二章 9 『休みの日こそはゆっくり……させてぇ!』

 二章 9 『休みの日こそはゆっくり……させてぇ!』




 ーーおぉおぉ、いくら美人なお姉さんに勧められてももう食えないですよ……




 っと、鳴り続ける音で目を覚ます。雨が窓の外でザーザーと音を立てて地面に降り注いでいた。かなりきつい雨だな。

 時刻は九時手前。結構寝たな。

 しかしアニメやラノベでよくあるベタな夢だったな。食い過ぎて気持ち悪くなる夢はさすがにベタすぎるだろ。夢と気づけていればいい感じの満腹感で止めておいて寝起きをよくできたのに……。

 まあ美人なお姉さんがいただけ良しとさるか。


 今日は待ちに待った日曜日。

 何故待ちに待ったかって? 昨日までテストで午前中までとはいえ学校があったし午後からはバイトだったからだ。しかも土曜日だったのに。

 今日はもちろん学校は休み。バイトも入れていないし折角の休みだ。ゆっくりゴロゴロするに限る。雨も降ってるしね。


「さ〜てなんのアニメを観ますかねぇ……いや、午前中はFPSでもしてオンラインのキャラのレベルを上げるか」


 と、いうことでゲームをすることにした。

 オレがやってるゲームとは銃で的や人を撃つシューティングゲームだ。

 最近ハマっているのはそれをオンライン上で他のプレイヤーと撃ち合い倒し倒されをして他プレイヤーとスコアを競う、というルールのゲームだ。

 ……くそっ、弾が全然当たらん! なんでだ……回線か! 雨だから回線が悪いのか? いや、そんなことを理由にして敗者になるわけには……。


 ーーよっしゃあ一位だ! ふふーん。オレにかかればこんなものよ……そろそろレベルも上がったし今日はこの辺で終わるか。

 時計の針は十二時手前を指している。丁度いい時間か。昼ごはんにしよう。


 昼ごはんは昨日の残り物なのであろうカレーライスだ。

 母さんが作る料理もそれなりに美味しい。このカレーライスももちろん美味しかった。

 カレーライスは一日置くのが美味いってよく聞くけど本当なのかな?


