」」」


 俺の時代キターーーー!!!

 みんな一斉に美味しいって言ってくれるなんて作り甲斐があったってものですよ。

 では俺も一口……


「うまっ! 我ながら美味い!」


「咲都の自画自賛はちょいうざいけどこれは認めざるを得ない美味さだな! いい仕事したんじゃねぇか?」


 我ながら味はかなり良い。ちょっと高い良い所のカレールー様々ですわ。

 そして三つの切り方でこだわった玉ねぎ、ホロっとしたじゃがいもに加えあえて潰して入れたじゃがいもでトロミをさらにプラスし田舎カレー風に。

 肉も玉ねぎのお陰かまあまあ高いやつだからなのか柔らかジューシーに!


「玉ねぎさ、トロッとしてるのと食感が残ってるのがあって良いね!」


「じゃがいもも程よくホロってしてるし!」


「お肉も柔らかくてジューシーだよ!」


「ルーも独特のトロみがあって美味しい!」


 フォッフォッフォッ! もっともっと褒めてくれ! 俺の鼻が天狗になるぐらいになっ!


 俺の班は割と早めに出来た。他の班もチラホラ出来てはいるが料理をし慣れていないヤツが集まった班は四苦八苦しているようだ。作っている近くで先に美味しいカレーを食べてやる背徳感……何とも言えませんわ!


 そういや晴香の班はどうなんだろう……あいつ確か料理はするとか言ってた様な。ん? 晴香は華絵ちゃんと同じ班なのか。

 どれどれ……おっ、俺らより少し前に完成してたみたいだな。もう片付け始めてる。 早いなあいつの班……しかーし! 味は俺の方が上だろうな!

 ヤベっ、ガン見し過ぎて晴香と目が合った。うわっ、華絵ちゃん連れてこっち来やがったぞ〜何の用だよ……。


「咲都くんお疲れ様〜!」


「華絵ちゃんも一日お疲れ様〜」


「良い匂いね! 咲都の作ったカレー少し味見させてよ」


 予想はしていたけどやはりそう来たか。ご丁寧にスプーンまで持参してやがる。

てか匂いは似た様なものだろ。


「やっぱそう来たか。もっと可愛くおねだりとか出来ねーのかよ」


「あ、じ、み、させてぇ〜(棒)」


「きm……嘘ですごめんなさい」


 視線で殺しに来やがった……。なんて恐ろしい女だ。


「一口だけな」


 さぁ、食べて俺を褒めろ!


「……お、美味しぃ」


「ん? よく聞こえんな? もっと大きな声で!」


「なにこれ、わたし達のより確実に……ほんと美味しい!」


 フォッフォッフォッ! そうか、美味いか! 勝ったわ!


「咲都く〜ん? 私も一口良いかな?」


 なっ! 晴香は予想していたが華絵ちゃんまでスプーン持参だと⁉︎ ずっと後ろで手を組んでるなと思っていたけどスプーンを隠すためだったのか。

 まあいい、食べて感想を言ってくれ!


「んん〜!! 美味しい!!」


 キター! やっぱり俺の時代キター!


「これ咲都くんが作ったの? すごく美味しいね!」


 いやー嬉しい嬉しい! 久々に色んな人に褒められたぞ。俺料理出来て良かったわ。




「ふぅ〜、食った食った」


「ほんと美味しかったね」


 何回も言うがほんと我ながらいい出来だった。

 みんなからもかなりのお墨付きを貰ったし嬉し恥ずかしい。


「それじゃあ後片付けしますか」


「「「「「「ご馳走様でした!!!」」」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る