第99話 閑話 プラセンタ

「ところで、之如何する?この生プラセンタ?食べる?」

 桶の中に肉塊がでろんと残って居る。出所は灯の後産である。胎盤では生っぽいと言う事で、英語にすれば生々しさが薄れるかと言う事でプラセンタと言って見ただけである。

「何処かの化粧品とかサプリメント屋が欲しがりそうではありますが、出した本人が言うのも何ですけど、グロイですね・・・」

 見た目は一部半透明で太い血管の走った肉塊である、動物の解体時の内臓よりもある意味グロイ。

「流石にご飯には見えません・・・」

 食欲は湧かないらしい。

「そりゃあそうだわな。」

「後産の胞衣は、生んだ本人が食べないなら、母乳出ないお母さんの居るご近所さんにおすそ分けするんです。食べるとお乳が出るとか。」

 エリスが答える、何でも出て来るなエリス・・・

「意外と、出番有るんだな。だが、まさか生食じゃないよな?」

思わず聞いた、元の世界ではわさび醤油や生姜醤油で生のまま刺身で食べると言うのが一部で流行って居たので気になったのだ。

「生肉は色々危険と言う事で、ちゃんと火を通すそうですよ?」

「なら安心だが。」

 胎盤食は此方にも有るらしい。

 自然派食品な方々には元の世界でも人気では有った。

 民間療法の一種なので、実際効くのかは不明だし、生食では肝炎とかうつるので推奨されていなかったりもするが、まあ、突っ込むのは野暮だろうか?


「そんな訳で、お任せします。」

 余りご近所付き合いはしていない為、欲しがる人が分らないので、義母上に任せる事にした。

「あら?良いの?」

「私は既にこの調子なので。食べなくても大丈夫そうです。」

 灯は赤子を抱えて授乳中だ、生まれる前から既に出て居たので、出は良いらしい。

「なあぉ」(要らないならよこせ。)

 どうやら、猫からはご飯だと認識されたらしい、生肉だと考えれば当然か。

 だが、猫に人肉?の味を覚えさせるのはどうなのだろう?生肉は既に与えて居るのでそっちの意味では大丈夫だが。

「あら欲しいの?少しだけね?」

 義母上が手際良く胎盤を切り分けて猫に与える、止めるまでも無かったらしい。

 餌用の皿に置かれた胎盤を嬉しそうに齧って居る。


 後日、御裾分けされたらしいご近所のお母さんに感謝された。

 猫に人肉の味云々も取り越し苦労だったようで、狂暴化するような事も無かった、一先ず安心である。


 さらに後日、エリスの後産もちゃっかり分け前として要求して、上機嫌で食べていた。


 更に、義母上の後産は目を放した隙にちゃっかり丸ごと運んで行ったようだ、食べきれたのだろうか?



補足説明的な良い訳

作者的にはプラセンタ信仰ではありませんし、否定派でもないのです。

ですが、この時代母乳出ないや産後の肥立ちが悪いって言うのは死活問題なので、民間療法を否定する訳にも行きません。

近所に胸の部分を削って飲めば母乳の出ると言う凝灰岩で出来た仏像が有ります、胸の部分が手で削り取ったようにえぐれて凹んでいます、そうしたものを否定するのは野暮って物なので、補足説明は心の中のみで黙らせておきます。


因みに、飼い猫に生肉も微妙ですが、ぬーさんは最初野生で乳離れ済みの状態でこの家に転がり込んでいるので、既に生肉消化用の酵素や腸内細菌は持っている状態です、この場合では特に問題にはなりませんので、そんな物だと思って下さい。


いつも読んでくれてありがとうございます。

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