幕間

01

「……手ひどくやられましたね」


 綱木ユウトとネコクルスが去った後、貴堂クロヤは小さく呟いた。


さえなければ、わざわざこんな回りくどい事をしなくても良かったのですが……まぁ、博士を責めても仕方ありませんね」


 ウィンドウを開き、貴堂クロヤはの状態をチェックする。

 数値や文字列にさっと目を通し、彼は眉根を寄せた。


「バグクルスの多くが、あのライオクルスと同等かそれ以上の力を持つのだとすれば……こちらも、もう少し力を付けておく必要があるかもしれません」


 ――まぁ、それは後ほど考えるとして。

 貴堂クロヤは溜め息混じりに言って、失われた右腕のデータを再構築する。

 サイバクルス用の回復薬ではなく、コードを直接書き加える……という形で。

「今は応急処置です。駆動に問題はありませんね?」

「……」

 問題はなかった。腕は元あった通りに復元され、指先まで支障なく動く。

「よし。では行きますよ、ナイト」

 それを確認した貴堂クロヤは、すぐに歩き出す。

「彼らを泳がせるとは言ったものの、ボクらはボクらで調査を進める必要がありますからね。……こんなチャンスは、滅多にありませんし」


 ふふ、と貴堂クロヤはほくそ笑んだ。

 それは、先程まで綱木ユウトに見せていた作り物の笑顔とは違う……心からの、企みのこもった笑顔だ。


「情報を集めましょう。原因を探りましょう。

 全ては、ボクがKIDOを手にするために」


 ああ、それから。

 貴堂クロヤは、ふっと宙を見て付け加える。


「綱木ユウト君に、フレンド申請を送らないといけませんね?」


【続く】

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