第123話 報告と役人

 村周辺のゴブリンの死体は無事片付け終わったので、義父上に事の顛末を報告する為にギルドに向かうと、ギルド前に豪華な馬車が停まって居た、先日のゴブリン騒ぎ以降、ギルドの裏に華美な馬車が置いて有ったが、其れとは違う、質実剛健で、シックなセンスの良さを感じる、金銀宝石の飾り金具ではなく、目立たない部分、所々に飾彫りの仕込みが有る、使い込まれたワビサビを感じる。

「あれって?」

 思わずエリスに聞いて見る。

「あの馬車ですか?中央の役人が何かの報告と確認で来たんじゃないですか?あの日にオウルで文飛ばして、中央の王都に文が到着、その日の内に急いで向かってきたとすればギリギリ今日到着って所ですね。ちょっと早いですけど・・」

 エリスが聞いて居ない部分まで補足する、何か違和感が有るらしいが、其処まで強い違和感では無いらしい。

「中央の役人、私たちは今の所接点無いですよね?」

 灯が疑問を口にする、確かに今の所接点は無いが、これ以降無いとも言い切れない。

「義父さんは一応この土地のギルドマスター兼領主ですから、そっち経由なら何かない事も無いかもしれません。」

 エリスが余計なフラグを立てる、やだなあ、中央の役人、絶対面倒くさい。

「そういえば今更だが、義父上てギルマスと領主兼任と言うと、もしかして貴族枠?」

 今更過ぎる疑問を口にした。ギルマスとしてしか対応して居ない。

「そういえば、そっちの方向では紹介してなかったですけど、お義父さんは男爵の爵位持ってますよ?」

「うえ?!」

 エリスの何でもないと言う説明に、灯が変な声を上げた。

「爵位持ちか、成程、通りで。」

 今更納得した。風呂が普及してない世界で風呂が有る時点でアレだったし、家と言うか、邸宅状態でデカいし庭が広いので、今更である。

「偉かったんですね・・・」

 灯はしっかり驚いて居る、ある意味ノルマ達成である。

「でも、爵位持ちの貴族にしてもあんまり威張ってる様子も無いな?」

 今更だが、今まで義父上として普通に接しているので、実感が無い。

「平民の上級冒険者上がりの成り上がり一代貴族ですから、義母さんも冒険者上がりです、威張ってるのは累代出来るその上の爵位の方々です、一緒にしないで下さい。」

 エリスが心外だと言う様子で説明する。

「エリスちゃん跡継ぎって線は無かったの?」

 灯は色々聞きたいようだ。

「領地持ち貴族の爵位としては男爵は一番下で、何かしらの功績上げないと、其のままでは襲名できません。だから子供に襲名するって事も無い筈です、私実子じゃないし、女なので一般的に嫁に行くので相続権も無いのです。だから、この間生まれた私達の義弟、ウルザが万一の時には継いでくれるはず、だから私達は関係無しです。」

 其処は最初から決定していると言う様子でエリスが説明する。

 因みに、新しく生まれた義父上と義母上の子供がウルザである、継ぐにしてもだいぶ先に成りそうだ。

「でも、貴族とするとメイドさんの一人も居ないのは不思議な扱いなのか、この間の産婆さんが結局留守番する羽目に成ってたし。」

 あの時は深刻に家に残れる人が居なかった、流石に出産終えたばかりの義母上を一人にする訳に行かないと言う事で、産婆さんが留守番をしてくれていたのだ、「何でこの家、メイドの一人も居ないんですか?」と言われたが、その線だったのかもしれない。

「お義母さんが結局一人で大体出来ちゃいますから、家事を知らない貴族様とは違うのですって胸張ってました。」

 手のかかる子供が居た訳でも無いので、其れで間に合ってしまったと言う事らしい、恐らくエリスは聡明過ぎて手のかからない子だと思われる。拾われっ子なので遠慮も有るのだろう。


 そんな会話をしていると、ギルド職員が凄い勢いでギルドから出て来た、此方を認識すると、急いで走って来る、「今直ぐギルドのギルマスの所に行ってくれ。」と、奥に案内された。

「丁度良かった、こいつが俺の後を継ぐ予定の和尚だ。」

 はい?

 ノックして部屋に入ると、義父上が開口一番、来客の役人らしき人にそんな紹介をした。

「ほう、この人ですか・・・」

 どうやら当事者不在で変な事が進行して居たらしい。当人が置いてきぼりである。

 一先ず説明を要求します・・・

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