二章 14 『ついにやって来ました山の家〜』

 二章 14 『ついにやって来ました山の家〜』




 次の週になり始めの月曜日、学年全員を集めた山の家説明会が体育館にて行われた。


「え〜てなわけでもう仲のいい人が出来た人もいると思いますが更に親睦を深める、というのを念頭に置いて宿泊学習に行きます。必要なものなどは先程配ったプリントに書いてあるので各自目を通しておくように。じゃクラス委員以外各クラスに帰ってよし」


 クラス委員以外ってことは俺は残れってことか……だりぃなぁ。

 ほんとあの連続攻撃さえ無ければこんな目には……くぅぅぅ! 軽く泣きそう。


「じゃ咲都、クラス副委員として頑張れ〜」


 くっそ鉄矢のヤツ俺を煽る天才かよ!


「へえへえ頑張りますよ〜。俺は可哀想なクラスの奴隷ですわ」


「クソワロ」


 なにがクソワロじゃクソボケが!

 ……まあ話聞くぐらいだろうし適当に聞くぐらいの感じでいいか。

 委員が残るので晴香も残ってるな。

 オレに気づいた晴香がなんでいるのよって視線を向けてくる。

 アイコンタクトで委員なんだと返し……晴香は驚愕の表情を浮かべた。……ん? アレは……


「あっ! 虹夜くん〜! 虹夜くんも委員だったんだ! 私五組の副委員なの〜」


 この気持ちいいテンションの高さ荒川さんだ。彼女も委員だったのか。おっと晴香が変なことするなよ視線ビームを送って来てやがる。


「そうなんすか。俺も副委員なんですよ」


「虹夜くんタメ口でいいよー。晴香ちゃんとも幼馴染なんでしょ? 私ともお友達になってよ〜」


 あっ、幼馴染って聞いたんですね。

 逆に友達になって貰っていいんですか⁉︎ やった〜鉄矢に自慢してやろ。


「マジか! じゃこれからタメ口で。よろしく〜」


「マジマジ〜! うん! よろしくね!」


 というわけで荒川さんとお友達に。


「晴香ちゃ〜ん、虹夜くんと友達になったよ〜」


「えっ⁉︎ 咲都と……いつのまにそんな仲良くなってたの……華絵変なこととかされたらすぐに言ってね」


 今のまに仲良くなりました〜……てか変なこととかしねぇよ。最後の一言が余計だわ。


「よーし、残った委員静かにしろ〜。今から山の家での委員の仕事説明するから」


 てなわけで説明を適当に聞き流し説明会を終えた。

 委員長に


「虹夜くんちゃんと聞いてた?」


 って聞かれたけど聞いてましたーって返事した。適当に聞き流してたなんて本当のこと言えないしな。




 で、木曜日。出発の朝になった。

 今日は普通の登校時間より早めの集合になっている。しかも委員はクラスの点呼やら雑用やらでさらに早く登校することに……ただでさえいつもより早起きなのに他のやつより早く集合とかだるっ。


「咲都〜そろそろ行くわよ〜」


 晴香さんのお呼びもかかり玄関から出る。


「眠た〜、おまたおまた。そんじゃ行きますか」


「そのおまたって略し方……なんか卑猥な響きじゃない?」


 ほうほう、聞き捨てならんなそのセリフ。


「はぁ〜ん? なぁ〜にがどぅ卑猥なんですか? おまたで何を想像してるんですかねぇ? ほれ、その上のお口で言ってみなさ〜グェッ!」


 クリティカルみぞおちヒット! ……割と強めの腹パンされました。


「おぉふぅ……朝飯出るかもしれねぇじゃん……せめて肩パンとかにして下さいまし」


「黙れクソ変態咲都。この私に朝から何言わせる気よ。だいたい口は上にしかありません〜バカなんですか〜? あるなら説明してみなさい……てか肩パンならいいのね」


 いやいや、朝からお待たせの略しかただけで何想像してるんだよって言ってやりてぇ。

 まあ確かに上にしか口はないけどさぁ、そういうことじゃないじゃん?


「いや、説明したらもう一発殴られそうなのでやめときます」


「……? だから下に口なんてないから。バーカ」


 くそぅバカバカ言いおって晴香め! 説明して超絶赤面させてやろうか! でも殴られるのはやはり痛いし勘弁なので諦めるか……。


「お、おはようお二人さん。今日はえらい荷物が多いね。一年で修学旅行なの?」


 また朝からいました美人ニート瞳姉。ほんとこんな時間から何してんだろこの人……。

 スーツビシッと決めてる割には仕事が未だに不明なんだよな。


「「おはよう瞳姉」」


「今日から土曜日まで山の家で宿泊学習なの」


「あ〜あれね。それでその荷物の量なのね。……で咲都は何でそんな目で私を見てるの?」


「……いやー朝からこんなとこで何してんのかなーって思いましてね」


「仕事よ仕事! 警備みたいな事してるの」


「ご自宅のですかい?」


「違うわよ! 自宅警備員とかニートじゃない。まさかまた私のことニートとか思ってたんじゃないでしょうね?」


「まさかも何も何年も警備的な事が仕事って言われましてもねぇ……いつ何時でもこの辺りうろちょろしてるだけじゃないですか」


「うわ〜私酷い言われ様……まぁでもアーウェルサと関係しちゃった咲都にもそのうちちゃんと説明してあげるから」


 絶対ニートだと思ってたけどアーウェルサ関係の仕事だったのか。確かにそれなら今までの俺には言えないわな。

 納得納得……? でも仕事にしちゃこのあたりによくいるような。


「じゃ瞳姉、私たち委員の仕事でクラスの点呼とかもあるから行くわね。行ってきます」


「あ、ごめんごめん。引き止めちゃったね。行ってらしゃ……って私たち? えっ⁉︎ 咲都も委員なのぉ〜⁉︎」


 遠ざかる瞳姉のビックリ反応を後ろ耳で聞きつついつもの道を歩いて行く。

 やっぱ俺が委員って意外だよなー。自分でも未だに悔やんでも悔やみきれん……美山ちゃん恐るべし。我ながら未練タラタラ。


 掃除のおじさんとも挨拶を終え他の皆より少し早く学校へつく。


「晴香ちゃん、虹夜くんおはよ〜! 今日から二泊三日、楽しみだね!」


 荒川さんは俺たちより早く来ていたようだ。このクソ朝早いのにいつもどおりテンション高いのはすげぇな。


「おはよう華絵」


「おはよう華絵ちゃん。朝からテンションすげぇな」


「うん! 元気が私の取り柄みたいなものだからね。眠たいけど元気元気!」


 なるほど。元気が取り柄ね〜それでいつもテンション高いのか。彼女の良いところの一つだろうな。


「……てか咲都、今何気に荒川さんじゃなくて華絵ちゃんって呼ばなかった?」


 ……あっ、言われてみれば。晴香の前の華絵ちゃん呼びがうつったのか?


「いいよー華絵ちゃんって呼んでくれて! 私も咲都くんって呼ぶね!」


「華絵がいいならいいけど私の華絵に手は出させないわよ」


「いや、いつから晴香の華絵ちゃんになったんだよ」


 高校に入って初めて出来た女子の友達。しかも晴香にとっても大事な友達だ。この縁、大切にしなくては。




 校門の前のにはすでに山の家に行くための大型バスが五台止まっていた。

 一年は一クラス三十五人。一台で一クラス計算か。

 こちらもすでに来ていた我らがクラス委員長の嵯峨野さん。そしてもう一人の副委員、中谷さんと合流しワラワラと揃いだしたクラスの点呼やバスの席の確認をして行く。


 委員長は他のクラスの委員長と何やら打ち合わせ的な何か。

 もう一人の副委員、中谷さんは美山ちゃんに頼まれ何やら雑用をしていた。

 俺はというとバス内の点呼を任されていた。


「虹夜くん皆揃った?」


「ええ揃いましたぜ委員長。後は委員長と中谷さん、美山ちゃんに元さんが席に着けばいつでも山の家に奇襲をかけられますぜ」


「何でボスに対する雑魚キャラの言葉遣いみたいになってるのよ。揃ったなら虹夜くんももう座ってて。美山先生に言ってくるから」


 おお、俺が言いに行く手間を省いてくれるなんて……委員長は頼りになるぜ。

 それより奇襲へのツッコミ、忘れてますぜ委員長……ってめちゃ言いたい。


「よぉ咲都、委員の仕事頑張ってるな」


「おはよう咲都くん。委員お疲れ様」


 鉄矢と宇多くんか。そういやバスの席も名簿じゃなく班で座るから鉄矢も宇多くんも近いのか。しかも隣鉄矢かよ。


「おはよう宇多くん。お疲れ様なんて優しいね〜。それに比べて鉄矢は……はぁ」


「何だよ、俺に優しくして欲しいのかお前?」


「いや、いいわ。気持ち悪いし遠慮しとく」


「しばくぞおい」


「二人ともほんと仲いいね」


 今のやり取りで宇多くんには仲良く見えたのか?

 まあ鉄矢とはマジで腐れ縁だしな。親によると公園デビューとやらから一緒だったらしい。家もそう遠くはないしな。




 してしてバスは出発し美山ちゃんバスガイドによる山の家までの道のりが始まった。


「おはようございます皆さん。学校から約一時間ぐらいで山の家に着きますがその道中も楽しんで行きましょう! 皆、ノってるかい⁉︎」


「「「「「イェェェーイ!!!」」」」」


 皆一応反応はしたが特に数人の男子がすげぇテンションで反応してやがる。多分美山ちゃん推しの奴らだろうな。

 確かに美山ちゃんは美人だしなぁ。

 俺が美山ちゃんから連続攻撃された事は黙っておかないと今反応した奴らに殺されそうだな……。あーこわ。

 てか一番楽しみなの多分美山ちゃんなんだろうな〜テンション高ぇよ。




 約一時間、テンションの高い美山ちゃんのバスガイドは続きなんだかんだで山の家に着いた。

 あのテンションで一時間、恐るべし。


「さ〜みんな、到着しました! 降りた人から荷物を貰って玄関前に集合ね〜」


「あ〜着いたなー山の家。山の家はいつ来ても山の家だな〜。自然がいっぱい山の家」


「なんだそのバカみたいな感想。咲都のバカがみんなにバレるぞ」


「うるせぇよクソ鉄。浸ってる時ぐらい突っ込んでくるなよ。てか感想なんか個人の自由だろ? なぁ〜宇多くん?」


「……まぁそうだね。いいんじゃないかな個性があって」


「ほらみろ」


「優しい宇多くんのお世辞に決まってるだろ。てかクソ鉄って呼ぶなよ」


 なんて会話をしながら山の家玄関前へ。

 さて、到着の点呼でもしてやりますか。

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