第23話 各所の反応 門番とギルド

 門番


 数日前にクエストで外に出ていたエリスちゃんが帰ってきた、先輩冒険者が2人付いていたはずだがその二人が居なくなっていた、亡くなったのか?この業界では珍しくも無いが、そこそこ腕がよかったはずだが、残念だ、いや、それは良いんだが、一緒に連れていた二人は何者なのか、黒髪黒目の二人組何て目立つのだが、少なくともここ数日あのpt以外はこちらの出入り口から出て行った記録は無いし記憶も無い、見覚えなんてあるはずもない、男は大柄の短髪、穏やかな雰囲気だがやたらと大きい槍を担いでいた、服装は何というか珍しい、鮮やかな青で見たことないような目の細かい布の上着を着ていた。女の方も黒髪黒目で長髪、こちらでは見ないような縞模様の赤い腰抜を巻いていた、上着も上等そうだ、貴族様か?まあ、こちらの門は魔物以外はほぼ素通しなので人間であれば幾ら突っ込み所が多かろうとそのまま通すのだが。


 こっちの門から抜ける場合は岩山の間に挟まれた大樹海なのだが、あの二人は何処から抜けてきたのか、あの森を抜けるなんて命がいくらあっても足りないと言われているのだが、何があったのか。


 そんな具合に暇な門番は色々と余計な想像を膨らませていた。




 ギルドにて


 エリス嬢が帰還予定日を過ぎても帰ってこない、ギルマスは檻に入れられ絶望した熊のような雰囲気で暗かった、エリス嬢はギルマスが拾った養女なのだが、本来の親は夫婦で冒険者をやっていて帰ってこなかったので孤児になってしまっていたらしい、最初にギルマスがボロボロの子供を連れてきた時には大騒ぎになったものだ、子供に恵まれなかった二人は何だかんだで溺愛し、昔はボロボロだったエリス嬢も今ではかわいらしく育ち、本人の希望で冒険者となったのだが、ギルマスの目が光っているプレッシャーで男の冒険者は下手にPTが組めず、組んでもプレッシャーに耐え切れず瓦解し、ソロで村の中の安全なクエストしか受けられなかった所を、そこそこ腕の立つ二人をギルマス権限で護衛として手を出さぬようにと念入りに釘を刺してPTに組み込んだのだ、当然すべて本人に気づかれぬよう水面下で。なお、ギルマス本人は表面上厳しくしているつもりである。


 そんな溺愛している愛娘が下手すると死んでいるだなんて云われた日にはこのギルドがどうなるか分かった物ではない、ギルド内は戦々恐々としていた。




 入り口のドアが開いて、帰還したのがエリス嬢だと判明するとギルド内が内心安堵のため息に包まれた、だが後ろに付いていたのがPTを組んでいた二人ではなかったため混乱が走り抜ける、あの二人はどうなったのか、連れてきた二人はなんなのか、どう報告すればいいのかと受付は内心混乱していたが、ギルマスを呼んでくれと言われて安心した。面倒な報告も何もすっ飛ばせる、隣の職員にギルマスを呼んでくるように頼み、エリス嬢と二人を奥の部屋に案内する、案内した帰りにギルマスとすれ違った、先ほどまでとは全く違う弾むような足取りだった。




 裏の訓練広場に居た職員は語る、


「ギルマスが子ども扱いであしらわれていた」


 と、いや、あのギルマスは現役時代上級冒険者だったはずだ、膝に矢を受けて冒険者引退しているが意外と素早く動くし模擬戦で負けた例はない、このギルドでは冒険者も逆らえないのだ。あの男だろうけど何者?




 ウキウキした様子で表の食堂に出ていたギルマスが沈んだ様子で戻って来た、表の食堂はギルドの職員と冒険者をメインターゲットにしている店で量も味もそこそこでお安いと言う良心的な店だ、あまりにも沈んでいるので思わず聞いてみると、あの男が旦那だと紹介されたらしい、一緒に居たのは同じく嫁だと、俺に勝てないやつは認めないと公言していたギルマスが先ほど負けてしまったので反対するネタを無くしてしまったらしい。


 明らかに仕事にならないのでさっさと帰ってもらった。




 翌日


 奥方にも結婚を賛成されてしまったので諦めたらしい、若干凹んでいるが昨日よりは大分ましだ。




 午後にエリス嬢のいる新PT「ガンダーラ」が来てクエストを受けていった、例の妻同士の仲は良いようだ、仲良く手をつないで歩いていた、出入り口でうちのギルドの力自慢と鉢合わせしたようだが、どうやら無意識にあの男は押し切ったらしい、力自慢が牽いたんじゃないかと思われたが、いや、あの力自慢は戸を引いて開けることは無いと豪語していた、足元に押し切られた足跡が付いていた、あっけにとられて固まっていたようだが、騒ぎにならなくてよかった。




 ガンダーラは薬草採取のクエストで外に行ったようだが、無事に帰ってくることを祈っておこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る