第4話 防具を買おう!

◆黒木暗子◆


「……ふわぁー。 あっ、おはよ暗子」


「あ、おはよう、カノ」


昨日は疲れていたので、宿に着きすぐにシャワーを浴び、床についた。

部屋の関係上、カノと同じベッドに寝ていたのだが。


「よく寝れた?」


「……えぇ。 カノは?」


「うん! ぐっすり!」


「……それは良かったわ」


私は少し寝るのに時間が懸かる方だ。

昨晩、カノは疲れていたのかベッドに入るとすぐに寝てしまい、むにゃむにゃと言いながら、寝返りを打ったり、なんだかうねうねしていた。

「寝相が悪いのかしら」と思いながら、その動きが面白かったのでカノを横で見ていた。

そして、そろそろ私も寝ようかなと思った時 だった。


「ヴッ……」


浴びせ蹴りだった。

カノは大きく足を振り上げ、その足を重力に任せ私のお腹に落とした。


「……元気ね」


足を元の位置に戻し瞼を──


エルボーが炸裂した。


そして、カノは私にダメージを与え続け、気づけば夜が明けていたのだ。

とはいえ、寝相が悪いだけでカノに悪気はない。

私の目の下にはいつもくまが出来ているので、寝不足はバレなかったようだ。


「じゃ、行こっか! 暗子」


「……そうね」


そうして、私達は宿を出た。


「まだ時間があるから、装備とかアイテムを買おっか」


「そ、そうね。 防具とかかしらね」


確かに私はボロボロのローブを着ているので、もっと強そうな防具を買いたいものだ。

サボテンは倒すとお金を落としていたので、色々買うには困らなそうである。


「そこのお嬢さん♪」


声をかけられた。

声の先には屋台があり、少女二人が立っていた。

防具SHOP『アキナ』と書かれている。


「防具探してるんでしょ?」


「安くしとくわよ♪」


名前の通り防具を売っているらしい。


「あっ……あの」


「この子の防具を探してるんだ。 魔法使いに合う防具ないかな?」


カノが要件を伝えてくれた。

ホントに、ホントに頼りになる。


「あるとも。 シェロ」


「はいはーい♪」


シェロと呼ばれた少女は裏の方へ回り、今着ているローブより、綺麗で丈夫そうなものを持ってきた。


「これなんかどうかしら?」


「安くしとくわ。 500ゴールドでどう?」


手持ちは1500ゴールドある。


「カノ、安い?」


「うん。 他だとだいたい800ゴールドくらいだと思う」


これはお買い得だ。

しかし、少し悩む。

先にアイテム──多分、薬草とか──を買ってからでも良いのではないだろうか。


「いまなら、薬草も付けるわ」


「秋奈は太っ腹ねぇ♪」


「えっ、いいのかしら。 そんなに……」


「やったね! 暗子」


「ほんの気持ちよ♪」


ここまでくると買い渋る理由も見つからない。


「じゃあ、買おうかしら」


「「まいど!」」


500ゴールドを手渡し、ローブを受けとる。


「お客さん着てきなよ」


「あっ、はい」


秋奈と呼ばれた店員にそう言われ、身に付けることにする。


「よいしょ」


ボロボロのローブを脱ぎ、新しいローブを着てみると──


デレデンデレデンデーン。


なんだかこのローブ見た目より重いような、なんか気分が落ち込むような。


「どう?」


「……なんだか気分が……」


とりあえず脱ごうとする。


「あれっ」


脱げない。

どう頑張っても脱げない。


「もしかして、暗子のそれ呪われてるんじゃ!!! ちょっと! 店員!」


「フフフ♪ あら残念だったわね」


「それは申し訳ないことをしたわ。 でも、まあ買ったのはそっちだし」


「ちょっ! 無責任だろ!!」


「大丈夫よ♪ 私は呪いを解く心得があるのよ」


「はやく、暗子の呪いを解け!」


なんて店だ。

呪ってるものを売り付けるなんて。

この二人、性格が悪いに違いない。

まあ、解いてもらえるなら……。


「はい」


秋奈は手を差し出してきた。


「?」


「いや、呪いを解く代金。 1000ゴールドね」


「はぁ?! そっちが呪われてるローブを売り付けたんだろ!!!」


「いや、それは事故よ♪ 私達のせいじゃないわ」


「このやろ!!」


カノがカウンターに乗り出そうとしたとき──


「呪いよ消えろ!」


後ろから声がして、すぐに体は軽くなった。


「なっ?!」


「誰よ!」


秋奈とシェロは声をあげる。


「通りすがりの神父さ」


二人の男が立っていた。

片方はガタイの良いおじいさん。

もう片方は若い男だった。


「この辺で詐欺をしている店があるって聞いて来たんだが……」


「おまえらだな」


「やっべ!」


「逃げるわよ!!」


シェロと秋奈は裏にある扉を蹴破り走っていった。

それを追うように二人の男も走り出した。


「……助かったわね」


「とんでもない奴だった。 極悪人に違いないね」


そういうとカノは二人が走っていった方にベーッと舌をだしていた。


「買い物は終わったか?」


カオルがすぐそばまで来ていた。


「……あ、今済んだとこよ」


「よし、行くか」


旅は続く。










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