第3話
「海翔、私の事…」
「え?」
「す、す、好きなの?」
「はぁ!?」
何なんだよ、この展開は! 俺はラブコメの主人公じゃねぇぞ!(←いや、あなた主人公です by 作者)
「まぁ、落ち着けって」
「そんな事言われて落ち着いていられると思う?」
俺だったら。
「無理だな」
それで、問題なのが…
「由香里、そんなの誰から聞いたんだ?」
「ん」
由香里は喋るのも恥ずかしいかのように軽い返事だけして、本田を指差す。
「お前!」
本田はいかにもドSな感じの表情で、
「だって、お互いに愛しあってるなぁ、って思ったから、少しでも手伝いできたらなぁ、って。」
「お節介!」
ったく、朝からもう。
「由香里、違うからな!」
「ふ、ふーん」
1度赤くなった顔はすぐには冷めてくれないらしく、しばらく由香里の顔は赤いままだった。その顔が少し可愛いなと思ってしまったのは、言わないことにしておく。
喋りながら歩いていると、すぐ学校についてしまった。
しかし、昨日と同じように誰もいない。
しかし、その疑問は時計を見てすぐに解決した。
まだ9時15分だったのだ。今日は10時半に学校につくように言われていたから、誰もいないのも無理はない。
「はやすぎたな」
「そうらしいね」
由香里は顔が赤いまま返事ができないので、代わりに本田が答える。
由香里よ。そなたの顔が赤いとワシまで恥ずかしくなるから、はやくいつもの顔に戻っておくれ。
「本田、はやくクラス分け見てこいよ」
「はーい、っていうか、ゆかりんたちは見に行かないの?」
「もう知ってるからいい」
「? ふーん」
そして本田は昇降口に走って行った。
でも、そこで俺はとんでもないことに気づいた。
──由香里と二人きりかよ!
いつもなら平気というよりもむしろ楽しい気分になるくらいだが、さっきのような事があったから気まずい。
「あ、あのー。由香里?」
「な、なに?」
身構えるなって。
「さっきの本当に嘘だから大丈夫だぞ?」
「わ、わかってるよ」
いや、あなた、絶対分かってない。口調からして絶対分かってないよこの人!
でも、本人が違うんだ、って自覚しているならまぁ大丈夫だろう。
本田め、労力かけやがって。
俺たちは本田がいる昇降口へと歩いて向かう。
昇降口が見え始めたとき。
本田が俺たちの方へ走ってきた。
「ゆかりんたち、同じクラスじゃん」
由香里はようやく喋ることができるようになったようで、
「まぁ」
とだけ答える。
「私は2組だったよぉ」
「雅美ちゃんとは別のクラスなんだ」
「残念だなぁ」
「そうだね」
──おぉ、由香里。喋れてんじゃん。
感動する俺。いや、だってさっきまであんなんだったんだからね。
にしてもなぁ。
そうかぁ。本田は別のクラスになるんだなぁ。
今までずっと同じクラスだったからちょっぴり残念かも。
そして、少し間ができてから俺たちはドアを開け、学校に入る。学校見学のときに入学式の日の登校の仕方は教えてもらっていたから、どうしたらいいかは迷わなかった。
俺たちは家から持参したスクールシューズ(上履き、上靴とも言う)をリュックから出し、履き替える。
そして、昇降口からすぐの所にある階段を上がり、1年生のフロアに向かう。
「そんじゃ、俺たちはここで」
俺は3組の教室前で本田に一言言い、由香里と教室に入った。
「うん」
本田は隣の2組の教室に向かう。
教室に入るなり、俺と由香里は黒板の方に向かう。
「どれどれー?」
座席表だ。
「海翔一番うしろじゃん」
「ホントだ」
「ガキ大将ポジションだね」
「なんだよそれ」
「青春系のラノベでよくあるじゃん。クラスで席が一番後ろの窓側の男子が、『おい、お前。舐めてんのか』って」
今の科白、二重鈎括弧の中がすごいドスが効いた声になっていたけれど、由香里にドスの効いた声は似合わないな。
「そうかぁ?」
「そうそう、大体は野球部だけどね」
「じゃあ俺は違うな」
「もう、場所の話だよ」
「はいはい、分かりました」
「それで私はどこかな」
座席表で由香里の席を探す。
「え? なくない?」
「いや、ないと思ったときでも絶対あるのがこういうのなんだ」
「何言ってるか理解不能なのですが…?」
「絶対あるってことだよ………あった」
俺はちょうど真ん中より左寄りの席を指差して言う。
「ホントだ! なーんだ、何とも言えない席だね」
「うーん。理解できないわ」
「青春系ラノベの読まなすぎ」
「そういうお前は読みすぎなんだよ」
「そんなことないよぉ?」
「いや、絶対そうだ。読みすぎだよ」
高校とラノベ一緒にすんなよ? あとで「高校では彼氏できるはずだったのに」とか泣いても知らないぞ?
「大丈夫、彼氏できるだろうとしか妄想してないから」
予想あたったー!
俺、天才じゃね!? 『高校とラノベ一緒にすんなよ?』とかいったあとで『卒業する時に検証するから今は言わないけど』とか付け足しておこうかななんて思ってたんですけど!
「そ、そうなんだ……できるといいですね、彼氏」
「きっとできるよー♪」
いや、こいつどんだけ厨二病なんだよ。
余談だけど、俺は厨二病が中学生じゃなくてもかかる病だと言うことを示すために敢えて「厨」と言う漢字を使っている。
「あとで2chに『【衝撃】新女の子高校生の厨二病率が高かった件』とか言うスレッド立てて、高校生の厨二病率調べてみるわ」
「2chは今は5chになってますー」
【衝撃】2chはもう存在しないらしい
「ゆ、由香里にも分かるように説明しただけだよ」
「負け惜しみ乙」
「はいはい、分かりましたよ」
と、色々話しながらも、俺たちは自分の席に座った。
由香里が表面が綺麗に塗装されている机をなでてこう言った。
「高校の机ってこんなのなんだ」
確かに。中学の時は綺麗────とは程遠く、ほぼ黒っぽかったからな。
「なんかいいね、こういうの」
「すぐ慣れるだろうけどな」
「今のうちは見る物全てが新鮮」
「そうだな」
そういえば、テレビも液晶型のがぶら下がっている。中学生の時は転がす奴か、ぶら下がっててもブラウン管だったからな。
え、ブラウン管知らない? サザエさんの家に遊びに行ったらある、壊れても斜め45度で叩けば治るというすごいテレビの事だよ(実際に治るのかは不明 by 作者)。
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