第3話 リベラルの嘘
少し前に話題になったトランプ大統領のツイートがある。
簡単に言えば、こんな内容。
「民主党支持者が不法移民に寛容であるべきと主張するなら、民主党が優勢な州に不法移民を送り、彼らに面倒を見てもらおうではないか」
あんまり話題にもならず、消えていってしまったが。
実はこれ、結構重要なことを言っている気がするのである。
現代社会の潮流を示す一種の縮図として。
ちなみにこれに対して、民主党側は碌な反論が出来なかった。
「移民はアメリカ経済にとってプラス」であり、倫理だけでなく経済の側面からも彼らを拒むべきでは無いと言っていたのに。
実際に自分たちが責任を取ってみろと言われたら、どう見ても逃げ腰。
勿論、幾つか言い訳ぐらいは思いつく。
移民にはプラスとマイナス面があり、集中的な受け入れはそのマイナス面だけを特定の州に負担させるとかなんとか。
だけど弱い。
少なくとも、この事実は動かせないのだ。
「移民には、マイナスの効果もある」
この点が共通の認識だということ。
だとしたら、理論的にこうなる。
「もしマイナスの効果が高ければ、移民を拒否するのは選択肢の一つである」
それを認めなければおかしい。
物事は全てケースバイケースだ。
移民は必ずしもプラスの効果ばかりでは無く、また、国にとってマイナスと決まったものでもないだろう。当たり前の話である。
逆に言えば。「移民はアメリカにとって必ずプラス」という主張は嘘なのだ。
精々、他人に親切な態度を取れば後で報われるとか、正直に生きた方が幸せになれるとかという話と同列で。
そうあればいいね〜 ぐらいの願望でしかない。
言ってみればそれは立派なフェイクなのだけど。
彼らはそれを認めない。
それらは「道徳的に正しい」意見だから。
「理想」を語っているのだ。だからそれは嘘では無いのだと。
これはまさに宗教の論理である。
事実と合致しているか否かは論点にならず。
正しい思想に合致しているかいないかが問題にされる。
今、世界の各国で右傾化が叫ばれている。
人々は自分のことだけを考え、他者に対する寛容を失っていると。
だけど、筆者はそれに首を傾げざるを得ない。
昔の世界って、そんなに良かったかなぁ?
精々数十年程度の昔である。
パワハラ、セクハラは当たり前。
同性愛者は社会的に抹殺。
人種差別だって今よりずっとひどかった。
戦争の回数も多けりゃ規模も大きく、堂々と力ずく。
ちなみに中国に対する制裁がアメリカの理念に反するなんて意見はお笑い草だ。
ニクソンやレーガンやらが日本に対してどんな交渉をしてきたか。
小一時間もネットで資料を眺めれば、あれこそがアメリカのスタンダードな政策だと分かりそうなものなのに。
多分、現代における右傾化とは。
絶対的な基準におけるそれではなく。
「リベラル側の主張に対する抵抗が増えてきた」というトレンドに対する評価なのだと思う。
だがそれを、現代人の知性や道徳の欠如、あるいは衰退として捉えるのは間違っているのではないだろうか。
むしろそれは、「もうこれ以上お前達の嘘には付き合っていられない」という。
ある意味、健全な拒否。
その広がりであるような気がしてならないのだ。
なのに未だにリベラル達は。
自分達の道徳的優位を信じて疑わぬまま。
相手がただ愚かで劣った存在なのだと決めつけてかかる。
アメリカで行われた調査実験において。
こんな質問をやってみたらしい。
アンケートを見せて。
右派の人に「左派の人たちはどう答えると思いますか?」
左派の人に「右派の人たちはどう答えると思いますか?」
そう言って結果を書いてもらう。
調査の結果と、本当の右派・左派それぞれから得たアンケート集計を比較してみたところ。正答率が高いのは右派の方だったという。
左派の人々は、右派の人々を実際よりも遥かに愚かで短絡的、そして非寛容だと思い込んでいた。
他人に対する理解と共感を欠いていたのは、むしろリベラルの側だった。
彼らは単に、自分達のイメージを信じているに過ぎないというオチ。
この調査結果をどこまで信じるかは個人の判断だが、なんとなく腑に落ちるような気がしてならないのである。
己の正しさを信じて疑わぬ者ほど不寛容な存在はない。
神の愛と地上の平和を唱えながら。
それを信じぬ者達を虐殺する。
それが毎度のパターンだ。
正義を背負った人間の語る言葉を簡単に信じるべきではない。
嘘とは何か。フェイクとは何か。
時にはそれを虚心に考えなければならない。
なぜなら、人が人である限り。
必ずや嘘をつく。
それは当たり前のことなのだから。
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