第286話 とある少女の不安
「皆のもの、まずは湯浴みじゃ」
湯浴み?
湯浴みってなに?
「む?なんじゃ、みな不思議そうな顔をしおって」
「ヘラレント様、もしかすると彼女達は湯浴みの意味がわからないのでは?」
「ふむ、ではなんと言えば良いのかのう」
「いえ、そんな難しく考えずにお風呂と言えばよろしいかと」
お風呂?
お風呂ってなに?
「ふむ、ラーヴァ。お主の言葉も通じていないようだが」
「そのようですね。では水浴びではどうでしょうか?」
「それならわかるよ! 体を綺麗にすることでしょ?」
サーナ!?
「どうやら通じたようじゃの」
「ええ、そのようですね」
「ならば水浴びで話を進めようかの」
「わかりました。皆さん! これから皆さんを、大きな水浴びの施設に案内いたします」
大きな水浴びの施設?
この人たち、私達をどうするつもりなの?
は、まさか!
「心配するな、そこの小娘。お主が心配するような事ではないからの」
え?
違うの?
「どうやら一部の娘達に、要らぬ勘違いをさせてしまったようじゃな」
「そのようですね。大丈夫ですよ、最初に言ったように、私達は貴女達をあの施設から救出しただけですから」
「救出しただけって、そんなの信じられる訳ないじゃない!」
ミシュカ!?
「確かに」
え?
納得しちゃうの?
「確かに、今あったばかりの私達を信用しろというのは難しい話ですね。ですが皆さんに危害をくわえるつもりなら、皆さんの負傷をわざわざ治療する必要もないと思うのですが?」
そうよね、私達に危害をくわえるつもりなら、わざわざ私達の怪我を治す必要なんてないよね。
でも、だからと言って信用なんかできないし。
「まあ、信用しようがしなかろうが、皆さんには私達に逆らうといった選択肢はありませんが」
な。
「はあ。ラーヴァ、落ち着くのじゃ」
「私は落ち着いていますよ」
「ふむ、それでもじゃ」
「……。申し訳ありません、少し取り乱しました」
「うむ。この娘達を見て、お主の過去を思い出したのじゃろ」
「……はい」
え?
どういうこと?
この人も私達と一緒だったてこと?
「まあ、気にするでない。人間誰しも思い出したくもない過去はあるからの」
「……」
「そんな事よりも、こやつらを早く風呂につれていってやろうぞ」
「……」
「ラーヴァ、お主とてあれを体感した時の感激は忘れまい?」
「ええ」
「ならばこの娘達にも、あの感激を体感させてやろうではないか」
なに?
なんなのお風呂って、そんなすごいものなの?
「のう、ラーヴァ。あの村はお主の辛い過去すら霞ませるほど、お主に多くのものを与えなんだか?」
「多くのものをいただきました。そう、あの辛い過去がこの幸福の日々を手に入れる試練だったと錯覚できるほどに」
「であろう? ならばお主は霞みつつある過去なんぞにかまけてる暇はないじゃろ? この娘達にも、お主と同じような思いをさせてやるべきではないのか?」
「そう、ですね」
「じゃろ。ということでまずは湯浴みじゃ! あれを知った時のお主らの顔が目に浮かぶようじゃ」
なになに?
一体私達どうなっちゃうのー!
ガンドラル〜異世界に飲み込まれた世界で最狂(のハーレム)と最凶(の村)を作った最強(無自覚)の男のお話〜 ろろ @curijff
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