第113話 領地の管理者としての責任 ギルマスのボヤキ

「此処までは如何にか持たせたか。」

 内心冷や汗をかきながら報告を聞きつつ呟く。

 現場には出ていないが、報告は逐一入れられて来る、現状、第三波のゴブリンの団体が壁に突撃して見事に和尚達の結界に止められているらしい。

 和尚達ガンダーラは群れの頭、ゴブリンキングとクイーンを潰すために夜明けと共に群れの中に飛び込んで行方不明?

 彼奴らが死ぬはずが無いだろうが、こっちで見えていないだけだ、和尚だけで群れの中に放り込んでも多分生き残るぞ?

 彼奴の嫁と言うか、俺の娘二人、エリスと灯が付いて行ったのがむしろ心配だが、和尚が連れて行ったのだから問題無いと言う事だろう。

 と言うか、最初に貼った結界そのまま残ってるんだろう?

 術者が死んで残る魔法何て大した物は無いんだから、その規模の結界残ってるんなら明らかに生きてるだろう。奴らの活躍を信じて待ってろ。


 夜が明けて物陰に隠れていたゴブリン、結構な数を発見、順次討伐されている、怪我人、死亡者の報告も上がって居る、無傷で済むとは思って居なかったが、こうして報告されるのは辛い物がある。


  村の中にヌシが出現。及び、ヌシに狩られたと思われるゴブリンの死体がそこら中に?

 手を出していないだろうな?

 あれに手を出す愚か者は居ない?

 其れは何よりだ。


 ゴブリンの武器で傷を受けた物の心臓が止まった?

 傷は浅かったのに突然?

 浄化と蘇生措置は間に合わなかったのか?そうか、残念だ。

 怪我人の治療と浄化は、浄化優先で頼む。

 質の悪い毒物が混ざって居るぞ、和尚が帰還したら彼奴に浄化してもらえば良いが、恐らくそれでは間に合わない物がある。

 最悪、浄化だけで持たせろ。

 浅い傷は止血と浄化優先にしておけ、あの神父も歳だ、あまり無理させると後で困る。


 序に、派手な装飾を付けた馬車が最前線の防壁に到着、乗って居たのは貴族らしい、次期領主のフラワーだと名乗って居たらしいが、そんな文も役人の報告も来ていない、先走って先乗りでもしてきたのだろうか?

 そのまま門を開けろと要求してゴブリンの群れに潰されたと?

 そのまま治療の甲斐も無く死亡?

 馬鹿なのか?

 何で先にこっちに来ない?

 詳細はヒゲクマの報告で聴くと良いと?

 ああ、こう言った阿保の後始末も俺の仕事だ。後で詳しい報告は聞く必要性が有るが、責任は取るから安心しろ。


 しかし、何で承認するだけの書類がこれだけ山盛りに成って居るんだ?

 しかもほぼ事後承諾で、もう現場でやってるだろう、俺がいる意味有るのか?外に出ても・・・

 娘のエリスさんにも外に出るなと釘を刺されていたじゃないですか、って?

 実際万が一があった場合、責任者不在だと私達ギルド職員と領民が路頭に迷うのです?

 分かったわかった、わかったから部屋に外カギを仕込んで閉じ込めるのは止めろ。

 トイレすら行けないじゃないか。

 壊してから文句と言うなと?

 だから閉じ込めるな、責任放棄も仕事放棄もしないから。


 所で、ついさっきの事なんだが、とうとう息子が生まれてな?先に生まれた孫達も可愛いが、息子と言うのは別の可愛さがあってな?

 ん?聞いてる?報告の度に聞かされて居る?

 好い加減飽きたので、報告係一回毎に交代する事にします?

 俺は構わんぞ、どうせ届く書類は変わらんだろう。


 所で、俺の跡取りには和尚と息子のどちらが良いと思う?

 ん?婿養子の和尚で良いのかって?合同討伐の報告や模擬戦での活躍は知ってるが。それだけではどうなのかと?

 アレは優秀な男だぞ?

 若干世間知らずだが、地頭は良さそうだ、多分押し付けても仕事は楽にこなすだろう。

 うちのエリスがあれだけ懐いてるんだ、アレでうちのエリスはアレで人の見る目は有るぞ?

 何しろ初めて連れて来た婿候補が和尚だ、あれ以上は先ず無いぞ?

 親馬鹿?

 馬鹿でなければやってられん。彼奴を逃がす方が勿体無い。

 親子関係良好そうで何よりです?

 おう、これ以上無い程に良好だ。

 跡継ぎの話をする前に、領地と領主の権限引き継ぎは出来そうなんですかって?

 この群れを乗り越えられれば特に問題無いだろう、其れで出来無くとも、倉庫の中にあるドラゴンの骨を最終的に国王陛下辺りに献上すればほぼ確実に次期領主任命権は取れる、国の力の証明にもなるからな、うちの国、国旗が伝説のドラゴンだ、受け取り拒否はしないだろう。

 そっちの出番が無ければ、今回の防衛線で予算から足が出た分をアレで補填できる、其れ無しで済めば万々歳だがな。


 戦場で和尚が投げた槍から謎の光が発生?

 いや、本気で何だこの報告は?

 それに前後してゴブリンの動きに変化があった?

 今まで統一された動きで壁を乗り越えようと動いて居たが、後ろの群れから離れて来ている?

 戦意を喪失したか?

 和尚辺りがキングとクイーンを狩り切ったか?

 アカデからゴブリン寄せを受け取って居たから恐らく囮に?

 こっちの防衛線が安定したら追撃隊を組んで、出来る事ならガンダーラの奴らと合流して手伝って来い、いくら何でもあの規模の群れを彼奴ら3人だけで狩り切れる訳が無い、迎えに行ってやれ。

 言うまでも無くクマの奴が調整中?流石にこう言うのは現場の方が速いな。

 わかった、任せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る