二章 10 『異変について』

 二章 10 『異変について』




 風呂を出て再び晴香の家に上がり今度は晴香の部屋へ。


「やっと来たわね変態咲都。私のシャツを透けさたお礼はいつかしてやるからね」


「そんな怒るなよワザとやったわけじゃないんだし。まあ恥じらってた晴香も可愛いかったしだから見てたんだけどなぁ」


「くっ……そんな言い訳で逃げられると思わないでね。いつかほんと覚えなさい」


 晴香はちょっとチョロいところがある。何かしらの形で褒める、例えば可愛いとか綺麗だったとか言っとけばその場はしのげる。

 これも長年の付き合いで分かった事だ。たまに忘れた頃にお咎めがくるときもあるにはあるが。


「で瞳姉、話ってなんなんだよ。オレはまだアニメを見る事を諦めてはないんだぞ」


「あぁそういやそれで戻って来てって言ったんだっけ。晴香にもまだ話してない事だし二人とも聞いておいてね」


 めんどくさい話じゃないといいなぁ……ってどうせ期待は外れるんだろうけど。


「これは晴香も知ってることだと思うけど実は最近色んなところで空間が展開されてるの。簡単に言うとアーウェルサから頻繁にこっちの世界に来てるヤツらがいるって事なんだけど……」


「確かにそうね。最近空間よく出来てるわね」


「てかさ今思ったんだけど空間って時間停止してるんだろ? だったらオレらからかなり遠いところでバケモノが来ても周りの、オレら以外の時間は停止するのか?」


「そうよ。空間はどこで向こうのヤツらが現れてもコッチの世界中が停止、空間の中に入るわ。空間が無くなるにはいくつか方法があるの。例えば対象の殲滅、退却、そしてコッチの世界に適応するのが主な方法ね。前二つは良し。最後のは最悪の事態よ。高確率で対象の周りにいる人間は捕食されるわ」


「その前に私達みたいな空間に入れる人間が殲滅もしくは撃退するの」


 ほうほうなるへそ。

 なんとなくしかわからんが遠くで向こうのヤツが現れてもオレの周りの時間も止まると。


 ……やっぱりパンツ見れるじゃん! 見放題のおまけ付きじゃん!


 というかオレ達以外にも向こうの世界との混血の人間は存在してるのか。


「で、今までその最悪の事態になった事ってあるのか?」


「何回か例はあるわね。殲滅も撃退も出来ずに適応されて空間が消滅。そして一般人が捕食される。タチの悪いことに私達みたいな混血じゃない限りヤツらは見えない。いきなり捕食されて終わり。しかも捕食された人間は私達混血以外の記憶から抹消される」


 ……マジかよ。

 空間を突破、コッチの世界に適応されればなかなかえげつない事になるんだな。

 オレら混血って結構重要な存在なんだな。ってかオレもその混血の中の一人なんだもんな。


「でも空間突破は滅多に無いのは確かね。アーウェルサのヤツらは魔力、魔法を使ってこっちに来るわけで雑魚がそう簡単に来れるわけでもないし来れても殲滅されるのが大体のオチね。昨日の低級の鬼みたいに」


「本来ならそうなのよ。晴香はわかってると思うけどシリウス……この前の人狼ね。あのレベルが単体で来るのはありえるの。でも弱いヤツらがコッチに来るには団体で魔法展開してっていうのが唯一の方法だった」


「だった?」


「そう、だったの。ここからは晴香も知らないと思うけど最近は何故か単体でコッチに来る雑魚がほとんどなの。ここ数ヶ月世界中でそういう報告が上がってるわ」


 雑魚が世界中で原因不明の単体発生をしてるのか。でも瞳姉はそれが何で問題みたいな話し方をしてるんだ? 雑魚なら特に問題ないんじゃないのかと思うのはオレだけなのか……。


「で私が言いたいのは、というか世界中にいる私達の仲間の考えをある程度まとめると……雑魚をコッチの世界に単体で無理矢理送りこんでる大元がいる可能性がある」


「なるほどね……確かに気にはなるわね」


「そう。まだ確実に決まったわけじゃない可能性の段階だけどそうとしか思えない事態が現に起こっている。けどそうだとしてもその目的がわからない。それを皆が危惧してるってわけ」


