第4話 韓国との未来について

 韓国に対する輸出規制強化、あるいは輸出管理の適正化なるものの方針が打ち出されている。

 全体的には多数が支持。一部で慎重論あり。といった風情。


 おそらく、今回の措置自体はトータルでマイナスの効果しかもたらさない。

 韓国の経済は影響を受けるだろうが、彼らがそれで態度を改めるはずもなく。

 最終的には、日本経済にとっても不利益に働く。

 現状の問題解決にはならず、事態を悪化させるだけ。


 だから選挙を前に、政権がナショナリズムを利用した危険な支持率浮上策を採った。そう評価しても間違いではないけれど。


 ここは少し、巨視的に俯瞰してみよう。

 歴史的に見た光景というやつだ。


 今回の措置は、日本という国のターニングポイント。その一つだと思う。

 この国は、自らを加害者と定義するのを止めた。

 無条件にそれを継続することは許さない。必要とあらば殴り返す。

 その態度を明らかにし、国民の多数がその方針を支持した。

 それが今回の出来事、その本質なのだ。


 考えてみれば、これは巨大な変化なのである。

 既に直接戦争を知る世代の多くは鬼籍に入り。

 我々はそれを自身の体験とはみなせなくなっている。

 自分の生まれる遙か前の出来事で原罪を背負わされたくは無い。

 そんなものは理不尽だと。人々がそう考え始めるのは当然だ。


 世界の潮流も見逃せない。

 変化が生じているのは日本だけでは無い。世界中がそうだ。

 当然である。どの国であろうが、人は必ず死ぬのだ。

 第二次世界大戦の記憶は風化し、国全体の考えも変わっていく。

 例えば十年ほど前なら必ずや韓国側に立ったであろう中国は、静観のままだ。


 国力で日本を凌駕した今、彼らは過去の恩讐に縛られる動機が急速に薄まりつつある。

 虐げられた者が復讐を望むのは、己の心に劣等感が残っている場合だけだ。

 既に相手を見下せる立場にいるのに、復讐などという面倒でリスクの高い行為に手を染める必要がどこにあるのだろう。

 中国にとって日本はアメリカの走狗であると共に、やり方次第では緩衝材として使用でき、しかも軍事的な脅威にはならない存在だ。それなりの利用価値はある。

 過去の話より、今後の金儲けを相談した方が良いと考えるだろう。


 この問題を抱えるもう一国は北朝鮮だが、日本人はこの国の指導者に対して道徳的な引け目など欠片も感じていない。

 北朝鮮の人々に圧政を敷き、暴虐を行った罪?

 そんなものを問われたら、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑い出してしまうだろう。


 要するに、残る問題は韓国だけなのだ。

 それにこの国との関係を変化させることができれば、将来において半島が統一された場合においても役に立つ。

 それら諸々を無意識に計算した結果、人々は短期的なマイナスを甘受してでもこの話にケリをつけることにした。

 今回の措置はその始まり。そんな見方も出来るのではないか。


 日本人は、本当に戦後を終わらせるつもりなのだ。


 こんなやり方では出口が見えない。外交として酷く稚拙な手法だとお嘆きの方々もいるだろうが。

 いやいや、そう悲観したものでもないと述べておく。

 おそらくはもう一回り。あと二十五年ほどが経過し、第二次世界大戦終結から百年を迎える頃には、状況は落ち着いているのではなかろうか。


 やり方もなんとなく想像がつく。

 それこそ、第二次世界大戦で多用され、効果が証明済みの手だ。


 現在の政治指導者。

 具体的には安倍首相と文大統領に全ての罪を背負わせればいい。


 韓国の大統領という仕事は、職を辞した瞬間に監獄に入れられるとか、暗殺されるとか、とにかく悲惨な末路しかないことで有名で。

 文大統領も遠からずどこかで権力を失い。

 なんと言うか、気の毒な運命が待っているに違いない。


 石もて追われる中、外交における様々な失策についても責任を問われ。

 日本に対する態度がやり過ぎだったという話が出てくる可能性は高い。

 そこで日本も安倍首相は少々やりすぎであったということにして、譲歩を見せるのだ。

 そうすれば、まあなんとなく着地点が見えてくるだろう。


 僕たちは騙されていたんだ。悪い政治家が対立を煽ったが、市井の人々は本当は仲良くしたかったんだよ。ずっと昔からそうだった。

 そういう美しい話にごまかして、都合良く未来志向の関係を再構築すれば良い。


 感情的対立を解消するのに最も有効な手は、共通の敵を作ることだ。

 犠牲の羊なら、ほら。ちゃんとそこに候補がいる。


 悪辣な案だろうか?

 しかし、政治家というものは国家の安寧のために働き、必要とあらば生け贄の祭壇に躊躇いなく上る度量が必要とされる。

 祖国の平和と発展のために悪名を背負うのは、彼らにとって本望だろう。

 遠慮無く、その望みを叶えてやればいいのだ。


 歴史上、数々の事例で証明されている。

 真に悪辣なのはいつだって。

 政治家個人ではなく、民衆という得体の知れない怪物のほうなのだ。


 だからそう遠くない将来に。

 こんな感じで話が進んでいくに違いない。

 その時人々は、自分達が日本を、韓国を。

 それぞれ口汚く罵ったことを忘れ。

 全てを他者のせいにして。

 自分が麗しき隣人愛に溢れた善人であることを思い出すだろう。


 酔った頭で、ふとそんなことを思いつき。

 文章にして書き残したくなる。


 正夢になるかどうかは、今後次第。

 十年後ぐらいを、楽しみに待ちたい。

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