 食べ終えた皿を洗い部屋に戻る。昼からはアニメの続きを観てアニメの世界に浸ろうかな〜


 ♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜


 携帯電話が光り着メロが通知をオレに知らせる。

 ……嫌な予感がプンプンしやがる。

 また晴香からの電話か……見なかったことにしてアニメを観よう。

 さ〜てなにの続きを……


 ♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜


 はいはいわかりましたよ。出ればいいんだろ……


「もしもし? 晴香さんですか? わたくし、いい天気だからアニメ観たいんですけど」


「これのどこがいい天気なのよ。でも昨日の今日でこの天気は好都合だわ。咲都、どうせ暇なんでしょ」


「いや、だからアニメを……」


「咲都は昨日魔法系統が水に特化してるって言われたでしょ? だから雨は少し好都合なのよ。魔法の練習するわよ」


 理屈はよく分からんが水特化だから雨でも魔法練習に都合いいわけですか? ……アニメ観たいんですけどぉ。


「……分かったよ。で、どうしたらいいんだ?」


「今日咲都の家って誰か居る? もし居ないならそっち行くけど、居るなら私の家来てくれていいわよ。誰も居ないし」


「全員居るしそっち行くわ。てか家族いたら何かまずいのか?」


「単純に魔法を見られたらまずいわよね。じゃあドア開けとくから」


 あぁ、そらそうか。

 てなわけで晴香の家へ。


 ガチャッ


 晴香の家の玄関を開けてすぐその人はいた。


「おはよう咲都」


 ……またオレより先に瞳姉がいた。


「なんで話終わってすぐに来たのにもう居るんだよ」


「いやいや、晴香が電話する前からここにいたの。晴香と雨だから咲都の魔法練習しようかって話になりましてね」


 相変わらず暇なのか瞳姉は。今日は日曜日だが本当になんの仕事をしているのか、もはや仕事に就いているのか少し気になってきた。


「じゃあ練習するから庭に行こうか」


 あぁ、魔法の練習は外なんですね。雨だから好都合と晴香から聞いた時になんとなく考えてはいたが。

 晴香の家の庭はガーデンルーフがついており雨に当たらない場所がある。そこに晴香がいた。


「あっ、おはよう咲都。じゃあさっそく練習してみようか。瞳姉もお願いね」


 オレ、晴香、瞳姉と庭に出て魔法の練習に取り掛かる……って何をしたらいいんだオレは。


「じゃあ咲都、屋根の外に出て雨に当たって水を感じてみて」


 ……屋根の外に、か。水の魔法の練習だし濡れるかもと思ってその予想に合わせた格好で来て正解だった。はぁ、濡れたくねぇな。

 なんて思っていても始まらない。言われた通りにするか。

 とりあえず雨に当たる。水を感じてみてなんて言われてもな……。


「あんたは私が腕治した時に私の魔力を体内に注いでる事になるから魔法は使えると思うんだけどなにか感じない?」


「う〜ん……なんか感じるような冷たいだけのような」


 実のところ本当によくわからない。ただ雨に当たっているだけな気がするし……これって風呂でシャワー浴びてるのと何が違うんだ?


「じゃあ腕から何か出せそうな感じしない?」


 腕ねぇ……言われた通り腕に意識を集中させその出せそうな感じとやらを探ってみる。

 腕に力を入れ手の平から何か出すって感じで……


 ジョバッ!


 ……え? なんかコップの中の水をぶっかけたぐらいの量の水が手の平から出た。

 おぉ……ちょっとした感動。でもなんかショボくね?


「おお、やるねぇ咲都。結構早く出来たね。あとは威力とか使い方のコントロールかな」


 やっぱり出来ていたっぽい。威力のコントロールと使い方か……実用性あるのか今の段階では不安なんだが。


「てかさ晴香と瞳姉は水魔法使えないのか? どんな感じでやるのか簡単なのでいいから見てみたいんだけど」


「晴香も私も使えるわよ。けど私水ってあんまり得意な魔法じゃないから晴香よろしく」


「うぅ……私も水ってあんまり得意じゃないんだけどな……。じゃあまず出すのは出来たから手元に留めるのを……」


 晴香が水を手の平から作り出しピンポン球ぐらいの球体状にして浮かせている。ほお、あんなことも出来るのか。


「こんな感じかなぁっと、やっぱり得意な系統じゃないし難しいわね。で、次はコレを留めながら圧縮していくイメージで……」


 小さな水の玉の周りに水色の光が舞い始める。より見た目がオレの求めてる魔法っぽくなってきたな。


「で、それを前方に一気に解き放つイメージで……今は危ないから地面に向けてやるけど見ててね」


 そう晴香が言うと水色の光が玉に集中し瞬間、手の平から解き放たれる。シュッという音とともに水の玉が地面に食い込む。

 水の玉が地面をえぐり指の大きさ程の穴を開けている。ぱっと見だがかなりな威力だぞあれ。

 まさに玉が弾になったような感じだった。


「っと、こんな風にやるのが使い方としては一般的かな。あとは咲都の使い方や魔力の容量によってサイズを変えたり線状に水をできたりとかかな。まあなによりまず基礎の練習ね。最初は少なくてもいいから水を手の平に留めるとこから始めたら?」


 なるほどねぇ。地道に練習してやっていく感じですか。これは多分オレの得意なパターンのやつだ。

 こう見えて地味な作業とかが結構好き。そんで今回はその対象が魔法ときたもんだ。やり甲斐があるってもんですわ!

 さっそくやってみますか。


「え〜手の平で水を留めるイメージで、さらにこれを圧縮する感じで……」


 おっ、晴香がさっきやったみたいに光ってきたぞ。これを地面に向けて放てばいいのか?


