第193話 番外 陸での魚の探し方

「求む・ブラインドフィッシュ?」

「土の中に居る目の無い白い魚ですね、達成不可だと思うんで、流して良いです」

 依頼の掲示板にでかでかと張られた依頼の中に、変な納品依頼が有った。

 エリスが無理だから流すと言って居るが、目立っていたのでとりあえず条件を確認する。

「魚依頼なのに金貨出るんですね? 生け捕り限定?」

 灯が条件良さそうだけどと言った様子で捕捉する、確かに危険度は低目だが、難易度だけ高い。一匹で金貨一枚だそうだ。

「確かに条件は良いんですけど、地面の下を流れる地下水脈見つけて、地面から掘り進めてその地下水脈掘り当てて、その中に居る魚を探すって内容なんです、闇雲に掘っても時間の無駄です」

 何時もの様にエリスが補足説明をしてくる。

「結局何に使うんです?」

 灯が魚の用途を確認する。

「何でも、目が見えなくなった時の特効薬で、この目が無くても平気な魚を生で食べる事によって、他の感覚が鋭敏に成るらしいです」

 目が見えるようになるじゃないらしい。

「特効薬の方向が特殊過ぎません?」

 言うまでも無く灯が突っ込んだ。

「目が生えて来る訳ないじゃ無いですか」

 エリスが当然と言う感じに返答する。

「そりゃそうだ」

 前回の沼ドラゴン、首なしで動いた巨大ウーパールーパーじゃあるまいし、アレに限って言えば、溜め込んだ栄養次第で頭も生えて来るらしいが・・・

 鰓付きネオテニーな幼成体では無く、鰓無しの成体でも再生力残ってるんだろうか?

「今回は追加で、井戸掘り当てた時点でギルドから報奨金出しますよ?」

 ギルド職員が依頼の紙に補足説明の紙を張り付けた。

「ふむ・・・・」

「水脈が生きてる井戸候補掘れた時点で大銀貨2枚・・・コレなら魚狙わなくても結構おいしいかも・・・・」

 エリスが追加説明を読み上げ色々と計算を始める。灯とエリスの腕力を当てにすれば井戸掘りの代金として悪くないだろうか?

「最近人も増えてきまして、農業用水も飲み水も、井戸が足りなくなってきたんです、之から乾季ですし、有って困る物じゃ無いですし」

 確かに、最初にこの村に到着した時と比べて、大分人が増えて来た。

「受けて見よう」

 魚はボーナスポイントだと見て、水脈探しだけなら何とでもなる。

「何か勝算在りました?」

 エリスが首を傾げて此方を見る。

「あっちで散々やったネタが有る」

 こっちで効果が有るか不明だが、あっちなら鉄板だ。


 L字に曲げた針金と、取っ手の部分にストロー状の筒を付けて、針金を力がかからないフリーの状態にする、取っ手の部分を持って何かの上を歩くと、不思議とむにっと開くのだ、生体電流やら、水脈で発生する電気やら磁気等色々な力が作用するらしい。

「ダウジング・・・ですか?」

 エリスが初めて見たと言う様子でこっちを見る。

「そんなの在りましたね・・・」

 灯が今思い出したと言う様子で呟いた。

「実際当てになるんですか?」

 灯が当然の疑問を口にする。

「水道局やら、工事現場では意外と現役だぞ? あてずっぽうで掘るよりかなりマシらしい」

「らしいどまりなんですね?」

「うむ、その通りだ、実際にやったのは一回だけ大平原の畑のど真ん中に走ってるかも知れない水道管をほぼ一発で当てただけだ」

 昔、北海道のでっかい畑の何処かに走っている水道管を探すと言う無茶ミッションをやらされたのだ。

「当てたんですか?」

 怪しいなあと言う様子でジト目で睨んで来る灯の視線を、気にすることは無いと言う感じに受け流す。

「その時の友人がだな、最悪でも一日無駄にする程度だ、言うほど痛くない」

「まあ、試して見ますか・・・」

 そんなこんなで外に出た、不承不承と言った様子で灯が、割と楽しそうにエリスがその後に続く、はてさて、当たるかな?