 そうか、この事態の理由が分からないのが問題なわけか。確かにアホなオレでもおかしいとは思える話しだった。

 普通ならあり得ないことが起こっている。これはなにかあると思うのが普通だろう。


「でそれに対してオレらはどうしたらいいんだ?」


「いや、まだ可能性の段階だしどうしろってことはないんだけど昨日みたいな事が起こりやすくなってるって事を伝えておきたくて」


 確かにそれはアホのオレでも分かる問題だ。

 オレの趣味お楽しみ時間に空間発生からの時間停止なんてされたらたまったものじゃない。しかもそれが昨日みたいに襲われる、なんてことになったら最悪だ。


「じゃあ咲都にも早く魔法を覚えて実戦で使えるようになってもらわないといけないわね」


 まあそれについては任せておいてくださいよ。魔法は出来るのも早かったしすぐにでも使いこなしてみせるさ。

 自分でも色々練習してみて晴香と瞳姉を驚かせてやろう。




「と、私からの話しはこれで終わりね。なにか聞いておきたい事とかあった?」


 今の話については特にはなかったな。

 まあ確かにおかしい事が起こってるってのは分かったから気をつけなきゃだな。

 もしもの時のためにほんと魔法は練習しておこう。


「今の話しとは関係ないんだけど晴香と瞳姉に聞きたい事があるんだけど」


「なに?」


「二人の得意な属性とかどんな魔法使えるのかなぁ〜って思ってさ」


「あぁ、そういや私達の魔法のことは何も言ってなかったわね。私は光が得意系統ね。使える魔法は色々あるけど一番使うのは咲都も見たと思うけど銃から魔法で作った弾を装填、発射ってのが私の基本的に使う攻撃魔法かな。あと治癒も得意な方ね」


 昨日使ってたアレか。

 そういえば銃を二手に持って光線弾を撃ってたな。あれはかなりカッコよかった。ああいう魔法の使い方も出来るのか。

 でもオレがやったらぱっと見プールで使うこと水鉄砲みたいだな。


「なるほどね。瞳姉は?」


「私は爆、まあ爆破かな? が得意系統って言われたわね。でも基本的にどんな属性でも使えるわよ。ていうかそのうち咲都もある程度色々な属性使えるようにならないとね。複合魔法とかもあるし」


 別に水が得意だからといって水に特化する必要もないわけか。

 現に晴香は光だけじゃなく水も使って見せてくれたわけだしな。


「てか瞳姉、ほとんどの属性使えるならなんで私に咲都の見本やらせたの?」


「え? いや、咲都も晴香に教えてもらった方が嬉しいかなって思ったり……得意じゃないのは本当だし…….」


 よく分からないがそうなのか……てかこの返事の仕方はやるのがめんどくさかっただけだな。


「でもまずは自分の得意な属性を伸ばすのが最優先よ咲都。得意な魔法が一番安定して使えるしまだまだ先の話しだと思うけど複合魔法とかは自分の得意系統に寄り添って成り立つからね」


 ほぉ、やはり大事なのは得意系統になってくるのか。

 オレにとってそれは水。頑張らないとな。




 ーーてな感じで話しは終わりお開きに。

 瞳姉は晴香に料理を教えるとかなんとかでそのままいるらしい。

 二人きりになるから心配だな。何がかって? 瞳姉の百合が発動しないかだよ。晴香相手だし大丈夫、とは言い切れないんだなこれが。瞳姉ならやりかねない……ここは大丈夫と思うしかないか。


「じゃあ咲都、魔法の練習しときなさいよ。撃つのは外じゃないと出来ないけど手の平の上で留めるのは水なんだしお風呂でも出来るわよ」


 ほんとなんで雨に濡れてやらなきゃならなかったのか分からんな。




 ーー帰宅し時刻は午後六時半になった。晩ごはんを食べ終えゆっくり一息。もう一日のほとんどが終わったのか。本当に休みの日は時間が過ぎるのが早すぎる。


 明日の学校はテスト返却か……ダル。

 アニメを見て貴重な休日の一日は終わる。

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