二章 12 『友達とテスト返却ぅ! まあ知ってた』

 二章 12 『友達とテスト返却ぅ! まあ知ってた』




 ーー今日の一時間目が始まる数分の間に委員長、福委員長との挨拶を済ませて鉄矢と話になる。


「なあ咲都、来週末にある親睦深めようちょっと旅行みたいなのあるだろ。お前委員になったんだから何かやらなきゃならないんじゃないか?」


「あぁ、何かまた山の家だっけ、に学年全員で行くやつだろ。まだ何も言われてないし大丈夫じゃね?」


「絶対何かやらされるわお前。担任美山先生でお前以外の委員女だろ? オレはお前がどうなるか楽しみでならないわ」


 言われてみれば四分の三女性か。副担任の元さんは委員会とかは何もしなさそうだしな……。

 まあ今はポジティブに綺麗と可愛いに挟まれたハーレムになると思っておこう。自己暗示自己暗示。フラグは立ててない……。


 鉄矢との雑談の後チャイムが鳴り一時間目が始まる。


「じゃあ一時間目の授業始める。テスト返すぞ」


 一時間目は理科の返却だっけか。オレに関係ないな。遅刻してたし。


「よし、全員返し終わったな。じゃあ今から答え順番に言っていくから全部終わったら点数の付け間違え、分からないところ言い来いよ」


「先生、オレ何しといたらいいですか?」


「ん? そういや虹夜は遅刻で受けれなかったんだな……誰かに問題用紙見せてもらって答えの確認でもしとけ」


「へーい」


 てな訳で隣の宇多くんに見せてもらうことに。あんまり喋ったことないが見せてくれるらしいので感謝感謝。


「すまんね宇多くん。ありがとなす」


「う、うん。虹夜くんっていつも鋼くんと喋ってるけどノリというかなんというか……楽しそうだよね。ありがとなすって笑っちゃいそうになったよ」


「そうかな? まあ褒められてるんだと思うし……ありがとなす〜」


「ふっ……じゃ、答え合わせ聞いとこうか」


「おう」


 ……いいやつだな宇多くん。

 問題用紙見せてくれるしこんなしょうもない挨拶で笑ってくれるし。仲良くしてもらおう。


「……まあ大体分かるな理科は。一応得意な方だし。宇多くんはどうなんだ?」


「理科は満点だったよ」


 はっ⁉︎ 満点だと……この世でテスト満点とるやつなんて実在しないと思ってた。宇多は頭良いんだな……ますます仲良くしてもらわねば。

 何かきっかけを……ん?


「なあ宇多くん、その筆箱につけてるストラップってさ……もしかして『神の実芭蕉』のストラップか?」


「うんそうだけど……もしかして虹夜くんも観てるの?」


「おう、観てる観てる! あれめっちゃ面白いよな!」


「うんうん。あれは今期アニメで一番面白いよね! 特に七話であの展開は予想出来ないよね」


「そうだよな! 特にあのバナナの使い方は……」


「「マジで卑怯!!」」


 思わずアニメで使われていたセリフを言うのに声が揃ってしまった。


「おーい宇多と虹夜、ちょっとうるさいぞ。もうちょいで答え合わせは終わるからそれまで我慢しろ。答え合わせ終わった自由時間みたいなもんだからそこで喋りなさい」


「「……はーい」」


 さすがに注意されてしまった。

 まあ確かに声がちょっと大きくかったか……鉄矢が興味深々な目線をこっちに送ってきてやがる。多分話が若干聞こえてたんだろうな。案ずるな鉄矢、宇多くんとは絶対友達になるからな!

 てなわけで答え合わせ終了までおとなしくしておくことにした。


「ーーよし、こんなものか。答え合わせは終わったから点数間違いとか分からんとこあるやつ聞きに来い。今日はもう授業はしないから何もないやつは好きにしてていいぞ。携帯いじるのは禁止だぞ」