 通りから外れて、程良く穴を掘っても良さそうな場所を選んで、針金を構えてグルグル歩き始める。

 むにっとダウジングマシーンが勝手に左右に開いた。

「反応在りましたね・・・」

「ちゃんと開くもんだ」

 灯に針金を渡す

「試しにどうぞ?」

「そんなバカな・・・・」

 少し離れた所から針金を構えて歩いて来る・・・むに・・・・

「ほぼ同じ場所だな・・・」

「そんな信じてられません・・・」

 灯がエリスに針金を渡す、同じ場所で開いた・・・

「えー」

 灯が胡散臭いなあと言う様子で呟く、結構否定したい派だったらしい。

「実際何処まで掘るか勝負だな」

 別の型を持ち直す、今度はハシバミの枝を使ったY型だ、深さを思い浮かべて開いた場所の上で足踏みする。

 トンと一回、二回・・・

 ぐにっと上を向いた。

「2m?」

「地味に深いですけど、まあ、やってみますか」

 揃ってスコップを構えて掘り始めた。


「実際に出るんだからどうしてくれましょう・・・・」

 見事に水が出た、きっかりYロッドの予測測定分の範囲内だ。当たりやがった此奴と言う様子で灯が呟く。

「外れ無しで2時間かからなくてコレなら大分美味しいですね」

 エリスはほくほく顔だ。

 流石に例の魚は出て来なかった。

「何か所指定とかあったか?」

 確認して見る。

「既存の井戸に近過ぎたら駄目って言ってただけですから、因みに現在共用井戸はこんな感じで・・・」

 エリスが領地の地図を広げて見せる、几帳面に井戸の位置までマッピングしてあった。

「じゃあ、この辺に有ると便利ですね?」

 灯が地図の井戸の足りない空白地点を指し示す。

 大通り、村の中心に近い広場だった。


「あれ? 浅い?」

 ダウジングで位置判定の後、Y字で深度判定が1mだった。

 念の為この辺に掘って良いかとギルドで確認すると、寧ろその場所に井戸が掘れるんだったら嬉しいと推奨されたので、気兼ね無く掘るとしよう。

「浅いんなら寧ろ嬉しいですね」

 灯とエリスが指示を出すのを待たずに勢い良く地面にスコップを突き刺した。


 ガキン!

「成程・・・・」

 浅いなら一瞬だと掘り始めると、程無く巨大な岩らしき物にぶつかった、其れに合わせて横に掘って行っても岩が大きく、端が見えない。

「岩盤っぽいな・・・」

 なあんだ、駄目かあと言った様子で周囲から落胆のため息が漏れる。

 人通りが多い所で穴掘りを始めたので、何時の間にか野次馬に囲まれて居たのだ。

「決戦装備お願いします」

 イラっとしたらしい灯が決戦装備の戦槌を要求する。

「はいよ」

 袋から取り出すフリをして虚空の蔵から巨大な戦槌を取り出す、何時ものアレだ。

 受け取るやいなや灯が迷い無く岩盤を叩く。

 ガキン!

 大きな音が響くが、どうやら割れて居る訳では無い。

「もう一本、エリスちゃんも一緒に」

 無理矢理な割り方をしたいらしいが・・・

「気持ちは分かるが割る時は先にこっちだ・・・」

 巨大な鉄杭を岩盤に一息で叩きこんで突き刺して固定する。

「之一点を狙ってくれ」

 そう言った所でエリスも柄が長い鉄槌を構えた。

「順番に交互にどうぞ」

半身逃げて杭を固定する。

「せえの!」

 ガチン!

 説明し切る前にエリスが思いのほか勢い良く初激を打ち込んだ。

想定以上の威力で杭が岩盤に突き刺さる、反射的に手を放して全身で仰け反って次の一撃を回避する。

「はい!」

 灯が其れに合わせて先に打ち込んだエリスの鉄槌に戦槌を振り下ろす。

 ガキン!


 ゴキ

 金属の当たる音と同時に、鈍く何かが割れる音が響いた。

 ワンテンポ遅れてじわじわと足元から水が広がり始める。


 わっ


 固唾をのんで見守っていた野次馬達が沸いた。


「お疲れ様」

「今日は此処迄ですね、残りはまた明日です」

 エリスが地図を広げる、候補地点だと、そこら中に〇を付けていた。

「長い戦いになりそうだ・・・」

 苦笑いしつつ、本日分の報告にギルドに向かう事にした。


 後日、時期領主と現領主の娘が自ら渇水に喘ぐ領民の為に井戸を掘って回ったと言う謎の美談を作られ、二人がかりの岩盤割は石像や絵画にされて居た。

 例のブラインドフッシュは、自分達が掘って居る時では無く、井戸や泉としての整備作業中にニョロリと現れたらしい。ニョロリと言ったのは真っ白いメクラウナギ系だったからだ。

 そして、さらに後日、鬼子母神の木仏を彫った所、何故か灯とエリスの雰囲気が乗った二人組に変換されて居た、成程、伝わってから日が浅いから、神仏のイメージが大衆の想像に引きずられたのかと納得した、と言うかあの二人、下手すると加護所か化身扱いじゃあるまいな?



追伸

新シリーズ書き始めました。

退魔師ですが、家庭の事情で男の娘しています - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054903046174

作者の性癖と変な物を盛り込んだ結果、こんな物が出来ました。

妙に具体的な必要性によって男の娘状態で退魔師やってる少年と、ロリババアの話です。

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