聖悠紀先生の『超人ロック』で、『神童』というエピソードが出てくる。天才歌手の母親と軍人の父親の間に生まれた少年が母親を拒絶して軍人を志すものの、実は母親の才能を強く受け継いでいたという筋である。彼の歌は、全てを『止める』らしい。 本作の登場人物は決して神童ではないが、音楽にかける情熱は本物だ。神話と違い、歴史は一人の英雄ではなく無数の凡人が作っていく。変人呼ばわりされた元級友の志が主人公に移ったように。