 ーーよっしゃ、やっと喋れる。

 鉄矢もこっちに来て喋る気満々のようだ。


「咲都さっき宇多くんと面白そうな話ししてたな。オレも混ぜてくれよ〜」


「別にいいけどさ……」


「鋼くんだよね? よろしく」


「よろしくな宇多くん。で神の実芭蕉の話ししてたんだろ?」


「そうそう! でさぁ……」


 てなわけでオレ、鉄矢、宇多くん三人の話しは一時間目が終わるまで続いた。


「いやぁ咲都も宇多くんも中々いいところに目をつけるよな」


「ほんとだよ。テスト受けなかったおかげで宇多くんと仲良くなれたし遅刻して良かったわ〜」


「いやいや、遅刻はダメでしょ」


「そうだよ咲都。遅刻を正当化するな」


 そんなこんなで一時間目が終わり宇多くんとも連絡先の交換はした。

 宇陀くんはいつも静かに一人で本を読んでいたからあまり喋ったことはなかった。

 まさか隣の席に同じ趣味を持つ人間がいまなんて。まさに灯台下暗しだ。

 この一ヶ月なんだかんだで鉄矢とばっかり喋ってたしクラスで新しい友達が出来たのはいいことだ。ほんと寝坊したオレに感謝だな。


「じゃあ今度オレの家来いよ。鉄矢と三人でもっと話しようぜ」


「うん。いつでも気軽に誘ってね」


 暇なら委員変わってくれ〜と思ったのはここだけの話。絶対オレより宇多くんの方が向いてるだろ。頭良いし。




 ーーで時間は進み六時間目になった。

 この時間はなんか初めてのテストについての反省作文を書いて提出するらしい。

 テストの結果ですか? 聞いて驚け、数学九十六点! ……それ以外は見事に惨敗。

もう晴香に怒られるのは嫌だ〜という思いを作文にぶつけてやった。

 鉄矢は案の定笑ってやがったし宇多くんにも優しい言葉をかけられた。


 で六時間目も終わり晴香と家に帰る。


「てな感じでさオレと鉄矢にも新しい友達ができたわけですわ。寝坊に感謝ってなわけ」


「いや、なんで寝坊を正当化してるのよ。それよりテストどうだったの?」


 来たかこの質問……何とか怒られない方向に話を持って行かねば。


「数学さ何点だったと思うよ?」


「……さすがに高校だからね、八十位じゃない?」


 ふっ、オレを舐めてますね晴香さん? 聞いて驚け!


「九十六点ですよ」


「九十六⁉︎ 私でも八十二だったのに……ほんと数学はさすがね」


 まあね。数学は任しといてくださいよ。てか晴香も地味に点数高いな。


「で、他は?」


「……まあ、それなりかな〜」


「なるほどね。あとでテスト用紙持って部屋に来なさい」


 クソッ、やはりダメだったか。

 てか最初から察してたんだろうな。だってなるほどねで済ますんですもん。


 行かないとさらにキレられるので大人しく晴香の家に行く。


 ピーンポーン……


「はい?」


「隣の天才です」


「咲ちゃんね。開けてあるわよ」


 重い足取りで階段を登り晴香の部屋行く。


「来たわね咲都。じゃあ数学以外の問題用紙机に広げなさい」


「……怒らないでね?」


「それは点数次第よ。あれだけ勉強しろって言ってしてないんだからそれなりに点数取れる自信があったってわけでしょ? それで悪かったら……ね?」


 はぁ、終わった。確実に怒られルート突入ですよ。

 オレは観念してテスト用紙を机の上に広げる。


 社会、四十六点。

 国語、五十八点……まあまあ。

 英語、三十三点……乙!


「……あんたねぇ!!」


「ひぃぃすんません晴香様! 足の裏でも甲でも舐めますんで許して下さい」


「舐めなくていいわよ変態! てか舐められてもむしろキレるわ。よくこんな点数取れるわねぇ!」


「まあ赤点は回避したから大丈夫だろ」


「何が大丈夫なのよ……ただでさえ理科受けれてないんだから他で点数稼いどかないと、っていう考えはなかったわけ?」


 て言われましてもねぇ……遅刻した時点で社会と国語は勉強も出来ないしどうにもならないだろ。英語に関しては知らん。アレはリスニングが完全に罠だったからな。


「じゃあ分かってるわよね?」


「へいへい。大人しく晴香さんに従いますよ」


 中学の時からテストの点数が悪いと晴香の部屋でみっちりテストの復習をさせられる。

 あ〜めんどくせぇなぁ。しかし晴香も分からない所はちゃんと教えてくれるしなんだかんだでいい奴だ。


「てかさ英語のリスニング変に聞こえなかったか?」


「……いや分からないけど、どんな風に聞こえたの?」


「アホみたい、とかチャック開いてるよ、とか……巨乳好き? とかさ」


「バカじゃないのあんた」


 え〜聞こえただろ。何で晴香も鉄矢も宇多くんも分からないんだろう……。アレのせいで英語ダメダメだったのに。




 ーー午後六時半まで勉強をして家に帰る。あ〜勉強は疲れるなぁ。

 今日は勉強で疲れたし癒されながら寝るか。

 最近の動画サイトにはお姉さんが声で寝かしつけてくれる癒し動画なんてものが投稿されている。それが寝る時に一番ワクワク出来る。しかもいい夢見れる確率が上がる気がする。


「あぁお姉さんの声最高ですわぁ……」


 ……こうしてテスト返却の一日が終わる。

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