02 ホットケーキと仔猫
マリアが戻ってくると、丁度タルトがホットケーキを焼いていた。
甘い匂いが漂い、それを嗅いでマリアの腹の虫が騒ぐ。
タルトに目で指され大人しく椅子の上に座ろうとする。
マリアには背が高くどうにか座ったものの、ぷらぷらと行き場を失った足が揺れた。
ぱさ、と乾いた音がして白い皿の上に茶色いまあるいケーキが重ねて乗せられる。
真ん中に黄色の小さな四角がちょこんとあった。
ホットケーキの熱にとろりと溶けるのが見える。
その上から琥珀色の蜂蜜がくるくると回しがけられた。
とろりとケーキの端っこを伝って蜂蜜が皿の上に落ちていく。
「……はい、どうぞ。」
タルトはそうしてできたパンケーキを、フォークやナイフと一緒にマリアの前に置いた。
マリアは両手を合わせていただきますの代わりにお祈りをするとフォークとナイフを手に取る。
ぎこちなく切り取った一口が少し大きすぎたようで、精一杯大きく口を開くものの、口の端に蜂蜜がついてしまう。
やれやれとため息をついたタルトは濡れタオルを用意するものの、それ以上は何もせずマリアの様子を見守っている。
からんころん。
ドアベルが鳴って漸くタルトは目をマリアから離した。
そこにいたのは猫の兄弟だった。
弟の方がぴこぴこと耳を揺らし、目隠しがあって見えていないだろうに危なげなくマリアの隣まで来る。
両手を机の上に乗せ、背伸びをするようにマリアの手元を見た。
「あっ!マリア、ホットケーキ食べてる!いいなー」
隣から聞こえた明るい声に、食べることに集中していたマリアも気がついたようで、ぱちくりと目を瞬かせる。
マリアが何かを言おうとしたところで、大きな両手がその仔猫の脇に手を入れて持ち上げた。
その手の主を見ると、そこには兄の方が立っている。
見られていることに気がついているのだろうか、弟と同じように目隠しをしたままだというのに顔をマリアの方へ向けた。
マリア・イン・ユートピア ゆずねこ。 @Sitrus06
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。マリア・イン・ユートピアの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます