第91話 収穫の季節と産後の肥立ち

「こんなでっかい鎌って実際あるんですね?」

 灯が持って居るのは牧草刈り取り用の巨大鎌である。

 秋の収穫期は何処も人が足りないと言う事で、冒険者も何も関係無しにそこらじゅうから手伝いを頼まれるので、たまには運動がしたいと言う灯をエリスも連れて農家の手伝いをしているのだ。ちなみに、現在冬場用の干し草を作るために牧草を前述の巨大鎌で刈り取って行く流れである。ちなみに洋鎌らしく、取っ手も付いて居るので結構使いやすい。

「大きさの割に軽いんですね。」

 灯が軽々と巨大鎌を振り回している、エリスも特に重いと言う様子も無く振り回して居る。

「武器としての補強は無いから、ほぼ穂先の刃の分だけの重さだな。」

「強そうですけど、武器としては使えないんですか?」

「ほぼ当たり判定は穂先で突き刺す手前に引く側だけだ、このハンドル持って体ごと

 回して刈り取る動きしか出来ないぞ?」

「後で試して見て良いですか?」

「良いけど壊さないように注意してな。」


 灯が鎌を振り回して見せる。

「勢いよく突き刺せてもその後繋げられないんですね。此処まで来ると刃の部分が大きすぎて邪魔です。」

 本末転倒なオチに気が付いたらしい。

「更に切る時は手前に引き寄せなきゃならんから相手が自分側に飛んでくる羽目に成るから。敵を固定、踏み付けて首に引っ掛けて引っ張る止めアクションが欲しくなる。」

「そう考えると本当に武器としては謎なんですね・・・」

「刃の部分デカいから強そうに見えるんだが、実際使うと前回の斧の方が使いやすいってオチが付くんだ。」

 創作世界では大人気なのだが。

「使うとすると?」

「刃の部分もうちょっと短くして、草むらに隠れて敵の足を引っかけるのが基本。」

 横山三国志で良くやって居たネタである。

「なるほど、ロマンが足りませんね・・・ 」

「更に言うと、穴掘り用の剣スコップの方が使い易くて強いぞ?」

「強くても見た目的に遠慮したいです・・・」

 実用性と見た目補正は重要らしい。


 と、やって居たのがついこの間の秋。ほんの2・3か月前で。

 現在。灯は産後のリハビリがてらの戦闘訓練である。

 生まれた赤ん坊は義母上に一時的に預けている、早くも義母上と義父上は初孫と言う事で張り切って居る、灯が、「私が頼って良いのでしょうか?」と遠慮していたが、「小さい事は良いから、孫を抱かせろ。」で、押し切られた。

 言葉に甘えさせて貰い、ちょくちょく預けている。

 ついでに、群れの一員として認識したらしく、冬越し猫が直ぐ横でボディーガードの様な態勢でセット行動している。まあ、横で一緒に寝ているだけなのだが。多分この時期寒いので一番温かい暖炉の近くに寝かせて居る為、おこぼれを狙っているだけの様な気もする。

 ちなみに、灯の産後の肥立ちは極めて良好、子供を産む前より調子が良い位らしい。

 流石に出産で無理した分で若干骨格がずれて居たのでマッサージで関節状態は修正したが。じわじわズレた分は薬師如来の真言では修正されなかったらしい、古傷扱いなのだろうか?

「何で覚醒トリガーが子供を産むことなんでしょう・・・・」

「鬼子母神の加護付いてからじわじわ強化されてた感は有るけどな。」

 槍持ち上げたのは結構昔の出来事だし。武器屋で重量武器持ち上げていたので今更でもある。

「其れ含めても、一足飛び感有りますし。極端に強化された感じです。之が持ち上がってますし。」

 灯が今持って居るのは武器屋で在庫処分と売り込まれた戦斧である。何時もの杖が軽すぎるからと俺の槍や長巻と持ち替えて行き、最終的に斧で落ち着いた形だ。

「大分極端なパワーキャラになったな。」

「流石にコレもって街中歩けませんから決戦用と言う事で、人前では何時もの杖にしましょう。」

「へし折りそうだな・・・」

「こっそり補強でも入れてもらいましょうか・・・」

 少し困り気味である。

 ちなみに、予定では2か月後ぐらいなエリスは、一緒に杖を振り回している、エリスも暫く外に出て居ないので体力持て余し気味らしく、寸止めで模擬戦の真似事をしている。

 所で、灯は其の斧で寸止めするのは止めて置け、腰やるぞ・・・

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