幕間

03


「――現状を、ご理解いただけましたか?」

『ああ……いやだがしかし、こんなことがあり得るのか……?』

「新島博士の技術力は、貴方もご存じのハズです。……そして、KIDOはそれを金儲けの道具にしか使えない、ということも」

『……っ』


 ウィンドウの向こうから、息を呑む気配が伝わってくる。

 貴堂クロヤは相手の動揺を感じ取りながら、更に続けた。


「このままでは、KIDO。悲しいですが、何千……いや、何万という社員が路頭に迷う事になるでしょう。もちろん、貴方も」

『……どうしろというのだ、私に』

「お分かりでしょう? ボクの筋書通りに動いていただければ十分です」


 浮かべた笑みはどうしようもなく偽物で、けれどそんな事は互いにとってどうでも良かった。

 大切なのは、事実と利益。笑顔はそれを円滑に回すための仮面に過ぎない。

 貴堂クロヤはそういう人間だった。


『分かった。出来得る限りの事はしよう。……だが、君に出来るのか?』

「そのためのは揃えたつもりです」


 ハッキリと言い切って、貴堂クロヤは通信を終える。

 ふぅ、とため息をついて、そのまま別のウィンドウを開いた。


「損傷は無し。調整は完全ですね、ナイト?」

「……」


 ナイトクルスは、無言のまま腰に大剣を収める。

 その周囲には、無数のバグクルスが倒れていた。

 バグクルスたちはデータの光となって、貴堂クロヤのウィンドウに吸われていく。同時に、彼の所持クルス一覧にそれらの名前が並んだ。


「問題ないようですし……彼を呼び出しましょうか。

 そろそろ、真相のひとかけら程度は、掴んだ頃でしょうしね?」


【続く】

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