「まあ私もある程度形になるまで何ヶ月かかかったし地道に練習していけばそのうち……」


 シュッ!


「「えっ?」」


 オレの手の平で見事球状に留められた水は狙い通り地面に向かって発射され先程晴香がやったのと同様に地面をえぐり食い込む。


「あれ? 出来たんですけどこんな感じであってんの?」


「おー! やるねぇ咲都。今教えてもらったばかりでこんなに早く出来るなんて魔法に関しての才能とかあるんじゃない?」


「なんか悔しいけど確かにこんな早く出来るなんて素直に凄いわね……これが勉強でも同じだったら……」


 キタァァァ!!!

 これオレ魔法得意なやつですわぁぁぁ!

 勉強は知らんけど!


 自分で言うのもなんだがやっぱオレってやれば出来るんじゃね? 今教えられて今出来るなんて正直思ってもいなかった。


 じゃあちょっと量を増やしてみるか。まあ天才のオレには余裕だろうけど一応順々にやっていくのがいいだろう。一応ね。


「よっと……おぉ量増やすと安定させるのが難しいな〜」


 大体バスケットボールぐらいの大きさで留めてみている。大きくすると安定させて留めるのがなかなか難しい。

 これはやはり地道な練習は欠かせないな。集中も必要だし想像以上に疲れる。


「……ほんと咲都のくせにやるわね。安定させるに最初は集中するのよ」


 咲都のくせに、は余計だよ晴香さん。


「おう……確かに集中しなきゃいけないなコレ。こいつを圧縮するイメージで……」


 そう返事をしつつ留めていると目の前の水玉のさらに向こう、晴香の胸が目に入ってしまった。

 Tシャツ一枚で無駄に膨れて強調されてやがる。ーーっとそう思った次の瞬間、


 バシャッ!


 留めていた水の玉が弾けて宙に飛び散ってしまった。

 不覚。まさか晴香の胸をチラ見しただけで水玉が弾けるなんて……。

 水を一気に被ってしまった。まあ雨で濡れてたしあまり関係ないが……問題は、


「ちょっと冷た! 私にもかかったじゃない……だから集中しなさいって言ったのに」


 晴香にも水がかかってしまった。何故か晴香のとなりにいた瞳姉は濡れていないが。

 しかし諸君、問題はそこではない。弾けた水によって晴香が濡れている。晴香の着ている白のTシャツはビチョビチョ。

 もう皆気づいただろう……晴香が透けブラしてやがる! ナイスラッキースケベ!


 まさか水魔法にこんな使い方があるなんて……たまたまとはいえ素晴らしい事に気づいてしまった。


「……? なによジッと見て……」


「いやぁ、べ、別にぃー」


 しまった凝視しすぎたか。ここは気づかれないように目を逸らしもう少しラッキースケベを堪能しようではないか。


「晴香……あのね、咲都の水のせいでTシャツが透けてるの気づいてないの?」


「え? ……はっ⁉︎ ……咲都あんたねぇ! 着替えてくるから後で覚えてなさいよ……」


 くそっ! 瞳姉めいらない事を……百合のくせにもっとおがもうと思わなかったのかよ。


「あっ、もしかして余計な事しちゃった? でも女の子にあの状態で居させるのは私には出来ないね〜。まあもっと見たかったけどいざとなれば私の場合同性の特権使って堂々と見ればいい話だし……テヘッ☆」


 ……やっぱり見てはいやがったのかこの百合姉は。

 テヘッ☆ っとか言いやがって、オレには同性の特権なんて無いんだよ!


「てか咲都も一回帰ってお風呂でも入ってくれば? さすがに温まらないと風邪引くわよ」




 ーーって事で一旦帰宅し風呂へ。


 瞳姉に話がまだあるからまた戻って来てと言われたのでさっさとシャワー浴びて着替える。

 ……さっきの練習、雨に当たってたけどマジでシャワー浴びてるのと何が違ったんだ!

 という小さな疑問が残った。

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