蜘蛛の巣
探索!手掛かりを求めて!・1
「ニャゴ! 上だ!」
「ニャグッ!」
空から急降下してくるトビクルス。
ニャゴはそのクチバシを横に跳んで避けるけど、トビクルスはそのまま上空へ逃げてしまう。
「ニャグゥ……メンドいニャゴな。降りてこいニャゴ!」
「プェェェッ!!」
吠えるニャゴに、トビクルスは気の抜けた鳴き声で返事した。
バカにされてるんだと思う。
「あんニャロ……!!」
「落ち着いてニャゴ。焦ったら勝てるものも勝てなくなるよ」
「ニャ……ライオに戻るニャゴ! そしたら楽勝ニャゴ!」
「ダメ! 食べ物だって無限じゃないんだよ? こんな森の中で時間切れになったら……」
ぼくとニャゴは今、ネイチャーエリアに来ていた。
目的は、ショウから送られた写真の場所を探すこと。
「ニャガ……仕方ねぇニャゴな。作戦考えろニャゴ!」
「カウンターしかないよ。攻撃をよけて、また空に行くまでの一瞬……狙える?」
「当然ニャゴ!」
ぐぐ、とニャゴが姿勢を低くする。
空をぐるぐる飛行していたトビクルスは、そんなニャゴに狙いを定めて、また急降下。……まだだ、まだ。
「……そこ、後ろに避けて!」
「ニャッ!」
軽いバックステップ。また攻撃をかわされたトビクルスは、バサッと翼を大きく振ってまた空へ逃げようとする。
その、一瞬。動きのおそくなった一秒。ニャゴは後ろに跳んだ反動を活かして、飛び掛かる。
「ピョエッ……!?」
「ニャッ、ガッ!」
ニャゴのツメが、トビクルスの左翼をひっかいた。
トビクルスは悲鳴を上げてばたばたと飛び上がり、どこかへ逃げていく……
「一昨日きやがれニャゴ!!」
「ダメだよニャゴ、怒って帰って来たらどうするのさ」
「そんときゃブッ倒すニャゴ」
「えー……」
探索は、順調とは言えなかった。
行く先々で色んなサイバクルスがぼくたちにちょっかいをかけてくるからだ。
まぁ、バグクルスじゃなくて普通のクルスが相手だから、どうにか進めてはいるんだけど……
「それより腹減って来たニャゴよ」
「そう? 仕方ないな。ちょっと待っててね……」
ぼくはアイテムから肉を選択して、ニャゴの前へ取り出す。
ニャゴは塊の肉をすごい速さでがつがつと平らげてしまった。
「げふ。これでしばらくは平気ニャゴ~」
「でもニャゴ、食べ過ぎじゃない……? もう肉あんまり残ってないよ」
「うるせぇニャゴなぁ。腹減るんだから仕方ねぇニャゴよ」
「それはそうなんだけど……」
ニャゴはどうも、すぐにお腹が空いてしまう体質らしかった。
ライオクルスにならなくっても、普通のクルスの倍は食べるみたい。
それは多分、今の身体をニャゴが無理矢理作ってるから、なんだろうけど……
「食べ物、足りるかなぁ」
バグクルスと戦う可能性を考えたら、ニャゴがいつでもライオクルスになれるように、食べれるものは常に確保していたい。
逆に言えば、食べ物が無くなってしまったらそれ以上探索は出来ないんだ。
「肉、もっと用意出来なかったニャゴか?」
「いやいや、これでも限界まで買ったんだよ?」
ぼくはサイバディアに登録したてで、ゲーム内通貨もあんまり持ってなかった。
だからその分、ぼくはお小遣いで課金して肉を買った。
ニャゴがもりもり食べているのは、ある意味ぼくのお小遣いなんだ。
いや、良いんだけどね。必要なことだし、良いんだけど……なんかちょっと悲しくなるのはなんでだろう……
「とにかく、先に進もう?
これ以上、ぼくのお小遣い……じゃなかった。ニャゴのお腹が減る前に!」
「ニャグ。……んん、でもそうもいかなそうニャゴよ?」
ぼくの言葉にうなづいたニャゴは、だけど足を止めてくんくんと辺りの匂いを嗅ぐ。
どうしたの、と聞くと、ニャゴは「むこうニャゴ」と茂みの奥を見つめている。
「――……けてぇ~……!」
「あ、なんか聞こえた」
「ニャ。イヤ~な臭いも近づいてきてるニャゴ」
「イヤな……って、まさか」
「――すけてぇ~!
たーーーすーーーけーーてーーー!!」
「パタタタタ~!!」
がさささっ!
奥から飛び出してきたのは、一人の女の子と、水色の小さな鳥のサイバクルス。
女の子の服は何故かボロボロで、鳥のサイバクルスも羽がぐしゃぐしゃだ。
「ニャゴ、この子達が!?」
「じゃなくて、あれニャゴ」
続けて響いたのは、どすんどすんと重たい音。
バキバキと枝や木々が折れる音。
「ひぃぃぃ~! ヤバいヤバいもう追い付かれる! 助けて!」
「パッタタタっ!」
女の子と鳥のクルスは、ぼくとニャゴの姿を見つけると、サッとその後ろに隠れてしまった。
そして……バギャギャガンッ!
激しい破裂音と共に最後に跳び出してきたのは……
大きな角を持った、バッファローのサイバクルスだった。
「こいつニャゴね、バグの臭いがするのは」
「えっ、と……バイソンクルス。硬い角とそれを使ったパワフルな突撃が特徴の……危険度の高いクルス……」
図鑑情報を確認して、ぼくは思わず半歩後ずさってしまう。
「なんかなんか! 急にあの牛に追われちゃって!」
でもぼくの後ろには、女の子がしっかりしがみ付いていて離れない。
「攻撃されたら、バグ? が出ちゃってぇ……ログアウトできなくてぇ……」
「わ、分かった、分かったから、ええと……」
泣きそうな声で話す彼女に、ぼくはあわててしまう。
どうしよう!? 相手がバグクルスなら、戦った方がいいのかな?
「やるニャゴ。どうせニャゴたちも目ぇ付けられたニャゴよ」
「……うん」
バイソンクルスは、血走った眼でぼくとニャゴをみていた。
「た、たすけてくれる……? あの、でも、隠れておいてなんだけどその……」
ちら、とニャゴを見る女の子。
弱そうって思ってるんだろうなぁと感じて、ぼくは思わず苦笑いしてしまう。
「そこは大丈夫」
ニャゴがその視線に気づく前に、ぼくは言い切った。
「だからその……かくれてて、もらえますか」
女の子は頷いて、鳥のクルスと一緒に走っていく。
「ブルフッ……」
「ニャ? おいテメェ、よそ見してんじゃねぇニャゴ」
そっちに気を取られそうになったバイソンに、ニャゴは警告する。
「ニャゴに背中向けて見ろニャゴ。テメェは一瞬でニャゴのメシになるニャゴ」
「食べたばっかりなのに?」
「うるっせぇニャゴ! なんでそこでツッコむニャゴ!?」
にゃがぁ、とニャゴはぼくに文句を言い立てる。
ごめんごめんと謝りながら、ぼくはスキルウィンドウを開いた。
バイソンはぼくらに敵意を向け、頭を低くして今にも飛び出してきそうだ。
「ねぇニャゴ。バグクルスがいるってことはさ」
「ま、近くになんかはあるかもニャゴな」
「……だよね」
なら、はやくこいつを倒して、さっきの子に色々聞かないと。
「じゃあ行くよニャゴ。
「ニャッ……ガァァァッ!!」
【続く】
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