2.とある身長差カップルの冬
「紗乃、寒くない?」
少し位置の高いほうから声が聞こえた。
「全然?むしろ、暖かいし」
顔は下を向いたまま、私は答えた。
意味わかんない、と君が笑ったのが、顔を見なくても分かった。
__今正直言うと、寒い。
陽気だったあの風は木枯らしへと姿を変え、私たちの肌に強く吹きつける。彼の吐いた白い息は、私の頭なんて余裕で超える高さを飛んで、消えた。
彼が、今日は珍しく予定がないという。どっか行く?と私が聞くと、えー家で良いよ、と頬を膨らまして言った。
彼よりアグレッシブ精神の強い私は、持ち前の負けん気の強さで、普段から全く外に出ない彼を外に連れ出すことに成功した。
「ねぇ、アイス買おー」
冬にアイスって馬鹿なの?と思いつつも、近くのアイスクリーム屋さんに入る。
「いらっしゃいませ。只今家族割引でお安くなっていますよ」
耳を疑う店員さんの声。そんなことも、営業スマイルでかき消されてしまった。「ははっ、さっきの店員さん、俺らのこと親子だって」
両手にアイスクリームを持って笑う彼。ぶっ飛ばしてやりたいけど、私の分まで頼んでくれた優しさで、構えた拳が下がる。
成人男性としては身長の高い彼と、成人女性としては小さい私の身長差はなんと40cm。そのこともあってか、さっきみたいなこともなくはないけど…。
いや、間違えるか?普通。そりゃあ、学生時代に大きめの制服買って、身長伸びるって信じてて、結局ダボダボのまま卒業した私だけどさ!?
「そんな怒んなって。はい、ストロベリーチョコスプラッシュ」
私はその攻撃力高めなアイスクリームを頬張って、怒りを鎮める。
「俺は好きだけど?だってポンポンしやすいし」
「したことないクセに言うなッ」
お世辞だと思って、無責任に言葉を吐いた。
ポンポンッ__
「…はっ?」
それは、一瞬でも分かった、君の温もり。
「これで、満足ですか?」
口では笑ってるのに、目は真剣で、もっと好きになってしまう。
「次、子ども扱いしたら、殺すから」
ひえー、とわざとらしくおどけて言う彼。
私はいつ、素直になれますか。
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