第18話 第一騎士団襲来

  屋敷に戻るとマーサが出迎えて、ミリムに引き渡された。そこまでする必要があるのかと思ったが、湯浴みの後に全身エステ。髪はアップにして、選んでくれた衣装に着替え、アクセサリーを装備。そして、フルメイクという仮面をかぶった。


「お綺麗です、奥様」

「ありがとう。さすがだわ」

 ほのかに甘い香りもする。

「いい香りね」

 ミリムはもっと嬉しそうになった。

「奥様に合わせて選んだんですよ!騎士団の方々をメロメロにしてきて下さい!」

「え!?」

 ミリムが何を考えているのやら。


 準備は全てフランツとマーサに任せて大丈夫そうだったので、慣れないことはせず、残った時間は紅茶を飲んで待つことにした。その間に今日手に入れた情報を精査して、お兄様に風魔法を送った。


 全て落ち着いた頃、ミリムが呼びに来てくれた。

「旦那様だけがお帰りです」

 念のために降りていくと、本当に旦那様だけだった。フランツとの会話を聞く限り、ちゃんと準備がされているか心配で、先に帰って来たようだ。フランツとマーサがいるのに、何を心配することがあるのか。


「お帰りなさいませ」

 余裕の態度で微笑んだ。旦那様は一瞬固まり、動き出した。

「追加料金は後で交渉してくれ。間もなくウルヴァー卿が到着する」

「かしこまりました」

 エレンはもう、無表情にただ、騎士団が到着するのを待った。


 彼らは今日もエレンに強烈な一撃を入れた。

「今日も美しいな!エレン嬢は」ウルヴァー卿の第一声。

「事実ですね」とレスター卿。顔がかぁっと紅くなるのを感じる。

「あ…りがとうございます」


「今日は突然押しかけてすまないな」

「謝罪はしても、いつも突然です。気を付けた方が良いですよ」

 この二人の組み合わせは何なのだろう。


 旦那様がさっさと客間へ案内したので助かったが、最後尾にいた一人が立ち止まってエレンを見た。

「お初にお目にかかります。第一騎士団魔法使いのサミュエル・カールトンと申します。以後お見知りおきを」

 彼はそう言って丁寧に膝を折りエレンの手を取ったので、エレンは優雅に手を引き抜いた。

「エレンでございます」とお辞儀をした。

 はたから見れば、この男が色目を使い、そこから上手に逃れたように見えただろう。マーサが鋭い視線で男の後ろ姿を見ている。


 直ぐに食事の準備が整ったとフランツが呼びに来たので、旦那様が食堂へ案内する。普段は広く見える食堂が、狭く見える。堅苦しくないものを、と事前に旦那様から指示があったので、椅子を壁際によせて、立食形式にしてある。

 騎士の方たちはお腹が空いていたのか、もりもりと食べ始め、次々と皿が空いていくが、それ以上の勢いで酒瓶が空いていく。エレンもどんどんお酒を注がれて、顔が赤くなってきた。ちょっとふらついた。頃合いと見たのか、オズワルドが下がるように言う。マーサが慌てて支えてくれた。丁寧に挨拶をして、退室した。


「奥様、大丈夫ですか?」

 心配そうに声をかけてくれるので、しっかりと立って言った。

「大丈夫よ。顔は赤くなるけれど、これくらいじゃ酔わないわよ」

 ふふん。自慢げに笑った。

「まぁ…」

「いつまでも付き合うのは面倒でしょ」

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